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思わぬ高額になることも 海外旅行の医療費に備えるには?
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夏休みシーズンとなり、海外旅行を計画している家庭も少なくないでしょう。そのときに忘れてはいけないのが、現地で病気になったり、ケガをしたりした場合の医療費対策。一般的に海外での医療費は国内より高額で、中には数百万円以上の費用がかかるケースもあります。上手に備えるにはどうすればよいのか、ファイナンシャルプランナーの山口京子さんに教えていただきました。

海外の医療費事情は?

国内では医療費の自己負担額が抑えられているけれど

医療費事情は国により異なります。日本国内であれば公的医療保険(協会けんぽ、健康保険組合、国民健康保険など)が適用されるため、自己負担額は小学生以上69歳以下の場合はかかった医療費の3割、70歳以上の場合は年齢や所得によりかかった医療費の1~3割です。さらに前回紹介した高額療養費制度もあり、自己負担額は一定の範囲に抑えられています(詳細は「払いすぎた医療費が戻ってくる高額療養費制度」とは? )。「しかし海外では一般的に医療費は高額で、中には家計が脅かされるほどの費用がかかる場合があります」と山口京子さんは注意を促します。

1,000万円超の費用がかかるケースも

一例ですが、高額な医療費がかかったケースを挙げたのが図表1です。ハワイで急性虫垂炎により366万円かかったケースや、アメリカでくも膜下出血により2,528万円もの費用がかかったケースが見受けられます。数百万円以上の医療費がかかるとなると、家計に大きな負担がかかり、ライフプランが崩れるおそれもあります。「貯蓄で対応しきれないリスクをカバーするには保険が有効です。軽いケガや風邪、インフルエンザなどでも数万円はかかるので、海外の医療費には海外旅行保険で備えることをお薦めします」(山口さん)。

図表1 海外で高額な医療費がかかった事例

事故や
病気の
種類
国・地域 内容 支払
保険金
急性
虫垂炎
ハワイ 3日間入院・手術。
家族が駆けつける
366
万円
くも膜下
出血
アメリカ 19日間入院・手術。
家族が駆けつける
2,528
万円
脳梗塞 中国 29日間入院。
家族が駆けつける
605
万円
急性
心不全
マレー
シア
17日間入院。家族が駆けつける
医師・看護師が付き添い医療搬送
491
万円
頭部外傷・
硬膜
下血腫
サイパン 転倒、
後頭部を強打。
救急車で搬送
10日間入院。
家族が駆けつける
医師・看護師が
付き添い
チャーター機で
医療搬送
2,367
万円

出典元:ジェイアイ傷害火災保険 2016年度「海外での事故例」を基に作成

海外旅行保険の補償内容は?

治療・救援費用をしっかり確保

図表2 海外旅行保険で押さえておきたい補償

補償の種類 主な補償内容
①傷害死亡・
後遺障害
ケガにより死亡または後遺障害が生じた場合を補償
②疾病死亡 病気により死亡した場合を補償
③治療・
救援費用
●治療費用部分/病気やケガにより医療機関でかかった治療費、治療のために必要な通訳の雇入費、入院または通院のための交通費など ●救援費用部分/被保険者の救助・移送費用、現地に赴く被保険者の親族の航空機等の往復運賃・宿泊施設の客室料、治療継続中の被保険者の自国移送費用など ※ただし上記のいずれも既往症や妊娠・出産などが原因の治療費用等は除外
④賠償責任 偶然な事故により他人にケガを負わせたり、他人の物を壊したりして法律上の賠償責任を負った場合に損害賠償金等を補償(例えば店舗の商品やホテルの備品を壊したり、浴室を水浸しにして弁償の必要が生じた場合など)
⑤携行品
損害
バッグ、カメラ、時計などの持ち物が盗難に遭ったり、壊れたりした場合を補償(現金、クレジットカードなどは除く)。

「重視したいのは③の『治療・救援費用』。特に子どもやおじいちゃん、おばあちゃんなど高齢者が同行する場合、病気やケガのリスクが高くなるので補償はしっかり確保しておきましょう」。補償額は無制限に設定できる場合もあります。「旅行の行き先と日程、どこまで備えたいかに応じて選択しましょう」(山口さん)。

病院で治療を受けると、補償額を上限に実際にかかった費用がカバーされます。「キャッシュレスサービスが利用できる病院で受診すれば、保険会社が病院に直接治療費を支払うため、保険金請求の手間も不要。とても便利です」。キャッシュレスサービスが利用できない病院を受診する場合には、後日、保険会社に治療費の実費を請求することになります。

なお、「治療・救援費用」では既往症は補償の対象外となります。「既往症については『疾病に関する応急治療・救援費用』をセットすると補償が確保できます。補償額は300万円程度までと限定的ですが、既往症の急激な悪化により医師の治療を受けた場合などが対象になります」。

携行品損害と賠償責任も確保

④の「賠償責任」や⑤の「携行品損害」は、医療費とは直接関係ありませんが、海外旅行中のアクシデントに備えるには確保しておきたい補償。「楽しいはずの家族旅行がトラブルにより悲しい思い出になってしまううえ、お財布まで痛むのは残念なこと。補償があれば少なくともお財布を痛めることは避けられます」(山口さん)。

上手に海外旅行保険に加入・
利用する手順

賢く補償を確保するには?

