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どう備える?「空き家」のリスクと対策

人口減少や急速な高齢化を背景に、国内の空き家の数が増加しています。直近の調査(*)では、全国の空き家率は約14%となり、過去最高を記録しました。将来的に実家が空き家になる可能性のある方も多いでしょう。近年はベンチャー企業などによる新しい空き家の活用形態が続々と出てきていますが、一方で、腐朽や破損が生じるなど問題のある空き家が増えているのも事実。こうしたリスクにどう備えたらいいのか、空き家問題に詳しい税理士の平田久美子さんに話を聞きました。
*出所:総務省統計局「住宅・土地統計調査」2018年(5年ごと)

空き家の現状と空き家がもたらすデメリット

「管理されていない空き家」が急増している

図表1 空き家数及び空き家率の推移 全国
(1958~2018年)

空き家数及び空き家率の推移 全国(1958~2018年)

* 数値には沖縄県が含まれない

出所:総務省統計局「住宅・土地統計調査」2018年(5年ごと)

図表2 空き家の内訳

空き家の内訳

出所:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査 特別集計」よりソニー生命作成

倒壊や火事により所有者が責任を問われるリスク

空き家を取り壊すと固定資産税が6倍になる?

同じ「空き家所有者実態調査」によれば、空き家を所有するに至った理由として最も多いのが「相続」(54.6%)です。しかも、相続で取得した空き家の17.8%で、登記または名義変更が行われていませんでした。平田さんは自身が相談を扱った経験から、「過去に遡って未登記のため、当事者が多過ぎて登記ができないケースが多いのではないか」と推測します。他にも、相続で揉めたり、相続人に認知機能が低下している人がいたりするなどの理由から遺産分割協議がまとまらず、登記の手続ができないといったケースが考えられます。

図表3 住宅用地に対する固定資産税や都市計画税の
課税標準特例

住宅用地に対する固定資産税や都市計画税の課税標準特例

※一般住宅用地とは、小規模住宅用地以外の住宅用地を指す。例えば、300平方メートルの敷地に一戸建の住宅が建っている場合は、200平方メートルまでが小規模住宅用地、それを超える100平方メートルが一般住宅用地となる。

空き家をどうするか、現状で考えられる対策

「空き家対策特別措置法」で空き家の管理が義務化

「勧告」を受けると、先の固定資産税の特例が適用されなくなり、さらに勧告に従わないと「命令」が出され、これに違反すると50万円以下の罰金が科されます。「命令」後も状況が改善されなければ、自治体が所有者の代わりに家屋を解体するなどして所有者にその代金を請求する、「行政代執行」が行われる可能性があります。

図表4 「特定空き家等」に該当する条件

  • 倒壊等著しく、保安上危険となる恐れのある状態
  • 著しく衛生上有害となる恐れのある状態
  • 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

空き家のコストにはどんなものがある?

図表5 空き家の適切な管理のためにかかる費用

  • 固定資産税・都市計画税
  • 管理費・修繕積立金(マンションの場合)
  • 地代(借地の場合)
  • 水道光熱費
  • 定期的な管理に通うための往復交通費
  • 管理サービス会社の利用料
  • 火災保険料など
  • 除草・除雪等の費用
  • 町内会費

2023年末までの売却は、「空き家売却時の3,000万円の特別控除」が利用できる

図表6「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」が使える条件

被相続人(故人)の居住用財産となる条件

相続開始(死亡)の直前において、被相続人の居住の用に供されていた家屋

区分所有建築物を除く、1981年5月31日以前に建築された家屋

相続開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた者がいなかった家屋

相続開始の直前において、被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる建築物

譲渡の要件

2023年12月末までの間に行われる譲渡であること

相続開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にした譲渡であること

その譲渡の対価の額が1億円以下であること

売却先が第三者であること

家屋又は家屋と敷地を売却する場合

家屋は相続のときから譲渡のときまで居住の用・事業の用・貸付の用に供されておらず空き家であったこと

家屋は譲渡のときにおいて地震に対する安全基準等に適合していること

敷地のみを売却する場合(家屋は取壊し)

