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手術数でわかる いい病院 手術数でわかる いい病院

<提供> 朝日新聞出版社 週刊朝日MOOK「手術数でわかる いい病院 2019」

子宮・卵巣がん手術

子宮・卵巣がん手術(全国データ)


病院名 所在地 手術数 子宮
頸がん
子宮
体がん
卵巣
がん
子宮
体がん
腹腔鏡
手術
放射線
治療
新規
患者数
1 がん研有明病院 東京 513 108 236 169 137 88
2 埼玉医科大学国際医療センター 埼玉 337 40 152 145 48 93
3 兵庫県立がんセンター 兵庫 301 88 122 91 49 87
4 埼玉県立がんセンター 埼玉 227 52 115 60 20 87
4 県立静岡がんセンター 静岡 227 32 103 92 52 97
6 東京慈恵会医科大学柏病院 千葉 225 48 97 80 21 71
7 慶応義塾大学病院 東京 219 69 86 64 44 73
8 東北大学病院 宮城 217 39 104 74 49 84
9 大阪大学病院 大阪 211 41 93 77 66 93
10 (国)北海道がんセンター 北海道 210 59 88 63 36 35
11 大阪医科大学病院 大阪 202 54 74 74 52 70
12 自治医科大学病院 栃木 196 39 90 67 4 88
13 大阪国際がんセンター 大阪 195 61 78 56 30 88
13 九州大学病院 福岡 195 77 62 56 27 73
15 愛知県がんセンター中央病院 愛知 194 76 63 55 22 76
16 岩手医科大学病院 岩手 184 38 61 85 0 64
17 名古屋大学病院 愛知 181 60 70 51 13 131
18 神奈川県立がんセンター 神奈川 177 43 84 50 1 72
19 千葉大学病院 千葉 175 20 72 83 2 49
20 札幌医科大学病院 北海道 173 31 83 59 29 42
21 筑波大学病院 茨城 172 26 82 64 20 75
22 倉敷成人病センター 岡山 167 36 66 65 59
23 東海大学病院 神奈川 162 49 61 52 0 77
24 日本大学板橋病院 東京 154 47 57 50 6 15
25 大阪市立大学病院 大阪 153 47 48 58 1 43
26 鹿児島大学病院 鹿児島 151 41 78 32 31 34
27 神戸市立医療センター中央市民病院 兵庫 149 21 69 59 39 22
28 山形大学病院 山形 148 33 60 55 0 64
29 国立がん研究センター中央病院 東京 145 31 69 45 0 120
30 近畿大学病院 大阪 144 25 59 60 35 23
30 愛媛大学病院 愛媛 144 36 48 60 24 55
32 都立駒込病院 東京 141 26 68 47 5 54
33 東京慈恵会医科大学病院 東京 140 31 76 33 18 82
34 東京医科大学病院 東京 139 34 45 60 15 26
35 新潟大学医歯学総合病院 新潟 138 29 65 44 31 46
36 都立多摩総合医療センター 東京 135 28 60 47 7 39
37 東京大学病院 東京 134 30 52 52 14 74
37 岐阜大学病院 岐阜 134 32 44 58 21 66
39 熊本大学病院 熊本 133 50 53 30 1 46
40 越谷市立病院 埼玉 132 22 65 45 30
40 順天堂大学順天堂医院 東京 132 17 59 56 30 54
40 県立がんセンター新潟病院 新潟 132 27 51 54 0 46
表の見方
がん診療連携拠点病院と厚生労働省が届け出義務を課す「子宮附属器悪性腫瘍手術等」が2014年に10例以上の583病院を対象に調査した。17年1年間の子宮頸がん、子宮体がん(それぞれ0期は除く)、原発性卵巣がん(境界悪性、卵管がん、腹膜がんを含む)の合計の手術数で並べた。子宮体がんの腹腔鏡下手術数も併記した。がん放射線治療の調査対象に該当する病院は新規患者数を記した。

