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2024.09

年末調整の流れを再確認!受けられる控除・受けられない控除

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年収が2,000万円以下の給与所得者が、一年間の給与所得について年末に、払い過ぎた税金を戻してもらったり、少なければ追加で納めたりする手続きが「年末調整」です。必要な書類の提出を忘れると、戻ってくる「還付金」の額が減り、確定申告の手間が増えるケースも。年末調整の流れや必要書類、受けられる控除の種類など、大事なポイントを解説します。

掲載日:2023年10月
更新日:2024年09月

年末調整で仮払いした税金を精算

個人の所得には所得税がかかりますが、自分で所得税の額を計算して納税する機会が少ないのは、勤めている会社が代わりに納めてくれているからです。ただ、その納め方は「源泉徴収」といって概算で仮払いする方法のため、実際に納めるべき所得税の額と差が出ることも多くなります。

そこで年間の収入額や控除額が明らかになる年末に、本来納める所得税の額を会社が改めて計算し、従業員から源泉徴収していた額の方が多ければ差額を還付し、源泉徴収額の方が少なければ追加徴収する手続きが「年末調整」です。

基本的な年末調整の流れ

所得税はその年の1月1日から12月31日までの所得に対してかかるため、一般的には11月から翌年1月頃にかけて年末調整の手続きを行います。おおまかな計算方法と用意する書類の種類を把握しておきましょう。

①その年の1月1日から12月31日までの給与収入(年収)を確定する
給与収入とは会社が払った給与と賞与などの総額です。

②給与収入から給与所得控除額を引いて給与所得を確定する
給与所得控除の金額は、給与収入の金額に応じて法令で決められています。

③給与所得から所得控除額を引いて課税所得を確定する
所得控除の金額は人それぞれ変わります。算出するためには従業員からの書類提出が必要です。

・必要書類と受けられる控除
書類の名称 受けられる控除 所得税の控除額
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 扶養控除 38万円〜63万円
障害者控除 普通障害者27万円
特別障害者40万円
同居特別障害者75万円
勤労学生控除 27万円
寡婦控除 27万円
ひとり親控除 35万円
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 基礎控除 48万円
配偶者控除 13万円〜48万円
配偶者特別控除 1万円〜38万円
所得金額調整控除 上限25万円
給与所得者の保険料控除申告書 生命保険料控除 上限12万円
地震保険料控除 上限5万円
社会保険料控除 支払保険料の全額
小規模企業共済等掛金控除 支払掛金の全額

※住民税は、年末調整や確定申告の情報をもとに算出されます。収入があって年末調整や確定申告を行わない場合は、住民税の申告が必要です

④課税所得に対する税率をもとに納める所得税額を確定
課税所得に税率を掛けると所得税額が決まります。
課税される所得金額が大きくなるにつれて税率も高くなる累進税率となっています。

⑤住宅ローン控除を受けている人は所得税額から所定の金額を引く
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、1年目は本人が確定申告で申告しますが、2年目からは年末調整で行うことができます。

・必要書類と受けられる控除
書類の名称 受けられる控除 所得税の控除額
住宅借入金等特別控除申告書 住宅借入金等特別控除 上限35万円

※所得税の住宅借入金等特別税額控除を受けている方で、一定の要件を満たす方について、所得税における住宅借入金等特別控除可能額で、所得税において控除しきれなかった額が個人住民税所得割額から控除されます

納める所得税額が確定したら、その年の1月から12月までの源泉徴収額と比較し、過不足を精算します。12月または翌年1月の給与支給時に、個々の精算額に応じて還付または追加徴収されるのが一般的です。こうした手続きは会社が行うので、従業員は事前の書類提出以外は何もする必要はありません。

なお、2024年は特筆すべき事項として、2024年6月1日時点の在職者に対して定額減税が行われています。したがって、年末調整時点においても「行われた定額減税実務が正しかったのかどうか」を再チェックすることとなります。上記、住宅ローン控除も、住宅ローン控除後の税額から定額減税額を控除します。

年末調整のために準備しておく書類

年末調整のときに困るのは、前項の③で解説した「所得控除額を引いて課税所得を確定する」ために、会社に提出すべき控除証明書などが見当たらないケースです。こうした書類はその年の10月頃から郵送または電子データなどで届き始めます。分かりやすい場所にまとめて保管するなどして、年末調整の手続きをスムーズにしましょう。発行元によっては、マイナポータル連携により控除証明書をデータで取得することも可能です。

・年末調整で必要になる主な書類
控除の対象 証明書等の形式 発行元
一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料 ハガキや電子発行データ 保険会社や農協、共済等
地震保険料 ハガキや電子発行データ 保険会社や農協、共済等
確定拠出年金などの掛金
※個人型(iDeCo)、企業型DCの一部が対象
主に郵送書類 金融機関
国民年金、国民年金基金などの掛金
※年途中で個人事業主から会社に転職した、親族の国民年金を払ったなどのケース
ハガキや電子発行データ 日本年金機構
配偶者控除または配偶者特別控除 配偶者の源泉徴収票 配偶者の勤務先

・ソニー生命の保険料控除に関するお知らせ
⇒保険料控除証明書発送スケジュール
⇒保険料控除証明書再発行について
⇒生命保険料控除申告サポートツール
⇒控除証明書のマイナポータル連携について

このほか、年の途中で転職した人の場合は、以前の勤め先から受け取った源泉徴収票が必要です。退職後に郵送などで送られてくるケースが多いようですので、確認しておきましょう。

また、前項の⑤で解説した住宅ローン控除(2年目以降)を受けるには、住宅借入金等特別控除申告書、住宅借入金等特別控除証明書、借入金の年末残高等証明書といった書類を提出する必要があります。これも準備しておきましょう。

年末調整で受けられない控除

「基本的な年末調整の流れ」の章で、年末調整で受けられる控除について必要書類とともにご紹介しましたが、次の控除は年末調整で適用することができません。これらの控除を受ける場合は、自分自身で確定申告をする必要があります。

・年末調整で受けられない控除
雑損控除 災害、盗難、横領によって資産に損害を受けた場合に、一定の金額の所得控除を受けることができる。
医療費控除 その年の1月1日から12月31日までの間に自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために世帯で10万円(総所得金額200万円以上の場合)を超える医療費を支払った場合に、所得控除を受けることができる。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例) 健康の保持増進及び疾病の予防として一定の取組を行っている方が、その年中に自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために対象医薬品を購入した場合に、12,000円を超えた金額が88,000円を限度として所得控除を受けることができる。
ただし、この控除を受ける場合には、上記の通常の医療費控除とどちらか一方の選択性となる。
寄附金控除 納税者が国、地方自治体、特定公益増進法人などに対して、特定の寄付をした場合に、所得控除を受けることができる。
ふるさと納税もこれに該当する。

まとめ

会社が所得税を納めてくれる源泉徴収の制度は、従業員にとっても便利な仕組みですが、概算で仮払いする方法のためどうしても誤差が生じます。その過不足を精算するのが年末調整で、税額の算出や過不足分の還付・徴収も会社が行ってくれます。

控除額の計算のために必要な書類が届いたら、決まった場所に保管するなどして備えておきましょう。また、年末調整による過不足分が精算されるのは、その年の12月か翌年の1月ですから、そのときは給与明細で金額を確認しましょう。

本記事は、2024年7月時点で施行されている法律に基づいて執筆しています。

監修者プロフィール

田中 卓也 | Takuya Tanaka

税理士。CFP®。事業計画の作成・サポートを中心に、経営相談、キャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・事業承継対策など、さまざまな業務に携わる。各種セミナーでの講演活動や講師、執筆活動も多数。

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