海外旅行保険に加入する窓口は旅行代理店、インターネット、空港の自動販売機およびカウンターです。「まず手持ちのクレジットカードの補償内容を確認し、不足する補償を別途、海外旅行保険への加入でカバーするという手順を踏むのがおすすめです」。各ステップのポイントを説明していきましょう。

STEP1クレジットカードの海外旅行保険の補償内容を確認

家族の範囲をチェック

まずはクレジットカード付帯の海外旅行保険が誰を補償するかチェックしましょう。「カード会員本人のほか、両親などの親族を補償する場合があります。一口に親族といっても別居の場合は対象外。一方、未婚の子どもの場合は、別居でも対象になります。誰が補償の対象になるのか確認します」(山口さん)。

保険が有効になる条件をチェック

次に保険が有効になる条件をチェックしましょう。「クレジットカードにより、カード利用がなくても海外旅行保険が有効になる『自動付帯』と、航空機のチケット代など旅行関連の費用をカードで支払うことで保険が有効になる『利用付帯』があります。利用付帯の場合には、どのタイミングで何をすれば保険が有効になるのか確認します」。

補償内容をチェック

ここまで済んだら補償内容をチェックします。「クレジットカード付帯の海外旅行保険の場合、補償が『傷害死亡・後遺障害』のみだったり、『治療・救援費用』の補償があっても100万~200万円程度にとどまったりするなど補償を十分確保できない場合があります。また、家族が家族カード会員か否かにより補償額が異なる場合や、同じカードでも自動付帯か利用付帯かにより補償額が異なる場合があるので、手持ちのカードでは誰がどの補償をいくら得られるのか、よくチェックしましょう。

複数枚のクレジットカードを持っている場合、傷害死亡・後遺症以外は複数のカード付帯保険の補償を合算することができます(傷害死亡・後遺症では高いほうの金額が採用されます)例えばAカードで疾病・傷害治療費が200万円、Bカードで300万円の補償が受けられる場合、最終的に「200+300=500万円」までの補償が受けられるということです。だだし、同系列のカードは合算出来ないことがあるので、あらかじめ確認しておきましょう。

STEP2クレジットカード付帯保険で不足する補償を確保

「こうして一度わが家の海外旅行保険プランをきっちり作っておくと、次回以降も考えやすいですね」。それでもやはりいろいろ調べるのは面倒という場合には、旅行の申込先が勧めるパッケージ商品の中から選ぶのも一つの手です。その場合、ファミリープランを選ぶと保険料が抑えられます。
「ただし、クレジットカードの保険のように、別居の親は『家族』の定義に含まれないので確認を。また、一定年齢以上の高齢者を補償の対象外にしている保険会社もあるので、おじいちゃん、おばあちゃんが同行する場合には注意しましょう」。

忙しくて旅行当日まで海外旅行保険に加入していなかった場合には、空港で加入することをおすすめします。

現地で実際に利用するときには?

「海外旅行保険に加入すると保険証券などとともに、保険の内容の詳細や各種サービスの利用方法、問い合わせ先が記載されたガイドブック(名称は各社による)が渡されるので、必ず旅行先に持参しましょう」(山口さん)。治療費のキャッシュレスサービスは、保険証券などがないと受けられないケースもあるので要注意です。

実際に病院での治療が必要な場合には、まず日本語対応のサポートデスクなどに電話をします(治療費のキャッシュレスサービスを利用するには、この手順が必要です)。すると、キャッシュレスサービスが利用できる病院を紹介してもらえます。「必要に応じて通訳を派遣してもらったり、通訳に電話を通じで医師に対応してもらったりできることもあります」。キャッシュレスサービスを利用できる病院が近くにない場合には、クレジットカード等で治療費を立替払のうえ、必要書類を添付して保険会社に請求します。「医師の診断書や治療費の明細書・領収書など現地で手配する書類もあるので、何が必要になるのか旅行前にガイドブック等で確認しておくといいでしょう」。

クレジットカード付帯保険の場合も、利用の手順は同様です。「日本語対応のサポートデスク等があるはずなので、電話番号を控えて旅行に出ましょう」。また、クレジットカード会社に請求すると、カード付帯保険のガイドブック等を送付してもらえる場合もあるので、旅行前に取り寄せて利用手順や必要書類を確認しておくことをお薦めします。

公的医療保険の「海外療養費制度」もチェック

日本で保険診療が認められている治療の
費用が対象

公的医療保険には海外でかかった医療費の一部をカバーする「海外療養費制度」があります。「支給対象になるのは、公的医療保険で保険診療が認められている治療を受けた場合の費用です」(山口さん)。
支給額の計算は次のとおり。

図表3 海外療養費制度の支給額の計算例

海外療養費制度の支給額の計算例

海外療養費を申請するには?

海外旅行保険の保険金の請求と海外療養費の申請は併用できる、と山口さん。「ただし、併用できるのは現地でいったん治療費を立替払した場合に限ります。海外旅行保険のキャッシュレスサービスを利用すると、海外療養費の申請に必要な治療費の領収書が発行されないため、併用は不可となります」
なお、海外療養費を申請できる期間は、海外で治療費の支払をした翌日から2年となります。

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医療保険や医療特約は海外での入院・
手術も対象に

ソニー生命の医療保険や医療特約では、約款上の入院・手術であれば海外での入院・手術も給付金の対象となります。給付金の請求には現地の医師が証明する当社所定の診断書が必要

です。なければ、ソニー生命の担当者またはカスタマーセンターに依頼すると、所定の『入院・手術証明書(英文)』が送られてきます。それを現地の医療機関に郵送し、必要事項を記入のうえ返送してもらえば給付金の請求ができるので、ぜひ覚えておきましょう。

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※掲載内容は2018年8月1日時点の情報に基づく
取材協力・監修/山口京子(ファイナンシャルプランナー)
取材・文/萬真知子
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