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パートやフリーランス 「年収の壁」と家計のための働き方

「子育てが一段落したので再び働きたい」、「ライフプラン実現のために家計を強化したい」など、様々な理由から働きたいと考えている専業主婦(主夫)の方は少なくないでしょう。そのときに気になるのが「年収の壁」。年収が一定額を上回り世帯主の扶養から外れると、働いても世帯の手取り年収が減る場合があり、どのぐらい働くのが家計のためになるのか悩ましいところです。年収の壁をどう捉え、どう働くのが将来の家計のためになるのか。パートで働く場合、フリーランスで働く場合それぞれについて、ファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さんに教えていただきます。

いくつもある「年収の壁」を整理

ここでは、世帯主が配偶者控除を受けている場合の、配偶者の働き方と家計の手取り年収への影響についてお話ししていきます。まず、配偶者がパートなど給与所得者になるケースから見ていきましょう。パートで働こうと思ったときに、多くの人が頭を悩ませるのが「年収の壁」。「年収の壁とは世帯主の扶養の範囲から外れる年収のこと。配偶者の年収がその金額に達すると税金や社会保険料の負担が発生します」(鈴木さん)。

税金の負担とは配偶者の所得税や住民税のことです。また、配偶者の年収増のため世帯主が配偶者控除や配偶者特別控除を受けられなくなり、世帯主の所得税・住民税の負担が増える場合もあります。

社会保険料の負担とは健康保険料や厚生年金保険料のことです。

図表1 これだけある「年収の壁」

  • *1 正社員が501人以上の会社で働いている場合
  • *2 正社員が501人未満の会社で働いている場合
    (*1*2に関して、労働時間が週20時間以上、月収が8.8万円以上、雇用期間が1年以上の見込み、学生ではない等、他の要件もあります)
  • *3 「配偶者控除」「配偶者特別控除」は世帯主にかかわるもの。世帯主の合計所得金額が1,000万円を超えると受けられない

「一方、社会保険料については壁の手前では0円だったのが、年収106万円または130万円に達するとそれぞれ年に約15万円または約18万円という大きな負担が発生します。ですから注意したいのは社会保険料の壁だということになるでしょう」。

ただし、年収103万円の壁についても家計に大きな影響を及ぼす場合があると鈴木さんは話します。次項で詳しく見ていきましょう。

「103万円の壁」を気にする人が多いけれど

税金面での家計への影響は軽微

ですが「①配偶者の所得税がかかる」については、前述のとおり年収が103万円を超えて104万円になっても所得税の負担は年500円です。

年500円になる仕組みは次のとおりです。
所得税は

課税所得 = 収入(パートの額面年収)− 給与所得控除額(最低55万円)− 基礎控除(48万円)

という計算式により算出された課税所得に所定の税率を掛けて計算します。パートの額面年収が104万円の場合、給与所得控除額は55万円なので、

課税所得 = 104万円 − 55万円 − 48万円 = 1万円

となり、課税所得の1万円に対して所得税がかかります。
この場合、税率は5%なので

所得税 =1万円 × 5% = 500円

となるわけです。

次に「②世帯主の配偶者控除が適用できなくなること」についてです。世帯主が配偶者控除を受けている場合、年収103万円を超えると世帯主の配偶者控除から外れると心配する人がいるかもしれません。確かに配偶者控除からは外れ、配偶者特別控除に切り替わるものの、世帯主が受けられる控除額は配偶者の年収が150万円になるまで変わりません。

「これは配偶者の年収が150万円に達するまでは、控除による世帯主の所得税や住民税の減税額は変わらないということを意味します。世帯主の所得金額が年900万円以下(給与所得のみの場合、年収1,095万円以下)の場合、配偶者控除額と配偶者特別控除額はどちらも38万円なので、世帯主の所得税率が23%であれば控除による所得税の減税額は38万円×23%=8万7,400円。これが配偶者の年収が150万円までは続くということです」。

