為替相場展望

執筆者
為替アナリスト 石川 久美子

当面の注目ポイント
  • ドル円が上昇傾向にある米長期金利との連動性を取り戻すか
    (連動性を取り戻した場合は、米長期金利の上昇がドル高要因に)
  • 日本の金融政策が緩和的な状態を維持しているか
  • 北朝鮮と米国の関係が悪化し、直接の武力衝突に至らないかどうか
    (リスクが意識されれば円高要因に)
  • 米トランプ政権の運営について
    (政権要人が辞任したり、保護主義への警戒が強まればドル安要因に)

過去2ヶ月の為替推移

出所:Bloomberg、SonyFH

3月のドル円は上値の重い展開か

2月から3月上旬のドル円は下落しました。2月は2日公表の1月米雇用統計の好結果を受けて「米長期金利急上昇→米景気拡大の早期終了懸念を背景とする米株価急落→リスク回避の円買い」となり、円高が進行。また、3月1日にトランプ米大統領が鉄鋼とアルミニウムの輸入に高い関税を賦課する方針を示すと、米国の保護主義色の強まりを警戒したドル売りが広がりました。さらに2日、黒田日銀総裁が衆院議院運営委員会での所信聴取において、「物価目標2%達成は2019年ごろになる可能性が高い」「19年度ごろの出口を検討」との見通しを示すと、日銀の早期金融正常化が意識され、円高が進行しました。

1日にトランプ米大統領が発表した関税方針に対して、EUや中国などの諸外国が強い反発姿勢を示し、貿易戦争へ発展する懸念が強まりました。トランプ米大統領は8日、鉄鋼とアルミニウムに輸入関税を課す文書に署名し、日本を含む同盟国への適用除外可能性を示唆したものの、先行きは不透明であり、依然として警戒ムードが漂っています。そのため、ドル円は当面上値の重い展開が続くと考えられます。一方で、金融政策面では3月20~21日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)において、今後の利上げペースの変更があるかが焦点となりそうです。ドル円の反応を考える上では金利と株価の動きが重要です。米国の利上げペースが加速した場合に、米長期金利が上昇し、株価の反応が限定的であれば、ドル円は米長期金利に連れて上昇するでしょう。一方、2月同様、米長期金利が予想外に急上昇し、株価が急落した際には、リスク回避の円買いによりドル円は下落する可能性があります。このほか、日銀の金融政策についてのスタンスや北朝鮮情勢に関する報道もドル円の波乱要因となり得るため、注意が必要でしょう。

マクロ経済展望

執筆者
エコノミスト 渡辺 浩志

世界的な株価急落はもう来ない?

  • 2月に米国の株価は史上最大の下落幅を記録し、株安は日本のほか世界各国へ波及しました。
  • あれは何だったのでしょうか。近々また同じようなことが起こる恐れはないのでしょうか。

歴史的な株価の下落 ~リスクの蓄積と暴発

図表1:米国の長期金利と株価

図表1

出所:Bloomberg、SonyFH

金利上昇も、景気後退や株価の本格調整は想定せず

米国経済と金利の関係

図表2:米国の長期金利と名目潜在成長率

図表2

出所:CBO、Bloomberg、SonyFH

今月のキーワード

潜在成長率

一国の経済活動は、「一時的な調子の良し悪し(景気循環)」と、「持続可能な成長力」で決まります。この持続可能な成長力が一国経済の実力であり、その伸び率が潜在成長率です。一般に潜在成長率は、その国の技術進歩率(生産性上昇率)と労働力の伸び率、生産設備の伸び率からなります。また、これは同時にその国の実物資産(生産設備や住宅)に投資を行った場合に得られる収益率と考えることが出来ます。そのため、これが投資コストである長期金利よりも高ければ投資活動は続くと考えられます。

ソニーフィナンシャルホールディングス
アナリストの紹介

尾河 眞樹(おがわ まき)

ソニーフィナンシャルホールディングス
執行役員 兼 金融市場調査部長
チーフアナリスト

ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン証券などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。2016年8月より現職。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBCなどにレギュラー出演し、金融市場の解説を行っている。著書に『為替がわかればビジネスが変わる(2014年日経BP社)』、『富裕層に学ぶ外貨投資術(2015年日経新聞出版社)』、『〈新版〉本当にわかる為替相場(2016年日本実業出版社)』などがある。

菅野 雅明(かんの まさあき)

