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探偵ドクター青山耕助の謎解き事件簿 探偵ドクター青山耕助の謎解き事件簿

<事件簿(カルテ)24>
過度な糖質オフダイエットには要注意!
そのイライラの原因は?

低血糖症とは…必要以上に血糖値が下がってしまうために起こる心身の不調のこと。日ごろ甘いものや炭水化物を摂り過ぎて、血糖を下げるホルモンのインスリンが必要以上に分泌され血糖値が下がったり、逆に炭水化物の摂取量が少なくて血糖値が下がったり、など血糖調節機能が低下することにより起こります。頭痛やめまいなどの身体症状のほか、「キレやすい」「疲れやすい」「判断ができない」などの精神症状も出ます。詳しくは専門医解説をご覧ください。
[専門医解説] マリヤ・クリニック 院長 柏崎 良子(かしわざき りょうこ)先生
横浜市立大学医学部卒業後、千葉大学医学部医局研修、勤務を経て、1987年にマリヤ・クリニック(内科・小児科/千葉県稲毛市)を開設し、栄養医学の立場から治療に臨む。「一般社団法人障害治療研修所」顧問。主な著書に『低血糖症と精神疾患治療の手引~心身を損なう血糖やホルモンの異常等の栄養医学的治療』(ヨーゼフ)、『食べて治すうつ症状 ココロとカラダを元気にする新栄養学』(学研H&Mシリーズ)などがある。
横浜市立大学医学部卒業後、千葉大学医学部医局研修、勤務を経て、1987年にマリヤ・クリニック(内科・小児科/千葉県稲毛市)を開設し、栄養医学の立場から治療に臨む。「一般社団法人障害治療研修所」顧問。主な著書に『低血糖症と精神疾患治療の手引~心身を損なう血糖やホルモンの異常等の栄養医学的治療』(ヨーゼフ)、『食べて治すうつ症状 ココロとカラダを元気にする新栄養学』(学研H&Mシリーズ)などがある。
低血糖症とはどんな病気ですか?

体が必要とする糖質が十分に供給されないことで起こる不調のことです。

身体的な症状としては頭痛やふらつき、動悸、手足のふるえ、異常な発汗(冷や汗)、慢性的な疲労や思考力の低下、湿疹やアレルギー、関節炎、目のかすみ、筋肉痛などが挙げられます。体全体の血糖のうち20~30%が脳で消費されます、そのため血糖が下がると、感情や精神面に不調が出やすいのも特徴。症状としては、攻撃的衝動やうつ傾向、判断力の低下、怒りやいらだちなどの感情を抑えられない、日中の眠け、ヒキコモリ(無気力)などが挙げられます。

低血糖状態になると、脳の血流が悪くなり、眠くなったり、理性を司る大脳皮質の働きに影響が出て、抑制力や判断力が鈍ったりします。その一方で、「なんとか血糖を上げよう」と、摂食中枢を刺激したり、興奮系の神経伝達物質であるアドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンなどを分泌したりします。これらが脳全体の機能バランスを悪化させ、その結果、怒りや敵意、焦燥感、落ち込みなどを引き起こします。

低血糖症が起こる原因を教えてください

さまざまな原因がありますが、近年は糖質の過剰摂取や極端な摂取制限による発症が増えています。

これまでは、血糖値を下げる薬による副作用として低血糖症になることがあり、しばしば問題視されてきていました。しかし、近年は糖質の過剰摂取や極端な摂取制限による影響が見受けられるようになってきています。たとえば、血中のブドウ糖濃度を安定化させるホルモンのインスリンは膵臓で分泌されていますが、炭水化物に砂糖で甘い味をつけた、ケーキや菓子パンなどを一度に大量に食べる習慣があると、その膵臓が疲れきってインスリンの分泌量を制御できなくなって大量分泌し、必要以上に血糖値を下げてしまうことがあるのです。

また、アレルギーや胃下垂、貧血、甲状腺機能障害などの病気や体質との関係も指摘されており、注意が必要です。たとえば、胃腸が弱いために、食事量を人並みに摂っていても腸で必要量が消化吸収できていなかったり、体内に取り込めていても、ビタミンやミネラルなどが不足しているため体内でうまくエネルギー化できなかったりして、結果として「糖質(エネルギーの材料)が足りない」状態になるのです。

どんな人がなりやすいのでしょうか?

年齢、性別に関係なく、極端な食事制限や乱れた食生活を続けていると発症する可能性が高くなります。

基本的に子どもから高齢者まで、あらゆる世代の男女とも低血糖症になる可能性があります。その中で目立つのは、ダイエットを繰り返しているうちに、膵臓が疲弊してインスリンをうまくコントロールできなくなるという、若い女性などに多いパターンです。健康な人が「炭水化物ヌキ」といった極端なダイエットを自己流で行った場合、目標体重をクリアして普通の食事にもどると、急激に摂り込まれた糖質により、インスリンの分泌量のコントロールが効かなくなることがあります。すると血糖値が安定しなくなり、精神的にも不安定になりがちです。

また、働き盛りの男性なども要注意。残業が増え、夕食が9~10時になるような生活を長く続けることは、肥満の原因になり健康によくありません。しかし、仕事で過剰に分泌されたアドレナリンの影響で「体調も気分も良い」「自分は効率良く働けている」と感じてしまい、そんな体のSOSに気づかない人も多いようです。これを放っておくと、血糖値を調整する膵臓や副腎が疲労し、血糖調節機能が低下し、低血糖症を発症し、うつ症状が出たり、ささいなことでキレやすくなる、会議中に眠くなるなど、仕事に支障が出ることがあります。

ちなみに、このような症状が出たとき、「精神科や心療内科を受診するべき」と考える人が多いと思いますが、大元の原因である低血糖症を治さないと、抗うつ剤の処方を受けても症状は改善に向かいにくいのです。

低血糖症による症状チェックリスト
  • 過食や拒食で、炭水化物の摂取量が極端
  • 少しのことでイライラする
  • 怒りが爆発すると、抑えられない
  • 甘いものが無性に食べたくなる
  • 日中とても眠い
  • 疲れやすい
  • なにかを判断をしたり、決断することができない
  • ルーティンワークはこなせても、新しい仕事にとりかかるのが億劫
  • 締め切り、ノルマなどのストレス環境で、がんばれない
  • 頭痛がある
  • 胃腸が弱い
  • アレルギーがある
  • 物忘れがひどい
  • 「死にたい」「死ねたら楽だ」などと考えることがある
  • 幻聴や幻覚があると思う
  • 抗うつ剤など薬の服用では改善がみられない

「低血糖症と精神疾患治療の手引」より、抜粋改変。

チェックが多い人ほど、低血糖症が原因の精神症状が出ている可能性が強いので、まずは食事と栄養を見直してくれる、管理栄養士が在籍している内科や内分泌代謝科などの専門医に診てもらうことをオススメします。