図表2 配偶者控除等は世帯主の年収(合計所得金額)によって異なる

控除額 【参考】
控除が可能な
配偶者の年収
(*4)
世帯主の合計所得金額
900万

以下
(*1)
900万
円超
950万円以下
(*2)
950万
円超
1,000万円以下
(*3)
配偶者の合計所得金額 配偶者控除 48万円以下 69歳以下 38万円 26万円 13万円 103万円以下
70歳以上 48万円 32万円 16万円
配偶者特別控除 48万円超95万円以下 38万円 26万円 13万円 103万円超
150万円以下
95万円超100万円以下 36万円 24万円 12万円 150万円超
155万円以下
100万円超105万円以下 31万円 21万円 11万円 155万円超
160万円以下
105万円超110万円以下 26万円 18万円 9万円 160万円超
166万7,999円以下
110万円超115万円以下 21万円 14万円 7万円 166万7,999円超
175万1,999円以下
115万円超120万円以下 16万円 11万円 6万円 175万1,999円超
183万1,999円以下
120万円超125万円以下 11万円 8万円 4万円 183万1,999円超
190万3,999円以下
125万円超130万円以下 6万円 4万円 2万円 190万3,999円超
197万1,999円以下
130万円超133万円以下 3万円 2万円 1万円 197万1,999円超
201万5,999円以下
133万円超 0円 0円 0円 201万5,999円超
  • *1 給与所得のみの場合は年収1,095万円以下
  • *2 給与所得のみの場合は年収1,095万円超1,145万円以下
  • *3 給与所得のみの場合は年収1,145万円超1,195万円以下
  • *4 配偶者の収入が給与所得のみの場合

影響が大きいのは「配偶者手当」のある世帯

103万円の壁は税金面ではそれほど気にする必要がないことがわかりましたが、家計への影響が大きいお宅もあると鈴木さんは話します。「それは世帯主が勤務先から『配偶者手当』を支給されている場合です」(鈴木さん)。勤務先によっては「配偶者手当」や「扶養手当」などの名称で月1万円程度(東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」より)のお金が給与に上乗せされる場合があります。年額換算すると約12万円です。

「手当にも課税されるので手取りで年約12万円減るというわけではありませんが、家計への影響は大きいといえます」。配偶者手当等がなくなることによる減収分をカバーするには、配偶者は年収116万円程度まで働く必要が出てきます(130万円から社会保険料が発生する人の場合)。

社会保険料の壁は「130万円」と「106万円」の2パターン

今後は「年収106万円の壁」の対象になる人が増える

前述のとおり、どの世帯にとっても要注意となるのは社会保険料の壁です。「社会保険料の壁には2パターンあります。従来からの壁は年収130万円ですが、2016年10月以降、正社員501人以上の会社で1年以上働く見込みがある場合、年収106万円以上になると社会保険に加入することになっています」(鈴木さん)。

「社会保険料の負担は「年収130万円の壁」の場合が約18万円/年、「年収106万円の壁」の場合が約15万円/年です。配偶者が壁を越えて働く場合、減収分をカバーできる年収の目安は前者が約151万〜152万円、後者が約123万円となります。この目安額以上に働けば、以降は年収が増えるほど世帯収入も増えていくことになります」。

なお、今後は段階的に年収106万円の壁の対象になる人が増えます。「2022年10月からは正社員101人以上、2024年10月からは正社員51人以上の会社で、年収106万円以上になると社会保険に加入することになります。それも考慮に入れておきましょう」。

社会保険への加入はメリットも

健康保険(協会けんぽ、健康保険組合)と厚生年金という社会保険に加入することで保険料の負担が発生するものの、メリットがあることも知っておいてほしいと鈴木さんは話します。

  • ・健康保険に加入すると、要件に該当した場合に「傷病手当金」や「出産手当金」が受け取れる
  • ・厚生年金に加入すると、障害年金などの保障が充実し、自分自身の老齢年金も増える

というメリットがあります。

傷病手当金は病気やケガで4日以上仕事を休んだ場合に給与の3分の2程度が最長1年6カ月受け取れます。出産手当金は産休中に給与の支払いを受けなかった場合に支給されるお金で、給与の3分の2程度が最長98日分受け取れます。

「年収の壁」の影響を踏まえ、どう働けばいい?

