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出産・育児

2022.09

育休が取得しやすくなる? 2022年改正の育児・介護休業法とは

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年々改正され、整備が進んでいる「育児・介護休業法」。2022年には、育児休業に関して4月、10月と段階的に改正が行われます。10月には「産後パパ育休」が創設予定であり、育児休業および産後パパ育休はそれぞれ2回に分割して取得可能となるなど、男性・女性にかかわらず、仕事と育児等の両立支援がますます充実します。「育児・介護休業法」の制度の内容や、今回の改正のポイントを、社会保険労務士の長友秀樹さんに聞きました。

2022年09月

「育児・介護休業法」とは

「育児・介護休業法」とは、そもそもどんな法律なのでしょうか? 長友さんに説明していただきました。

「育児・介護休業法は、正式には『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律』といいます。

育児休業については、お子さまが一定の年齢に達するまで、会社に籍を残しながら育児に専念するために仕事を休むための期間を取得することができる制度です。一定の年齢とは、原則としてお子さまが1歳になるまでですが、1歳の時点において待機児童等の関係により保育所が見つからない等の場合には、最長でお子さまが2歳になるまで延長することが可能です。育児休業には、次のようなメリットがあります」(長友さん)。

【育児休業のメリット】

  • 正社員が育児休業をとれば、元の正社員のまま職場復帰が可能となるなど、休業前の雇用形態を維持することができる。復帰の際に元のフルタイム勤務が難しい場合には、短時間勤務制度の利用もOK。保育園の送り迎えなどとの両立が図れるよう、柔軟に勤務時間を変更することもできる。
  • 雇用保険に加入している場合、休業中の給与補償制度として、ハローワークに申請すれば、休業開始後に最初の6か月は給与の約67%、その後は50%の額の育児休業給付金を受け取れる
  • 育児休業期間中は、社会保険料が免除される。また、社会保険料が免除されても、将来の厚生年金受給額には影響が出ない。

※休業中に支払われる金額によっては給付金が受け取れない場合があります。

「一方、介護休業は、2週間以上の期間にわたって、常時介護を必要とする状態にあるご家族を介護するための制度です。介護が必要となったご家族一人につき通算93日間取得可能で、3回まで分割することができます。

期間が育児休業より短いのは、育児休業ではお子さまの世話を自分自身ですることが前提になっているのに対して、介護休業は介護が必要となったご家族が介護サービスを利用する準備を整えるための期間とされているからです。介護休業には、次のようなメリットがあります」(長友さん)。

【介護休業のメリット】

  • 雇用保険に加入している場合、休業中の給与補償制度として、ハローワークに申請すれば、給与の約67%の額の介護休業給付金を受け取れる

※休業中に支払われる金額によっては給付金が受け取れない場合があります。

「もちろん、育児・介護休業ともに、家庭の事情によって仕事を辞めることなく、家庭と仕事を無理なく両立しやすくなるのが、最大のメリットといえるでしょう」(長友さん)。

ただし、課題がまったくないわけではありません。

「育児・介護休業においては、育児休業取得後の社員のキャリア形成が課題となっています。特に、女性の場合は通常は産休開始から1年以上、第2子が産まれた場合などは2年以上、職場から離れる可能性が高くなります。

育児休業取得者が仕事復帰後にできるだけ早く活躍するためにも、休業中の社員との職場の情報共有や、必要に応じた教育研修などを行うことが会社には求められます。

業種・職種によっては男性ばかりでなく、女性でも育児休業がとりにくい職場環境がまだまだ残されており、男性の育児休業に関しては、大企業であってもまだ広く浸透していないのが実情です。勤め先の企業規模や業種によって育児休業の利用のしやすさが異なる点は、早急に解決が望まれる問題といえます。その推進を目的として、2022年4月、国は大きな法改正を行いました。」(長友さん)。