家屋は相続のときから取壊しのときまで居住の用、事業の用、貸付の用に供されておらず空き家であったこと

敷地は相続のときから譲渡のときまで居住の用、事業の用、貸付の用に供されておらず、建物取壊しのときから譲渡のときまで他の建物等の敷地の用に供されていないこと

※特例を使うには、上記の全てに当てはまる必要がある

2023年目途に国が不要な土地を引き取る制度が導入されるが……

なかには、「売却は難しそうだから、国や自治体に寄付できないだろうか」と考える方もいるかもしれません。しかし、現行法下では、国や自治体が空き家や不要な土地を引き取ってくれるという制度はありませんし、実際に寄付を受けるケースもほとんどありません。

土地については、2023年を目途に「相続等により取得した土地所有権の国庫の帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)」が施行され、相続等で取得したものに限り、所有権を放棄して国庫に帰属させることができるようになります。しかし、法務局による審査を経て、10年分の管理費相当額を納める必要があり、さらに

  • ①更地に限る
  • ②担保や賃借権が設定されていない
  • ③通路がなく他人が使用していない
  • ④汚染されていない
  • ⑤崖がない
  • ⑥境界が明らかになっている
  • ⑦権利関係で争いがない

など厳しい条件が課されており、平田さん は「実際に利用するのはハードルが高いのではないでしょうか」と見ています。

シェアハウスやカフェも! 広がる空き家活用ビジネス

“次善の策”としては、空き家を所有したまま、賃貸などで活用する方法が挙げられます。実はこの分野に関しては、ここ数年で様々な動きが出ています。

費用をかけたくないから建て替えずに賃貸したいという場合でも、一般的な貸家に加え、シェアハウス、民泊、介護施設、店舗・カフェなどの商業用施設、イベントスペースなど、立地にもよりますが、用途は大きく広がっています。管理が面倒だと感じる人向けには、空き家のサブリース(不動産会社などが一括借り上げし、入居者に賃貸する方式)の取り扱いも増えています。さらに、建て替えてアパートや貸家、店舗などとして賃貸することもできますし、商業地や住宅地の空き家なら更地にして駐車場や貸地にして賃貸収入を得ることもできます。

従来、空き家の活用に積極的だったのは、自治体や地域団体、NPO法人など限定的でしたが、今では大手企業やベンチャー企業なども空き家活用ビジネスに参入してきています。

一番有効な空き家対策は、「空き家を作らないこと」

とはいえ、空き家が増え続ける現状を見る限り、実際に空き家となった場合、売却したくても叶わないケースが多いのではないでしょうか。

そこで平田さんがすすめるのが、「空き家を作らないようにする」未然防止策です。具体的には、「自分が引き継ぐ可能性のある不動産について、現在の所有者である父母や祖父母と、住まなくなった後どうするのかを話し合うことが挙げられます」(平田さん)。その際は、父母や祖父母の意見を聞いた上で、自分たちの考えもしっかり伝えておく必要があります。

高齢の親族なら、自宅を売却した後に老人ホームに入居するという選択肢もあるでしょう。家が都市部にあれば、生前に自宅を担保にして金融機関から融資を受け、死後に自宅を売却して清算する「リバースモーゲージ」が利用できるかもしれません。家族間で「信託契約」を結んで、自宅の処分を受託者(信託財産の管理者)に任せることもできます。しかし、信託契約には費用がかかり、受託者となった人の負担も大きくなります。

「一番効果的だと考えられるのは、父母や祖父母に『遺言書』で自身が亡くなった後の不動産の扱いを指定してもらうことです」。遺言を使って、例えば、家族以外の第三者や、NPO法人などの団体に、不動産を遺贈することも可能です。

2018年の民法(相続法)改正では、自筆証書遺言の財産目録部分のパソコンによる作成が認められ、自筆証書遺言を法務局で保管する制度もスタートしています。「自筆証書遺言は思い付いたときに書け、修正や書き直しも比較的容易(*)ですから、うまく活用するといいでしょう。父母や祖父母が元気なうちに対策をしておくことが重要です」。普段親元から離れて暮らしている方であれば、帰省などの際に、話を持ち掛けてみるとよいでしょう。
*法務局の保管制度を利用した場合、遺言書を修正・変更した場合は一度撤回し、再度保管申請することになり、手数料が再度かかります。

掲載内容は2021年7月1日時点の情報に基づく
取材協力・監修/平田 久美子(税理士、CFP®)
取材・文/森田 聡子