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かんたんにわかる!月刊 経済・為替ダイジェスト10月号

ソニーフィナンシャルホールディングスの金融市場調査部が最新のマクロ経済・為替相場の見通しについて解説します。

為替相場見通し

執筆者
ジュニアアナリスト 政木 瑞江

政木 瑞江
当面の注目ポイント
  • 貿易戦争が激化しないか
    (より広範な関税合戦や通貨安競争となるなど貿易戦争が激化した場合は円高要因に)
  • 米国の長期金利の上昇ペースについて
    (米長期金利の上昇ペースが加速すればドル高要因に)
  • 北朝鮮や中東情勢を巡る地政学リスクが高まらないか
    (軍事的緊張が高まれば円高要因に)
  • トランプ大統領の不規則発言が出ないか
    (ドル高牽制や利上げに反対する発言があればドル安要因に)
  • トランプ政権の不透明感が高まらないか
    (支持率急落を招くような政治的・個人的スキャンダルがあればドル安要因に)

過去2ヶ月の為替推移

過去2ヶ月の為替推移

出所:Bloomberg、SonyFH

堅調推移も、上値は限定的か

8月から9月のドル円はドル安・円高が進行した後、ドル高・円安に転じました。トランプ大統領による2,000億ドル規模の対中制裁関税の表明(8月1日)、米国とトルコの関係悪化を背景としたトルコリラの急落等によるリスクオフで、8月中旬までは緩やかなドル安・円高が進行しました。しかしその後、堅調な株式市場を背景にドル高・円安に転換。さらに、9月に入り米長期金利が上昇すると、日米金利差拡大期待を背景に113円台までドル高・円安が進みました。

今後のドル円は、良好な米景気を背景に堅調に推移するものの、通商問題への根強い警戒感から上昇幅は限られると予想します。米景気は依然堅調であり、今後も米連邦準備理事会(FRB)による緩やかな利上げが続く公算であることから、日米金利差拡大に伴うドル高・円安圧力が継続しそうです。一方、通商問題に関しては、米中は関税合戦を続けているほか、日米も「物品貿易協定(TAG)」の交渉を開始することで合意しました。これは自動車の輸出規制や為替条項を含む日米自由貿易協定(FTA)につながる交渉の幕開けと見られており、依然通商問題の先行きは不透明です。米国では11月6日に中間選挙が実施される予定で、トランプ大統領は自らの支持率を上げるためにこうした通商面での強硬姿勢を貫いていると考えられます。したがって、11月の中間選挙まではトランプ大統領が通商問題に対する強硬姿勢を軟化させる可能性は低く、米国とその他各国の緊迫関係は続くとみられます。このような通商問題への懸念が重しとなり、ドル円の上昇幅は限定的となりそうです。なお、中間選挙を巡る関連報道には注意が必要でしょう。与党共和党が上院・下院で過半数を割り込み、大統領と議会与党の間で「ねじれ」が生じる可能性が意識された場合、減税等の政策が実現し難くなるとの不安からドル安・円高が進展する可能性があります。

マクロ経済見通し

執筆者
シニアエコノミスト 渡辺 浩志

渡辺 浩志

米国株「独り勝ち」の賞味期限

米国の株高はもう限界?

図1:米国株 v.s. 世界株
~米国独り勝ちの様相

図表1

出所:S&P、 MSCI、SonyFH

株価の点検

図2:PERと景況感
~米国株に過熱感はない

図表2

出所: ロバート・シラー教授、コンファレンスボード、SonyFH

米国株価の見通し

今月のキーワード

株価とマクロ経済の関係

本文中で示したように、「株価=一株利益(EPS)×その評価(PER)」と表すことが出来ます。EPSはマクロ経済では名目GDPに、PERは景況感に相当します。そのため、EPSやPERがこれらのマクロ経済指標と比べて異様な振る舞いをしていないかを点検すれば、株価の適正値が自ずと見えてきます。また、経済予測と整合的な株価の見通しを立てることも出来ます。今後、トランプ大統領が更なる拡張財政に踏み出せば、経済成長率が高まるとともに株価が上振れするでしょう。一方、保護主義によって世界貿易が縮小したり米国で悪性インフレが生じれば、経済成長率や景況感が悪化し、相応に株価が下振れることになります。

ソニーフィナンシャルホールディングス
アナリストの紹介

尾河 眞樹(おがわ まき)

尾河 眞樹(おがわ まき)

ソニーフィナンシャルホールディングス
執行役員 兼 金融市場調査部長
チーフアナリスト

ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン証券などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。2016年8月より現職。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBCなどにレギュラー出演し、金融市場の解説を行っている。著書に『為替がわかればビジネスが変わる(2014年日経BP社)』、『富裕層に学ぶ外貨投資術(2015年日経新聞出版社)』、『〈新版〉本当にわかる為替相場(2016年日本実業出版社)』などがある。

菅野 雅明(かんの まさあき)

菅野 雅明(かんの まさあき)

ソニーフィナンシャルホールディングス
シニアフェロー
チーフエコノミスト

1974年日本銀行に入行後、秘書室兼政策委員会調査役、ロンドン事務所次長、調査統計局経済統計課長・同参事などの役職を歴任。日本経済研究センター主任研究員(日本銀行より出向)を経て、1999年JPモルガン証券入社、チーフエコノミスト・経済調査部長・マネジングディレクターとして日本の金融経済分析・予測を担当。2017年4月より現職。総務省「統計審議会」委員、財務省「関税・外国為替等審議会」専門委員、内閣府「経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会、金融・資本市場ワーキンググループ」メンバー、内閣官房「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」メンバー、厚生労働省「年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班」専門委員などを歴任。日本経済新聞「十字路」「経済教室」、日経QUICK「QUICKエコノミスト情報」、東洋経済「経済を見る眼」「論点」、NTT出版「危機の日本経済」など執筆多数。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」レギュラーコメンテーター。1974年東京大学経済学部卒、1979年シカゴ大学大学院経済学修士号取得。

渡辺 浩志(わたなべ ひろし)

渡辺 浩志(わたなべ ひろし)

ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
シニアエコノミスト

1999年に大和総研に入社し、経済調査部にてエコノミストとしてのキャリアをスタート。2006年~2008年は内閣府政策統括官室(経済財政分析・総括担当)へ出向し、『経済財政白書』等の執筆を行う。2011年からはSMBC日興証券金融経済調査部および株式調査部にて機関投資家向けの経済分析・情報発信に従事。2017年1月より現職。内外のマクロ経済についての調査・分析業務を担当。ロジカルかつデータの裏付けを重視した分析を行っている。

石川 久美子(いしかわ くみこ)

石川 久美子(いしかわ くみこ)

ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
シニアアナリスト

商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から研究員として、外国為替相場について調査・分析、レポートや書籍、ブログ、Twitterなどの執筆、セミナー講師、テレビやラジオなどのコメンテーターとして活動。2016年11月より現職。外国為替市場の調査・分析業務を担当。

政木 瑞江(まさき みずえ)

政木 瑞江(まさき みずえ)

ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
ジュニアアナリスト

2014年4月、日本マスタートラスト信託銀行に入行し、市場管理部にて外国有価証券の管理業務に従事。2015年10月にソニー生命保険に入社し、財務部にて変額保険勘定(特別勘定)の管理・運用を行う。2016年8月、ソニーフィナンシャルホールディングスへ出向し、金融市場調査部の立ち上げに参画。2017年4月より現職にて外国為替市場の調査・分析業務を担当。

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