また介護休業においても、介護が理由で離職をせざるを得ない状況を強いられるといった状況も見られ、仕事との両立が課題となっています。

「近年、高齢者人口の増加とともに、家族の介護に直面した人が仕事との両立を果たせずに仕事を辞めざるを得なくなる、いわゆる『介護離職』が年々増えており、約9万人※1いると言われています。介護者には、働き盛りの世代で、職責の重い仕事に就いている人も少なくありません。

そのため、仕事を辞めざるを得ない人と、会社の双方にとって痛手となっていることから、介護離職は大きな社会問題となっているのです。介護離職を防ぐためにも、介護休業を最大限活用できるよう、国だけでなく会社単位でも、制度を積極的に周知していく必要があるでしょう」(長友さん)。

※1 2013〜2017年は約9万人を推移し、2000年代の約2倍に増加(厚生労働省「雇用動向調査」より)。

育児・介護休業の取得状況は?

では、男性の育児休業の取得率は、一体どれぐらいなのでしょうか?

「厚生労働省の『令和2年度雇用均等基本調査』によれば、1996(平成8)年度の時点で男性の育児休業取得率は0.12%。当時は、育児休業を取得している男性は、全国的にみても非常にまれでした。それが、直近の2020(令和2)年度には12.65%まで上昇しています。もっとも、同じ2020(令和2)年度の女性の育児休業取得率は81.6%なので、はるかに低い水準です。

育児休業
取得率
=
出産者のうち、調査年の10月1日までに育児休業を開始した者
(開始予定の申出をしている者を含む。)の数
調査前年の9月30日までの1年間(※)の出産者
(男性の場合は配偶者が出産した者)の数

※2010年度以前調査においては、調査前年度1年間。

出典:厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」をもとにソニー生命作成

また、その期間についても、女性は9割近くが6か月以上取得しているのに比べて、男性は36.3%が5日未満、約8割が1か月未満しか取得していません」(長友さん)

出典:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」をもとにソニー生命作成

それでは、介護休業の取得率はどうでしょう? 育児休業よりも期間が短い分、取得しやすいのでしょうか。

「介護休業者の割合は、厚生労働省の『令和元年度雇用均等基本調査』によれば、2019(令和元)年度で男性が0.07%、女性は0.16%にすぎません。介護休業をとっている人は、育児休業をとっている人よりも圧倒的に少ないのです。おそらく、介護休業の制度があることを知らない人も相当数いるのではないでしょうか。育児休業に比べても一般的な認知度が低い点が、介護休業の取得率が低い一因だと考えられます」(長友さん)。

■介護休業者の割合
男女計 女性 男性
2017年度 0.11 0.15 0.08 (%)
2019年度 0.11 0.16 0.07

※「介護休業者」は、調査前年度1年間に介護休業を開始した者をいう。

出典:厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」をもとにソニー生命作成

仕事と育児の両立のために! 2022年の改正内容とその背景

2022年、育児・介護休業法は、育児休業に関して改正が行われ、より柔軟に育児休業を取得できる方向へとシフトしています。

「4月1日に改正されたポイントは、大きく2つあります。1つめは、『雇用環境整備、個別の周知・意向確認の方法の義務化』です。『育児休業を取得しやすい雇用環境整備』として、育児休業と産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主に以下のいずれか、できれば複数の方法を講じることを義務づけました。

  • ①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  • ②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置
  • ③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  • ④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

また、『妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の方法』としては、本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業者が育児休業制度等に関する以下の事項の周知、休業の取得意向の確認を個別に行うことも義務化しました。

周知事項
  • ①育児休業・産後パパ育休に関する制度
  • ②育児休業・産後パパ育休の申し出先
  • ③育児休業給付に関すること
  • ④労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
個別周知・
意向確認の方法
①面談 ②書面交付 ③FAX ④電子メール等 のいずれか