婦人科がんの種類により治療法が異なる

ランキングの読み方 ランキングの読み方

子宮頸がん

放射線治療も有効な
選択肢となる

子宮の入り口にできる子宮頸がん。ランキングで注目してほしいのは、手術数と放射線治療の割合だ。子宮頸がんのうち約7割を占める扁平上皮がんは、放射線治療が有効だ。ⅠB1期~Ⅱ期の場合、手術と放射線治療の治療成績に差はない。進行した例では放射線治療に薬物療法を組み合わせると、さらに効果が高いこともわかっている。
ⅠB1期~Ⅱ期で手術をする場合、「広汎子宮全摘出術」が実施される。この手術は、子宮やその周辺の組織、リンパ節を広範囲に切除する方法で、5~6時間かかる大がかりな手術だ。この手術では膀胱につながる神経を傷つけると排尿障害が起きることがあるが、最近ではこれを回避するため神経温存術式を採用することが一般的だ。一方、放射線治療もまれだが治療後に血尿や血便など、晩期障害が出ることもある。
埼玉県立がんセンターの横田治重医師はこう話す。
「骨盤リンパ節に転移があると、手術で切除しても再発の危険が高く、術後に放射線治療が必要になることがあります。手術をしたあとにさらに放射線治療をすると合併症が起きやすく、からだへの負担が大きくなります。このため、骨盤リンパ節に転移している可能性が高いⅠB~ⅡB期は、手術ではなく、放射線治療や薬物療法を組み合わせた化学放射線療法を選択することも多いです。これらの判断は年齢や病院によって選択が分かれるところです」
術前にある程度リンパ節転移があることが予測できる場合や高齢で術後の合併症によって生活の質が著しく下がる可能性が高い場合は放射線治療を選ぶなど、選択の基準はさまざまだ。
「子宮体がんの場合は、手術数と初回治療数に大きな差はありませんが、子宮頸がんの場合は放射線治療も多いため、手術数と初回治療数には開きがあると思います。手術数だけではなく、放射線治療数もあわせた治療数を確認することで、子宮頸がんに対する病院の経験がわかると思います」(横田医師)
妊娠の可能性を残すための手術「広汎性子宮頸部摘出術」を日本で最も多く実施している慶応義塾大学病院の青木大輔医師はこう話す。
「放射線治療をすると卵巣が機能しなくなり、妊娠できなくなるので、当院の場合は、若い人は手術を選択する傾向があります」

子宮体がん

経験が必要な
腹腔鏡手術

子宮の奥にある子宮体部の内膜にできる子宮体がん。比較的早期から不正出血や閉経後の出血などの自覚症状が出やすいのが特徴だ。このため、約75%はⅠ~Ⅱ期で見つかる。Ⅰ~Ⅱ期で治療できれば90%以上の人が根治する。
手術では子宮や卵巣、卵管のほか進行期によって骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節などを切除する。子宮体がんは子宮頸がんに比べて卵巣や卵管に転移しやすいため、どの病期であっても卵巣や卵管も切除するのが基本だ。
子宮頸がんと子宮体がんは「子宮がん」としてひとくくりにされることがあるが、青木医師は「まったく別もの」と話す。
「病気そのものの性質も違いますが、手術も大きく違うものになるので、それぞれの手術数を確認するといいでしょう。一般的に子宮体がんに比べて、子宮頸がんの手術のほうが血管や尿管をよけながら周囲の組織を余計に切除することが多く、手術時間が長くなり、難度も高くなります」
こうした理由もあり、腹腔鏡手術は子宮頸がんでは2018年4月から健康保険が適用になったが、子宮体がんの場合は14年から早期に限り、保険が適用されていて、定着しつつある。当調査では子宮体がんの腹腔鏡手術の数も調査しているが、その割合は年々増えている。
おなかを20cmほど切る開腹手術と違って、腹腔鏡手術は5~10mmの穴を4、5カ所開けて操作するので、癒着が少なく術後の回復が早い。このため、入院期間も短くなる。ただし、腹腔鏡手術の経験が浅い病院で実施すると、開腹手術と同等の治療効果を得られない可能性がある。このため、腹腔鏡手術の数は経験があるかどうかの目安になる。
「腹腔鏡手術の保険適用は早期のがんが対象なので、全体の手術数に対して腹腔鏡手術の割合が多い病院は、早期のがんが集まっているともいえます」(横田医師)

