日本人の胃がん罹患率は低下していますが、人口高齢化の影響により、高齢者で胃がんになる人が増え、死亡数は5万人前後で横ばいです。また死亡率もいったん大きく減少して、その後横ばいです。昭和45年頃と比べて死亡率が減少したのは、早期発見・早期治療によって完治する人が多くなったためです。
●胃がんの死亡数と年齢調整罹患率・死亡率(人口10万対)の年次推移
出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報サービス「全国がん死亡データ(1958年〜2019年」「高精度地域実測値:がん罹患年次推移データ(1985年〜2015年)」より
かつて胃がんは、日本で最も死亡率の高いがんでした。しかし、食生活の改善、検(健)診による早期発見・早期治療、治療法の進歩などによって、 死亡率は減少しています。とくに、早期のがんならば、90%以上が完治可能です。早期発見・早期治療によって、胃がんは 「治る病気」になったのです。
●日常診察で推奨される胃がん治療法
N: リンパ節転移
T: 深達度(がんが胃壁のどの層まで進んでいるかの程度)
(M: 粘膜内、SM: 粘膜下、MP: 固有筋層、SS: 漿膜露出、SI: 他臓器浸潤)
胃がんになる人は50歳代から急に増え、50〜70歳代がピークです。かなり進行しても、ほとんど症状がない場合も少なくありません。しかし、患者さんの半数近くはなんらかの症状があって検査を受けています。気になる症状があるときは、早めに検査を受けましょう。
がんとしての症状よりも同時に存在する潰瘍の症状であることが多い。
胃がん検診で行う一次検査です。バリウムと発泡剤を飲み、向きを変えて複数回写真を撮影します。検査は数分間で終わります。
胃がん検診の一次検査、または胃がんが疑われる場合、確定診断のために行います。ファイバースコープを飲んで胃の内部を観察し、映像を記録します。また、粘膜の疑わしい変化の一部を切り取り、組織診を行います。検査時間は、10〜30分です。
高度の萎縮性胃炎の人(ヘリコバクター・ピロリの感染との関係がある)は胃がんの危険性が通常よりも高いため、この数値を測定することにより、萎縮性胃炎の強い人を見つけ出すのです(ABC検診)。
胃がんと診断されたらリンパ節や周辺臓器への転移の有無を調べ、「治療法」を決定するための検査です。検査に要する時間は、15分程度です。
胃がんの治療には、内視鏡的切除術、外科的手術療法、化学療法などがあり、がんの大きさや進行度などによって選択されます。このうち内視鏡的切除術は、比較的小さな粘膜内(一部粘膜下も)のがんで、リンパ節転移がないと推定される場合に行われます。
●胃がんの内視鏡治療
監修/古河 洋(松原徳洲会病院顧問、近畿大学医学部外科客員教授)