ソニーフィナンシャルホールディングスの金融市場調査部が最新のマクロ経済・為替相場の見通しについて解説します。
※執筆日(11/4)時点の情報となります。
執筆者
アナリスト 森本 淳太郎
過去2ヶ月の為替推移
出所:Bloomberg、SFH
9月上旬に106円台前半だったドル円は、10月後半にかけて緩やかにドル安・円高方向に進みました。背景にあるのは、欧州や米国における新型コロナの感染拡大の深刻化です。欧州では、3月のピーク時を遥かに超える新型コロナの新規感染者が確認されており、各国で経済活動を制限する措置が取られました。また、米国では、これまで感染拡大が抑制されてきた中西部の州で感染が拡大しています。こうした欧米での感染拡大が嫌気され、市場心理は悪化。リスク回避の円高が優勢となり、10月下旬には104円ちょうど近辺までドル安・円高が進んでいます。
コロナショック後、米国が強力な金融緩和を行う中で、市場には大量のドルが供給され、4月以降のドル円相場は緩やかにドル安・円高が進行してきました。これまでは、経済活動が再開に向かっていることで、市場心理の改善による円売り圧力が強まる場面も見られましたが、足下では新型コロナの「第2波」「第3波」が深刻化しています。市場がリスク回避に大きく傾けば、今まで以上にドル円相場がドル安・円高方向に動くリスクは大きくなっていると言えるでしょう。米国における追加経済対策を巡る協議の難航も、市場心理を悪化させる要因の1つです。成立が遅れれば、財政刺激効果が一時的に剥落することから、リスク回避の円高が進むと考えられます。もっとも、事態が更に深刻すれば、「基軸通貨」であるドルを買い戻す動きも強まることが予想されます。ドルが他の通貨に対して買われれば、ドル円相場においてもドル高圧力が強まりますので、ドル円が100円を割り込んで大きく円高方向に振れる可能性は引き続き低いとみています。
執筆者
シニアエコノミスト 渡辺 浩志
図: トランプ・バイデン両氏の経済政策の比較
出所:米CRFB(責任ある連邦予算委員会)、SFH
今月のキーワード
米国・日本・ユーロ圏・中国の実質GDPや政策金利、ドル円・ユーロ円・ポンド円・豪ドル円の見通しをデータで表示しております。
経済・為替についてDaily Market Report(日次)、Weekly FX Market Focus(週次)など、より詳しいマーケット情報をご覧いただけます。(ソニーフィナンシャルホールディングスのページへ遷移します)
尾河 眞樹(おがわ まき)
ソニーフィナンシャルホールディングス
執行役員 兼 金融市場調査部長
チーフアナリスト
ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン証券などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。2016年8月より現職。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBCなどにレギュラー出演し、金融市場の解説を行っている。著書に『為替がわかればビジネスが変わる(2014年日経BP社)』、『〈新版〉本当にわかる為替相場(2016年日本実業出版社)』、『ビジネスパーソンなら知っておきたい仮想通貨の本当のところ(2018年朝日新聞出版社』、『富裕層に学ぶ外貨建て投資(2019年日本経済新聞出版)』などがある。ソニー銀行取締役、大阪経済大学非常勤講師、SBI大学院大学教授。
菅野 雅明(かんの まさあき)
ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
シニアフェロー チーフエコノミスト
1974年日本銀行に入行後、秘書室兼政策委員会調査役、ロンドン事務所次長、調査統計局経済統計課長・同参事などの役職を歴任。日本経済研究センター主任研究員(日本銀行より出向)を経て、1999年JPモルガン証券入社、チーフエコノミスト・経済調査部長・マネジングディレクターとして日本の金融経済分析・予測を担当。2017年4月より現職。総務省「統計審議会」委員、財務省「関税・外国為替等審議会」専門委員、内閣府「経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会、金融・資本市場ワーキンググループ」メンバー、内閣官房「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」メンバー、厚生労働省「年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班」専門委員などを歴任。日本経済新聞「十字路」「経済教室」、日経QUICK「QUICKエコノミスト情報」、東洋経済「経済を見る眼」「論点」、NTT出版「危機の日本経済」など執筆多数。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」レギュラーコメンテーター。1974年東京大学経済学部卒、1979年シカゴ大学大学院経済学修士号取得。
渡辺 浩志(わたなべ ひろし)
ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
シニアエコノミスト
1999年に大和総研に入社し、経済調査部にてエコノミストとしてのキャリアをスタート。2006年~2008年は内閣府政策統括官室(経済財政分析・総括担当)へ出向し、『経済財政白書』等の執筆を行う。2011年からはSMBC日興証券金融経済調査部および株式調査部にて機関投資家向けの経済分析・情報発信に従事。2017年1月より現職。内外のマクロ経済についての調査・分析業務を担当。ロジカルかつデータの裏付けを重視した分析を行っている。
石川 久美子(いしかわ くみこ)
ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
シニアアナリスト
商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から研究員として、外国為替相場について調査・分析、レポートや書籍、ブログ、Twitterなどの執筆、セミナー講師、テレビやラジオなどのコメンテーターとして活動。2016年11月より現職。外国為替市場の調査・分析業務を担当。
森本 淳太郎(もりもと じゅんたろう)
ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部
アナリスト
みずほフィナンシャルグループにて企画業務、法人営業などを経験した後、2019年8月、ソニーフィナンシャルホールディングスへ入社。外国為替市場の調査・分析業務を担当。
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