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社会保障
2024.06
60歳で定年を迎えた後も、本人が希望すれば原則として同じ企業で働き続けることができるようになったことで、60歳以降も厚生年金保険に加入する人が多くなっています。そうした場合、年金についてはいつどんな手続きをすればよいのかまとめました。
2000年の法改正で、年金の支給開始年齢は60歳から原則65歳に引き上げられました。また、現在は約7割の企業は60歳定年ですが、ほとんどの企業で本人が希望すれば60歳以降も働き続けられる制度が設けられています※1。制度としては定年後も退職せずに継続して雇用される「勤務延長」、または一度退職して新たな条件のもとで雇用される「再雇用」が一般的です。
ただ、勤務延長、再雇用とも収入は定年前より減るケースが多く、例えば国税庁の調査※2では55〜59歳の平均給与は546万円なのに対し、60〜64歳の平均給与は441万円と約8割にダウンしています(男女計)。定年後の給与は、定年前より減る可能性があると考えておいた方がよさそうです。
こうした収入の減少を補うため、「定年前に比べて収入が75%未満に低下した」など所定の条件を満たす人には給付金が支給される「高年齢雇用継続給付」が設けられています。ただし、この制度は2025年4月から段階的に縮小され、その後は廃止も検討されています。
※1)厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」
※2)国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査」年齢階層別の平均給与
年金を受け取れるのは原則65歳からです。このため60歳で定年を迎えても、勤務延長や再雇用で1日の空白もなく継続雇用される場合は企業側が厚生年金保険への加入手続きを行い、本人は特に年金の手続きをする必要はありません。
企業に勤めて厚生年金保険に加入していた場合、受け取れる年金は老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされます。主な受給条件は以下の通りです。以前にあった公務員・私立学校教職員を対象にした共済年金は2015年から厚生年金保険に統合されました。
また、厚生年金保険加入者の配偶者が専業主婦(夫)の場合など、所定の条件を満たすと「第3号被保険者」となり、自分で年金保険料を負担していなくても、老齢基礎年金が受け取れます。また、厚生年金に加入したことがあれば老齢厚生年金が上乗せされますが、厚生年金の加入期間が短いと、年金額は少なくなります。また、加入者が退職や独立などで厚生年金保険から外れたときに、60歳未満の配偶者は自身で国民年金保険に加入する必要があります。自治体の年金関係の窓口で行う変更手続きを忘れないようにしましょう。
年金受給の権利は原則として65歳の誕生日前日に発生します。ただし、希望すれば受給開始時期は変更可能であり、60〜65歳までの間に年金を受け取り始める「繰上げ受給」(年金額は減額されます)、66〜75歳までの間に繰り下げる「繰下げ受給」(年金額は増額されます)が利用できます。また、65歳以降も厚生年金保険に加入しながら働く場合などは、給与収入との合計額により老齢厚生年金の一部または全部の支給が停止されます。
・年金を受け取るための手続き
[老齢基礎年金/老齢厚生年金]
年金を受け取るには自身で申請手続きを行う必要があり、申請しなければ受給が始まりません。
①年金を受け取る権利が発生する年の誕生月の約3ヵ月前に、日本年金機構や共済組合などから「年金請求書」が届く
②「年金請求書」に必要事項を記入して誕生日前日以降に提出する。提出先は、加入していた年金の種類により自分が住む地域を担当する年金事務所または自治体の年金関係の窓口(共済組合等の加入期間がある場合は各共済組合等に提出も可能)
※請求には戸籍の抄本(戸籍の一部事項証明書)や住民票などの添付書類が必要です。主な書類は以下の通りです。マイナンバーが登録済みなどの場合は一部の書類が省略できます。
・主な添付書類
年金手帳や基礎年金番号通知書、年金証書、年金加入期間確認通知書
戸籍の謄本(戸籍の全部事項証明書)または戸籍の抄本(戸籍の一部事項証明書)、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか
配偶者や子どもの所得を証明する書類
雇用保険受給資格者証あるいは雇用保険被保険者証(写し)
振込を希望する金融機関の預貯金通帳やキャッシュカード(コピー可)
[企業年金]
勤め先によっては、厚生年金保険以外に確定給付企業年金、確定拠出年金(企業型)、厚生年金基金(2014年に原則廃止)、中小企業退職金共済制度・特定退職金共済制度などの企業年金があり、受け取れる年金が上乗せされる場合があります。制度により手続きの窓口、年金額、受給開始期間などが異なるため、退職前に勤め先の企業に確認しておきましょう。
公的年金や企業年金は自分で手続きをしないと受給が始まりません。65歳になってスムーズに年金を受け取るために、勤め先の担当部署のほか、毎年誕生月に日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」、または同機構のウェブサイト「ねんきんネット」で、これまでの年金記録や支給開始のタイミングを確認して、年金受給の手続きなどを知っておきましょう。
監修者プロフィール
福一 由紀 | Yuki Fukuichi
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