為替相場展望

執筆者
為替アナリスト 石川 久美子

当面の注目ポイント
  • ドル円が上昇傾向にある米長期金利との連動性を取り戻すか
    (連動性を取り戻した場合は、米長期金利の上昇がドル高要因に)
  • 日本の金融政策が緩和的な状態を維持しているか
  • 北朝鮮と米国の関係が悪化し、直接の武力衝突に至らないかどうか
    (リスクが意識されれば円高要因に)
  • 米トランプ政権の運営がうまくいっているか
    (政権要人が辞任したり、ロシアゲート疑惑が強まればドル安要因に)

過去2ヶ月の為替推移

出所:Bloomberg、SonyFH

株式市場が落ち着きを取り戻せば、
ドル円は緩やかに上昇か

1月のドル円は下落し、ドル安・円高となりました。1月9日に日銀が国債買い入れオペを減額すると、「日銀が金融機関から買い入れる国債を減らし、市場に出回る資金を減らそうとしている(日銀が異次元金融緩和の縮小に向かおうとしている)」との思惑が浮上し、円高基調に転じました。23日には黒田日銀総裁が大規模緩和を維持する姿勢を示し、市場でくすぶる金融緩和縮小観測を否定。しかし、米欧が金融政策の正常化(金融緩和の縮小)に向かう中、日銀の金融政策正常化への注目度は高く、また、投機筋が積みあがった円売りポジション(円を売り越している状況)を解消する動きも相まり、その後も円高が進みました。そのため、本来ドル円は米長期金利の動きに連動することが多いですが、足下では乖離が生じています(上図)。

2月に入ると、2日公表の1月米雇用統計の好結果を受けて、「米長期金利の急上昇→米景気拡大の早期終了懸念を背景とする米株価の急落→リスク回避の円買い(円高)」となる場面がありました。そして、本稿執筆時点では、米株価は依然として荒い値動きとなっています。しかし、そもそもこの発端は1月米雇用統計の「良好な」結果であり、米景気は依然として拡大しています。そのため、株式市場が落ち着きを取り戻した際には、米経済の堅調さが再び意識され、ドル円はいずれ米長期金利に連れて上昇基調(ドル高・円安)へ転じると考えられます。ただし、日銀による金融政策正常化が再び意識された場合には、1月と同様に円高基調に転じる可能性があるほか、北朝鮮情勢やロシアゲート疑惑の関連報道などもドル円の下落要因となり得るため、引き続き注意が必要でしょう。

マクロ経済展望

執筆者
エコノミスト 渡辺 浩志

上がり始めた米国の長期金利、
世界経済や金融市場への影響は?

昨年、上がるといわれて上がらなかったのは米国の長期金利です。ところが、このところにわかに上昇し始め、足下で2.8%台へ突入、トランプ政権下での最高水準を更新しました。米国の長期金利の行方とこれが世界経済に与える影響を考えます。

これまではなぜ上がらなかったのか?

図表:米国の長短金利の推移

図表

出所:Bloomberg、SonyFH

潮目は変わった

米長期金利上昇のメリット・デメリット

今月のキーワード

連邦準備制度(FRB)の中立金利

中立金利とは「景気にとって緩和的でも引き締め的でもない金利水準」を指します。FRBは3ヵ月に一度、経済や物価、政策金利の見通しを公表していますが、そのなかで政策金利の長期均衡値として、中立金利の水準を提示しています。また、米国の国債利回りは、FRBの政策金利を下限、中立金利を上限とする範囲のなかで動いています。短期金利は政策金利に押し上げられる一方、長期金利は中立金利(2.75%)に頭を押さえられている格好で、その差は徐々に狭まって来ています。

ソニーフィナンシャルホールディングス
アナリストの紹介

尾河 眞樹(おがわ まき)

ソニーフィナンシャルホールディングス
執行役員 兼 金融市場調査部長
チーフアナリスト

ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン証券などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。2016年8月より現職。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBCなどにレギュラー出演し、金融市場の解説を行っている。著書に『為替がわかればビジネスが変わる(2014年日経BP社)』、『富裕層に学ぶ外貨投資術(2015年日経新聞出版社)』、『〈新版〉本当にわかる為替相場(2016年日本実業出版社)』などがある。

菅野 雅明(かんの まさあき)

ソニーフィナンシャルホールディングス
シニアフェロー
チーフエコノミスト

1974年日本銀行に入行後、秘書室兼政策委員会調査役、ロンドン事務所次長、調査統計局経済統計課長・同参事などの役職を歴任。日本経済研究センター主任研究員(日本銀行より出向)を経て、1999年JPモルガン証券入社、チーフエコノミスト・経済調査部長・マネジングディレクターとして日本の金融経済分析・予測を担当。2017年4月より現職。総務省「統計審議会」委員、財務省「関税・外国為替等審議会」専門委員、内閣府「経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会、金融・資本市場ワーキンググループ」メンバー、内閣官房「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」メンバー、厚生労働省「年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班」専門委員などを歴任。日本経済新聞「十字路」「経済教室」、日経QUICK「QUICKエコノミスト情報」、東洋経済「経済を見る眼」「論点」、NTT出版「危機の日本経済」など執筆多数。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」レギュラーコメンテーター。1974年東京大学経済学部卒、1979年シカゴ大学大学院経済学修士号取得。

渡辺 浩志(わたなべ ひろし)

ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
エコノミスト

1999年に大和総研に入社し、経済調査部にてエコノミストとしてのキャリアをスタート。2006年~2008年は内閣府政策統括官室(経済財政分析・総括担当)へ出向し、『経済財政白書』等の執筆を行う。2011年からはSMBC日興証券金融経済調査部および株式調査部にて機関投資家向けの経済分析・情報発信に従事。2017年1月より現職。内外のマクロ経済についての調査・分析業務を担当。ロジカルかつデータの裏付けを重視した分析を行っている。

石川 久美子(いしかわ くみこ)

ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
為替アナリスト

商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から研究員として、外国為替相場について調査・分析、レポートや書籍、ブログ、Twitterなどの執筆、セミナー講師、テレビやラジオなどのコメンテーターとして活動。2016年11月より現職。外国為替市場の調査・分析業務を担当。

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