ここまでお話ししてきた「年収の壁」を踏まえ、今後の働き方をどう考えればいいのでしょうか。世帯主が配偶者手当の付く会社に勤めているから年収103万円までにとどめようとか、社会保険料を負担することになるから年収130万円未満の範囲で働こうとか、いろいろな思いがわいてくるものです。

「ただ、配偶者手当は勤務先の制度改正によりいつ廃止されるかわかりません。社会保険料の壁も段階的に多くの企業で106万円に引き下がっていくことが予定されています。将来の家計のためを考えるなら、年収の壁による一時的な手取り収入の減少にこだわり過ぎず、年収160万円以上を目指すことも検討するとよいでしょう」(鈴木さん)。

ただ、パートでそこまで年収を増やすにはかなり長時間働く必要が出てきます。自分が望むライフスタイルや家族の事情も考えて働き方を考えることが重要だと鈴木さんは話します。

フリーランスなど在宅ワーカーの「年収の壁」は?

パートなど給与所得者の人とは異なる

近年はデータ入力、ライティング、Webサイトの制作などフリーランスとして働く主婦(主夫)も増えています。「その場合、パートなどの給与所得者ではなく事業所得者となり、年収の壁の計算方法が異なるので要注意です」(鈴木さん)。

まず、配偶者自身に所得税がかかったり、世帯主の配偶者控除から外れて配偶者特別控除に切り替わる年収について見ていきましょう。「パートの場合には年収103万円がそれに該当しますが、フリーランスなどの場合は事業収入(売上)から経費を差し引いた金額が基礎控除の48万円以下であれば、配偶者に所得税がかかったり世帯主の配偶者控除から外れることはありません」。

計算式にすると

事業収入(売上)− 経費 ≦ 48万円

となります。「経費は人により異なるので、給与所得者のように一定金額の年収の壁というものはないということになります」。

また、税務署に届け出をして青色申告者になると最大65万円の青色申告特別控除が受けられるので、その場合の計算式は

事業収入(売上)− 経費 − 青色申告特別控除額(最大65万円)≦ 48万円

となります。

なお、住民税は事業所得が43万円を超えるとかかるようになります。

社会保険に加入するのは

社会保険への加入についてはパートの場合は年収130万円(または年収106万円から)以上ですが、フリーランスの場合は「年収130万円以上」という場合もあれば、年収から経費等を差し引いた「事業所得が130万円以上」という場合もあります。

「世帯主が加入する健康保険の規定により条件は異なるので、きちんと確認することをおすすめします。年収だけでなく月収の規定を設けている場合もあります」(鈴木さん)。

フリーランスの場合、社会保険は国民健康保険と国民年金になります。「パートなど給与所得者の場合は健康保険料や年金保険料の負担が勤務先との折半になりますが、フリーランスの場合は全額自己負担になります」。

フリーランスはどのように働けばいい?

フリーランスの場合、社会保険に自分で加入しなければならなくなると負担が重くなることがお分かりかと思います。「社会保険に加入するラインが『年収』なのか『経費を差し引いた所得』なのかにより異なりますが、前者とした場合、配偶者の年収130万円から160万円程度までは、保険料の自己負担のため、年収130万円の直前より手取り収入が減るおそれがあります」(鈴木さん)。

これを踏まえたうえで今後の働き方を検討しましょう。「社会保険は世帯主の扶養の範囲でと思うなら、年収ベース・月収ベースでいくらまで働いても大丈夫か、世帯主の会社の規定に沿って考えましょう。自分でそれなりの社会保険料を負担してでも働きたいという場合には、社会保険に加入するラインが年収であれば年収160万円以上、所得であれば事業所得160万円以上を目指せば、世帯の手取り年収も増えていきます」。

掲載内容は2021年5月1日時点の情報に基づく
取材協力・監修/鈴木 さや子(CFP®、1級ファイナンシャルプランニング技能士)
取材・文/萬 真知子