注:①はオンライン面談も可能。③④は労働者が希望した場合のみ。

※雇用環境整備、個別周知・意向確認とも、産後パパ育休については、2022年10月1日から対象。

2つめの改正ポイントは、『有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和』です。パートやアルバイトといった有期雇用の従業員※2は、これまでの『雇用期間が1年以上である』という要件が撤廃され、無期雇用労働者と同様の扱いとなりました。」(長友さん)。

※2 1年や6か月単位の有期労働契約を締結、または更新している労働者。一般に契約社員、パート、アルバイトなど。

そして、育児休業については、2022年、さらに改正が行われます。

「10月1日より、『出生時育児休業』、通称『産後パパ育休』が創設され、育児休業の分割取得が可能になります。産後パパ育休の内容、育児休業の分割取得に関する変更点は以下の通りです。

  現行 2022年10月1日から
  育児休業制度 育児休業制度 産後パパ育休
※育休とは別に取得可能
対象期間
取得可能日数
原則子供が1歳
(最長2歳)まで
継続 子供の出生後8週間以内
4週間まで取得可能
申出期限 原則1か月前まで 継続 原則休業の2週間前まで※1
分割取得 原則分割不可 分割して2回取得可能 分割して2回取得可能
休業中の就業 原則就業不可 継続 労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲※2で休業中に就業することが可能
1歳以降の延長 育休開始日は1歳、
1歳半の時点に限定
育休開始日を柔軟化 -
1歳以降の再取得 再取得不可 特別な事情がある場合
に限り再取得可能※3
-

※1 雇用環境の整備などについて、今回の改正で義務付けられる内容を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1か月前までとすることができます。

※2 具体的な手続きの流れは以下①~④のとおりです。
  • ①労働者が就業してもよい場合は、事業主にその条件を申し出
  • ②事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示(候補日等がない場合はその旨)
  • ③労働者が同意
  • ④事業主が通知

※3 1歳以降の育児休業が、他の子供についての産前・産後休業、産後パパ育休、介護休業または新たな育児休業の開始により育児休業が終了した場合で、産休等の対象だった子供等が死亡等したときは、再度育児休業を取得できます。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」をもとにソニー生命作成

前述のとおり、男性の育児休業取得率は、年々上昇しているとはいうものの、2020(令和2)年度で12.65%と、女性の81.6%とは大きな差があります。

そこで国は、出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みとなる産後パパ育休の創設をするなどして、男性の育児休業取得を促進し、少子高齢化が進むなかで出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できる社会の実現を目指しているのです」(長友さん)。

育児・介護問題に関する課題とうまく付き合うために

制度改正を中心に、育児・介護をめぐる環境の整備は進んでいますが、人によっては勤め先の会社に相談することができず、育児や介護に関しての悩みを抱えている人もいるでしょう。

「仕事と育児、介護等の両立で悩んでいるのなら、各都道府県の労働局内の『雇用環境・均等局』や『労働局雇用均等室』と呼ばれる部署を訪ねて、相談することができます。

また、就職や転職を検討する際に、仕事と育児、介護等の両立に取り組んでいる企業を探したいときには、厚生労働省が運営する情報サイト『両立支援のひろば』の検索機能や、子育て支援など一定の基準を満たした企業や法人などが掲げている厚生労働省認定の『くるみんマーク・プラチナくるみんマーク』などが役に立つでしょう。

女性であっても、長い期間育児休業をとりたい人もいれば、早期に職場復帰を果たしたい人もいます。育児・介護問題に関する課題とうまく付き合うためには、制度や相談窓口などを上手に利用しながら、それぞれの人の希望に応じて、仕事と育児、介護等を両立できる社会の醸成に努めていくことが大切です」(長友さん)。

監修者プロフィール

長友 秀樹 | Hideki Nagatomo

社会保険労務士。長友社会保険労務士事務所代表。MR、人事コンサルタント、医療業界を熟知した社会保険労務士の経験をいかし、病院・クリニックの規模に合わせた人事制度の構築、人事・労務問題をサポートしている。人事、労務関連のセミナーの講師としても活躍中。