ソニーフィナンシャルグループの金融市場調査部が最新のマクロ経済・為替相場の見通しについて解説します。
※執筆日(5/30)時点の情報となります。
執筆者
シニアエコノミスト 石川 久美子
(各要因の蓋然性を3段階で表示)
過去2ヶ月の為替推移
出所:Bloomberg、SFGI
3月から4月下旬にかけて、ドル円相場はほぼ一方的にドル高・円安が進行しました。米国のインフレ高進を受けて米国の利上げペース加速観測が広がる中でのドル高に加え、日銀の緩和的な金融政策が長期にわたって維持されるとの見方を背景とする円安により、ドル円相場は2002年4月以来の131円65銭のドル高・円安水準を付けました。ただし、5月に入ると、米国において、急速な利上げによって景気後退が早期に発生するのではとの不安が広がる中で、ドルはそれまでの上げ幅を縮小する展開となっています。
4月下旬にかけて、日本の金融緩和政策の長期化と、米国の利上げが速いペースのものになることを急速に織り込んで、市場では2カ月で15円以上もの大幅なドル高・円安が進みました。5月に入ってからのドル安・円高の進行は、米国の先行きの景気に対する不安が広がったことがきっかけでしたが、4月までのドル高・円安があまりに急激な動きであった反動という面も大きかったと考えられます。しかし当社では、今後米国が現時点で考え得る最も厳しい利上げを行ったとしても、政策金利が名目潜在成長率(3.8%)を超えることはなく、米景気は「減速すれど腰折れなし」となる可能性が高いと見ています。米国のインフレについては、足下ではピークアウトの兆しも見られており、一段の利上げペース加速とそれに伴う米景気腰折れを警戒するムードは、徐々に落ち着きが見られる公算です。そうなれば、ドル円相場でも徐々に、今後の日米の金利差拡大を見越したドル買い・円売りが優勢に転じる相場に戻っていくと考えられます。ただ、6月からは日本のインバウンド受け入れ本格化など円高要因もあり、今後のドル高・円安のペースに関しては、これまでに比べてゆっくりとしたものになりそうです。
執筆者
シニアエコノミスト 宮嶋 貴之
労働需要(求人数)は労働供給(失業者数)を大幅超過
注:シャドーは景気後退期間を表す。 出所:米国労働省、SFGI
今月のキーワード
米国・日本・ユーロ圏・中国の実質GDPや政策金利、ドル円・ユーロ円・ポンド円・豪ドル円の見通しをデータで表示しております。
経済・為替についてDaily Market Report(日次)、Weekly FX Market Focus(週次)など、より詳しいマーケット情報をご覧いただけます。(ソニーフィナンシャルグループのページへ遷移します)
尾河 眞樹(おがわ まき)
ソニーフィナンシャルグループ
執行役員 兼 金融市場調査部長
チーフアナリスト
ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン・チェース銀行などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析を担当。2016年8月より現職。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBCなどにレギュラー出演し、金融市場の解説を行っている。主な著書に『〈新版〉本当にわかる為替相場(2016年日本実業出版社)』、『ビジネスパーソンなら知っておきたい仮想通貨の本当のところ(2018年朝日新聞出版社)』などがある。ソニー銀行取締役、ウェルスナビ株式会社取締役。
菅野 雅明(かんの まさあき)
ソニーフィナンシャルグループ
金融市場調査部
シニアフェロー チーフエコノミスト
1974年日本銀行に入行後、秘書室兼政策委員会調査役、ロンドン事務所次長、調査統計局経済統計課長・同参事などを歴任。日本経済研究センター主任研究員を経て、1999年JPモルガン証券入社(チーフエコノミスト・経済調査部長・マネジングディレクター)。2017年5月より現職。総務省「統計審議会」委員ほか財務省・内閣府・厚生労働省などで専門委員などを歴任。日本経済新聞「十字路」「経済教室」など執筆多数。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBC[昼エクスプレス」コメンテーター。1974年東京大学経済学部卒、1979年シカゴ大学大学院経済学修士号取得。
渡辺 浩志(わたなべ ひろし)
ソニーフィナンシャルグループ
金融市場調査部
シニアエコノミスト
1999年に大和総研に入社し、経済調査部にてエコノミストとしてのキャリアをスタート。2006年~2008年は内閣府政策統括官室(経済財政分析・総括担当)へ出向し、『経済財政白書』等の執筆を行う。2011年からはSMBC日興証券金融経済調査部および株式調査部にて機関投資家向けの経済分析・情報発信に従事。2017年1月より現職。内外のマクロ経済についての調査・分析業務を担当。ロジカルかつデータの裏付けを重視した分析を行っている。
石川 久美子(いしかわ くみこ)
ソニーフィナンシャルグループ
金融市場調査部
シニアアナリスト
商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年5月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から研究員として、外国為替相場について調査・分析、レポートや書籍、ブログ、Twitterなどの執筆、セミナー講師、テレビやラジオなどのコメンテーターとして活動。2016年11月より現職。外国為替市場の調査・分析業務を担当。
宮嶋 貴之(みやじま たかゆき)
ソニーフィナンシャルグループ
金融市場調査部
シニアエコノミスト
2009年にみずほ総合研究所に入社。エコノミストとしてアジア・日本経済、不動産・五輪・観光等を担当。2011年~2013年は内閣府(経済財政分析担当)へ出向。官庁エコノミストとして『経済財政白書』、『月例経済報告』等を担当。2021年5月より現職。主な著書(全て共著)は『TPP-日台加盟の影響と展望』(国立台湾大学出版中心)、『キーワードで読み解く地方創生』(岩波書店)、『図解ASEANを読み解く』(東洋経済新報社)、『激震 原油安経済』(日経BP)。
森本 淳太郎(もりもと じゅんたろう)
ソニーフィナンシャルグループ
金融市場調査部
アナリスト
みずほフィナンシャルグループにて企画業務、法人営業などを経験した後、2019年8月より現職。外国為替市場の調査・分析業務、中でも主にユーロなどの欧州通貨に関するレポートを担当している。また、新型コロナウイルスの感染状況と金融市場の関連に特化したレポートを執筆するなど、幅広い観点から金融市場の分析を行っている。
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