ソニーフィナンシャルホールディングス
シニアフェロー
チーフエコノミスト

1974年日本銀行に入行後、秘書室兼政策委員会調査役、ロンドン事務所次長、調査統計局経済統計課長・同参事などの役職を歴任。日本経済研究センター主任研究員(日本銀行より出向)を経て、1999年JPモルガン証券入社、チーフエコノミスト・経済調査部長・マネジングディレクターとして日本の金融経済分析・予測を担当。2017年4月より現職。総務省「統計審議会」委員、財務省「関税・外国為替等審議会」専門委員、内閣府「経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会、金融・資本市場ワーキンググループ」メンバー、内閣官房「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」メンバー、厚生労働省「年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班」専門委員などを歴任。日本経済新聞「十字路」「経済教室」、日経QUICK「QUICKエコノミスト情報」、東洋経済「経済を見る眼」「論点」、NTT出版「危機の日本経済」など執筆多数。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」レギュラーコメンテーター。1974年東京大学経済学部卒、1979年シカゴ大学大学院経済学修士号取得。

渡辺 浩志(わたなべ ひろし)

ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
エコノミスト

1999年に大和総研に入社し、経済調査部にてエコノミストとしてのキャリアをスタート。2006年~2008年は内閣府政策統括官室(経済財政分析・総括担当)へ出向し、『経済財政白書』等の執筆を行う。2011年からはSMBC日興証券金融経済調査部および株式調査部にて機関投資家向けの経済分析・情報発信に従事。2017年1月より現職。内外のマクロ経済についての調査・分析業務を担当。ロジカルかつデータの裏付けを重視した分析を行っている。

石川 久美子(いしかわ くみこ)

ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
為替アナリスト

商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から研究員として、外国為替相場について調査・分析、レポートや書籍、ブログ、Twitterなどの執筆、セミナー講師、テレビやラジオなどのコメンテーターとして活動。2016年11月より現職。外国為替市場の調査・分析業務を担当。

本レポートについてのご注意

  • 本レポートは、ソニーフィナンシャルホールディングス株式会社(以下「当社」といいます)が経済情勢、市況などの投資環境に関する情報をお伝えすることを目的としてお客さまにご提供するものであり、金融商品取引法に基づく開示資料ではなく、特定の金融商品の推奨や売買申し込み、投資の勧誘等を目的としたものでもありません。
  • 本レポートに掲載された内容は、本レポートの発行時点における投資環境やこれに関する当社の見解や予測を紹介するものであり、その内容は変更又は修正されることがありますが、当社はかかる変更等を行い又はその変更等の内容を報告する義務を負わないものといたします。本レポートに記載された情報は、公的に入手可能な情報でありますが、当社がその正確性・信頼性・完全性・妥当性等を保証するものではありません。本レポート中のグラフ、数値等は将来の予測値を含むものであり、実際と異なる場合があります。
  • 本レポート中のいかなる内容も、将来の投資環境の変動等を保証するものではなく、かつ、将来の運用成果等を約束するものでもありません。かかる投資環境や相場の変動は、お客さまに損失を与える可能性もございます。
  • 当社は、当社の子会社及び関連会社(以下、「グループ会社」といいます)に対しても本レポートに記載される内容を開示又は提供しており、かかるグループ会社が本レポートの内容を参考に投資決定を行う可能性もあれば、逆に、グループ会社が本レポートの内容と整合しないあるいは矛盾する投資決定を行う場合もあります。本レポートは、特定のお客さまの財務状況、需要、投資目的を考慮して作成されているものではありません。また、本レポートはお客さまに対して税務・会計・法令・投資上のアドバイスを提供する目的で作成されたものではありません。投資の選択や投資時期の決定は必ずお客さまご自身の判断と責任でなされますようお願いいたします。
  • 当社及びグループ会社は、お客さまが本レポートを利用したこと又は本レポートに依拠したこと(お客さまが第三者に利用させたこと及び依拠させたことを含みます)による結果のいかなるもの(直接的な損害のみならず、間接損害、特別損害、付随的損害及び懲罰的損害、逸失利益、機会損失、代替商品又は代替サービスの調達価格、のれん又は評判に対する損失、その他の無形の損失などを含みますが、これらに限られないものとします)についても一切責任を負わないと共に、本レポートを直接・間接的に受領するいかなる投資家その他の第三者に対しても法的責任を負うものではありません。
  • 本レポートに含まれる情報は、本レポートの提供を受けられたお客さま限りで日本国内においてご使用ください。
  • 本レポートに関する著作権及び内容に関する一切の権利は、当社又は当社に対して使用を許諾した原権利者に帰属します。当社の事前の了承なく複製又は転送等を行わないようお願いします。