卵巣がん

病院によって手術方針の
違いが出やすい

子宮頸がんや子宮体がんに比べて、早期で見つかりにくい卵巣がん。自覚症状が現れにくいほか、おなかの中の臓器にがん細胞が散らばりやすく、早い段階で転移しやすい。このため、治療が手術だけで終わることはなく、薬物療法を組み合わせるのが一般的だ。卵巣がんの7割程度は、薬物療法が有効である。
卵巣がんは手術後に約半数が再発する。横田医師はこう話す。
「再発した場合は、薬物療法が中心になります。手術だけが得意な病院の場合、再発したら別の病院に転院することになりかねません。手術数は病院選びの目安にはなりますが、卵巣がんの患者さんをどれだけ診ているかということにも注目するべきだと思います。がん診療連携拠点病院であることも、総合力があることの目安になるでしょう」
卵巣がんの手術方針は、卵巣と卵管、子宮、大網(大腸、小腸を覆っている腹膜)のほか、傍大動脈から骨盤までのリンパ節を切除する。さらに腸管や脾臓などを切除することもある。進行がんの場合は、腫瘍をすべてとり切るのは難しく、できるだけ取り除く「腫瘍減量手術」を実施し、術後に病期が確定したらそれに合わせて薬物療法を組み合わせる。
初回腫瘍減量手術は、1回の手術で完全に腫瘍をとり切ることを目指すのか、術後の薬物療法に影響が出ない程度にとどめるのか、病院によって方針が分かれる。初回手術で高率に腫瘍減量ができれば予後によい影響を与える一方、腸管まで切除するような大がかりな手術となった場合、合併症のリスクが高くなり、術後すぐに薬物療法を開始できなくなる難点もありえる。
また、きわめて進行したがんで一度の手術で十分に取り切れないと判断された場合や、多量の腹水や胸水が貯留しているため全身状態が悪くて負担の大きい手術ができない場合など、薬物療法で腫瘍を小さくしてから、手術を実施する病院もある。術前に薬物療法をした場合と術後にした場合の生存率や合併症率を比較する試験が実施されているが、治療成績はほぼ同じであることが示されている。
このように進行して見つかることが多い卵巣がんは、病院によって方針が異なる。治療方針に不安や迷いがある場合は、セカンドオピニオンを聞くことが納得のいく治療を受けることにつながるだろう。
卵巣がんは手術と薬物療法がセットなので、手術数が多いということは、薬物療法の経験も豊富なはずだ。卵巣がんの薬物療法はさまざまな試験が実施されていて、日々進歩している。分子標的薬「オラパリブ」は2018年4月から再発した卵巣がんの一部に対しての使用が認められているが、近いうちに初回治療の術後にも使用できるようになる見通しだ。

ランキング以外の病院の選び方 ランキング以外の病院の選び方
ほかの科との連携や
術後合併症のケアに注目

「婦人科腫瘍専門医がいる病院かどうかというのが、一つの目安になると思います」(横田医師)
また、腹腔鏡手術の技術があるかどうかの目安となるのは、日本産科婦人科内視鏡学会が認定する技術認定医制度だ。腹腔鏡手術を受ける場合は、婦人科腫瘍専門医と技術認定医のどちらもいる病院が望ましい。
子宮体がんは、100kg以上の肥満の人、卵巣がんの人は足の静脈に血栓がある人が多いなど、ほかにも要因を持っていることが少なくない。
「ほかの病気もある場合は、各科と連携して治療することになるので、さまざまな診療科がある病院が理想ですが、がん専門の病院などでは、ほかの病気について必ずしも専門の部門があるとは限りません。そうした場合でも、病院内に地域医療連携の部門があるなど、地域の病院と連携していると、心強いでしょう」(青木医師)
子宮頸がんで広汎子宮全摘出術を受けた場合は、術後の合併症が問題となる。手術で膀胱につながる神経が傷つくと、尿意を感じなくなる、感じるのに出にくくなるといった排尿障害が出ることがある。また骨盤リンパ節を摘出するので下肢のリンパ浮腫が出現することがある。手術を受ける病院がどのような合併症対策をしているのかについても知っておくと安心だ。
若い世代の場合、将来妊娠を希望することも多い。がんが子宮頸部の表面にとどまっている初期の子宮頸がんであれば、腟からアプローチする子宮頸部円錐切除術で、子宮を残せる。しかしそれ以上進行している場合や子宮体がん、卵巣がんの場合は、子宮を切除するのが基本だ。ただし、標準的な治療ではないが、条件次第では、妊娠の可能性を残せることもある。将来妊娠を希望する場合は、こうした対応についても調べておきたい(60㌻参照)。

治療成績と関係する指標

●術後の合併症

→大規模調査でのデータはない。個々の病院では把握していることがある。
子宮頸がんの術後に起こりやすい合併症が、排尿・排便障害だ。特に広汎子宮全摘出術をすると、直腸や膀胱の排泄を調整する神経に障害が起こりやすい。また、子宮体がんや卵巣がんでも起きるのがリンパ浮腫だ。排尿・排便障害やリンパ浮腫は診断基準が統一されていないので、比較はしにくいが、合併症を起こさないための工夫をしていることが大切だ。また術後のケアについても確認しておきたい。

【お話をうかがった先生】
埼玉県立がんセンター
副病院長、婦人科科長
横田治重医師
慶応義塾大学病院
産婦人科教授
青木大輔医師

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