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かんたんにわかる!月刊 経済・為替ダイジェスト6月号

ソニーフィナンシャルホールディングスの金融市場調査部が最新のマクロ経済・為替相場の見通しについて解説します。

為替相場見通し

執筆者
シニアアナリスト 石川 久美子

石川 久美子
当面の注目ポイント
  • 貿易戦争が激化しないか(激化した場合は円高要因に)
  • アメリカの長期金利の上昇ペースについて
    (米長期金利の上昇が続けばドル高要因に)
  • 日本の金融政策が緩和的な状態を維持しているか
  • 北朝鮮や中東情勢を巡る地政学リスクが高まらないか
    (軍事的緊張が高まれば円高要因に)
  • 米トランプ政権の運営について
    (政権要人が辞任したり、保護主義への警戒が強まればドル安要因に)

過去2ヶ月の為替推移

過去2ヶ月の為替推移

出所:Bloomberg、SonyFH

貿易戦争懸念が重し

4月から5月のドル円相場は、ドル高・円安が進行後、ドル安・円高に転じました。4月に米中が通商問題を対話で解決するとの見方が広がり、米朝関係も改善の兆しが見えると、米中貿易戦争や地政学リスクを巡る警戒感が緩和し、ドル買いが強まりました。これを受け、5月中旬には1月以来の水準である111円台半ばまでドル高・円安が進行しました。しかし、5月24日にトランプ大統領が6月に予定されていた米朝首脳会談の中止を表明すると、北朝鮮情勢に対する警戒感が再燃し、ドル安・円高へ転換しました。

今後のドル円は、貿易戦争懸念が重しとなりながらも、米長期金利の高水準での推移を背景に底堅く推移すると考えられます。トランプ大統領は5月23日、自動車・同部品の関税を最大25%まで引き上げる姿勢を示したほか、31日には新たにEU・カナダ・メキシコから輸入する鉄鋼・アルミニウム製品に追加関税を賦課すると表明しました。依然として米国発の貿易戦争への懸念は根強く、こうした不安が当面のドル円の重しになると考えられます。ただし、米国側にも「貿易戦争に勝者なし」との認識はある模様で、米国と各国の対立状態は長期化する可能性はあるものの、次第に改善されていくとみています。一方、米国の経済指標が示しているように、米国経済は依然として堅調さを維持しています。これが、米長期金利が高水準で推移している背景です。引き続き今後発表される米経済指標の結果から米国経済の強さが確認され、米長期金利の上昇が続けば、ドル高・円安要因となるでしょう。なお、日銀の金融政策スタンスや北朝鮮・中東情勢、ロシアゲート問題などの関連報道は円高・ドル安要因となり得るため、引き続き注意が必要です。

マクロ経済見通し

執筆者
シニアエコノミスト 渡辺 浩志

渡辺 浩志

米国の金利が上がると新興国経済はどうなる?

米国の長期金利の上昇が続いています。このことは世界経済にどのような影響を及ぼすのでしょうか。米国景気は腰折れしてしまうのか、はたまた、新興国から投資マネーが流出し通貨危機が起こるのかーー。答えはどちらも“NO”だと思います。

米国の長期金利の上昇、当面の目途は3.3%

新興国は大丈夫か?

図表1:新興国通貨と投資家のリスク選好度

図表1

出所:MSCI、S&P、Bloomberg、 SonyFH

新興国危機は一部の脆弱国に限局

図表2:新興国のリスク指標

図表1

出所:IMF、世界銀行、SonyFH

今月のキーワード

通貨危機、金融危機、財政危機

新興国の多くは経常赤字やインフレを抱えており、通貨は下落圧力に晒されています。米金利の上昇などで、新興国へ流入していた資金が引き揚げられる際には、新興国通貨は売られ大幅に下落します。ひとたび通貨安となれば輸入インフレや経常赤字の拡大によって、更なる通貨安圧力が生じます。こうして止めどない通貨安が進むことを「通貨危機」と呼びます。また、新興国の多くは外貨建ての対外債務を抱えており、通貨安になればその分だけ自国通貨で計った債務額が膨張します。債務膨張で金融機関が連鎖的に破綻し金融システムが麻痺することを「金融危機」、国家財政が逼迫することを「財政危機」と呼びます。

ソニーフィナンシャルホールディングス
アナリストの紹介

尾河 眞樹(おがわ まき)

ソニーフィナンシャルホールディングス
執行役員 兼 金融市場調査部長
チーフアナリスト

ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン証券などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。2016年8月より現職。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBCなどにレギュラー出演し、金融市場の解説を行っている。著書に『為替がわかればビジネスが変わる(2014年日経BP社)』、『富裕層に学ぶ外貨投資術(2015年日経新聞出版社)』、『〈新版〉本当にわかる為替相場(2016年日本実業出版社)』などがある。

菅野 雅明(かんの まさあき)

ソニーフィナンシャルホールディングス
シニアフェロー
チーフエコノミスト

1974年日本銀行に入行後、秘書室兼政策委員会調査役、ロンドン事務所次長、調査統計局経済統計課長・同参事などの役職を歴任。日本経済研究センター主任研究員(日本銀行より出向)を経て、1999年JPモルガン証券入社、チーフエコノミスト・経済調査部長・マネジングディレクターとして日本の金融経済分析・予測を担当。2017年4月より現職。総務省「統計審議会」委員、財務省「関税・外国為替等審議会」専門委員、内閣府「経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会、金融・資本市場ワーキンググループ」メンバー、内閣官房「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」メンバー、厚生労働省「年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班」専門委員などを歴任。日本経済新聞「十字路」「経済教室」、日経QUICK「QUICKエコノミスト情報」、東洋経済「経済を見る眼」「論点」、NTT出版「危機の日本経済」など執筆多数。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」レギュラーコメンテーター。1974年東京大学経済学部卒、1979年シカゴ大学大学院経済学修士号取得。

渡辺 浩志(わたなべ ひろし)

ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
シニアエコノミスト

1999年に大和総研に入社し、経済調査部にてエコノミストとしてのキャリアをスタート。2006年~2008年は内閣府政策統括官室(経済財政分析・総括担当)へ出向し、『経済財政白書』等の執筆を行う。2011年からはSMBC日興証券金融経済調査部および株式調査部にて機関投資家向けの経済分析・情報発信に従事。2017年1月より現職。内外のマクロ経済についての調査・分析業務を担当。ロジカルかつデータの裏付けを重視した分析を行っている。

石川 久美子(いしかわ くみこ)

ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
シニアアナリスト

商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から研究員として、外国為替相場について調査・分析、レポートや書籍、ブログ、Twitterなどの執筆、セミナー講師、テレビやラジオなどのコメンテーターとして活動。2016年11月より現職。外国為替市場の調査・分析業務を担当。

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