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老後資金

2025.03

「老後2,000万円問題」その後どうなった?最新データでみる現実と考慮すべきポイント

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一時は大きな話題となった「老後2,000万円問題」。本当にそれだけ貯蓄がないと生活が難しくなるのでしょうか?働き方の違う3つのモデルケースから検討してみましょう。

発端はなんだったのか?「老後2,000万円が必要」の根拠

2019年に金融庁が出した報告書『高齢社会における資産形成・管理』で、「老後の30年間で2,000万円の貯蓄を取り崩す必要がある」と書かれたのが「老後2,000万円問題」の発端。その根拠になったのは、「高齢夫婦無職世帯の家計収支で毎月約5万5,000円が不足している」*1というデータでした。

1カ月の不足分(2017年) 5万4,519円×12カ月×30年=1,962万6,840円(約2,000万円)

注1 高齢夫婦無職世帯とは、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯である。
注2 図中の「社会保障給付」及び「その他」の割合(%)は、実収入に占める割合である。
注3 図中の「食料」から「その他の消費支出」までの割合(%)は、消費支出に占める割合である。

出典:総務省「家計調査報告【家計収支編】2017年」 高齢夫婦無職世帯の家計収支-2017年-よりソニー生命作成

*1 総務省「家計調査報告【家計収支編】2017年」 高齢夫婦無職世帯の家計収支-2017年-

しかし、総務省の家計調査は毎年行われています。例えば、現時点で最も新しい2023年の調査結果では、1カ月の不足分は約3万8,000円*2で、「2,000万円問題」で使用された約5万5,000円から1万7,000円も減少。当然、老後30年で必要な金額も約1,400万円と減っています。

1カ月の不足分(2023年) 3万7,916円×12カ月×30年=1,364万9,760円(約1,400万円)

注1 図中の「社会保障給付」及び「その他」の割合(%)は、実収入に占める割合である。
注2 図中の「食料」から「その他の消費支出」までの割合(%)は、消費支出に占める割合である。
注3 図中の「消費支出」のうち、他の世帯への贈答品やサービスの支出は、「その他の消費支出」の「うち交際費」に含まれている。
注4 図中の「不足分」とは、「実収入」と、「消費支出」及び「非消費支出」の計との差額である。

出典:総務省「家計調査報告【家計収支編】2023年(令和5年)」 高齢夫婦無職世帯の家計収支-2023年-よりソニー生命作成

*2 総務省「家計調査報告【家計収支編】2023年(令和5年)」 高齢夫婦無職世帯の家計収支-2023年-

収入と支出のバランスにより毎年異なる家計収支

実は家計収支の不足分が異なるのは2017年と2023年に限ったことではありません。2016年から2023年までの家計収支と、それに基づく老後に必要となる貯蓄額を見ると、年ごとに金額が異なるのが分かります。

家計収支から試算した「老後に必要な貯蓄額」(2016年〜2023年)
調査年 実収入 うち社会保障給付 総支出 家計収支 必要な貯蓄額
2016年 21万2,835円 19万3,051円 26万7,564円 −5万4,711円 1,969万5,960円
2017年 20万9,198円 19万1,880円 26万3,717円 −5万4,519円 1,962万6,840円
2018年 22万2,834円 20万3,824円 26万4,707円 −4万1,872円 1,507万3,920円
2019年 23万7,659円 21万6,910円 27万0,929円 −3万3,269円 1,197万6,840円
2020年 25万6,660円 21万9,976円 25万5,550円 1,111円 0円
2021年 23万6,576円 21万6,519円 25万5,100円 −1万8,525円 666万9,000円
2022年 24万6,237円 22万0,418円 26万8,504円 −2万2,270円 801万7,200円
2023年 24万4,580円 21万8,441円 28万2,497円 −3万7,916円 1,364万9,760円

出典:総務省「家計調査報告【家計収支編】2016年(平成28年)〜2023年(令和5年)」よりソニー生命作成

2023年を除き、全体的に社会保障給付や実収入が次第に増える一方、総支出はあまり変わらず、1カ月の不足分も必要な貯蓄額も「老後に2,000万円が必要」の根拠になった2017年より減る傾向にあります。

注目したいのは、2020年はコロナ禍による定額給付金などで実収入が急に増えた一方、交際費などの支出が減り、1カ月の収支が1,111円の黒字になった点。また、2021年は前年に比べて実収入は減ったものの、支出も減って必要な貯蓄額は600万円台となっています。

また、2023年の実収入は前年とさほど変わりませんが、食料費や光熱・水道費などの支出が増え、必要な貯蓄額がコロナ禍前の2019年を上回っていること。インフレが続くと家計収支の不足分も必要な貯蓄額もさらに増える可能性があります。

働き方によって受け取る年金はこんなに違う!3つのモデルケース

一般的に高齢世帯の収入の多くは社会保障給付のため、その金額の多寡が収支に大きく影響するといえるでしょう。以下のモデルケースで1カ月分の社会保障給付の目安と収支、必要な貯蓄額を紹介します。

①夫:会社員(年収550万円)
妻:会社員(年収 250万円)*3の場合

②夫:会社員(年収550万円)
妻:専業主婦 の場合*5

③夫:自営業(年収550万円)
妻:自営業(年収 250万円)の場合*6

*3 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)が、夫45.8万円、妻20.8万円で、ともに40 年間就業した場合に受け取り始める年金(2人分の老齢厚生年金と老齢基礎年金(満額))
*4 総務省「家計調査報告【家計収支編】2023年(令和5年)」 の高齢夫婦無職世帯の家計収支が、実収入24万4,580円、消費支出25万959円、非消費支出(社会保険料、税金)3万1,538円であることから、消費支出を25万1,000円、社会保険、税金負担を収入の13%負担として計算
*5 夫が平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算))45.8万円で40 年間就業し、妻がその期間専業主婦だった場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金)と夫婦の老齢基礎年金(満額)
*6 夫婦ともに40年間国民年金保険料を納付した場合

このように、現役時代の働き方によって老後に必要なお金は大きく変わってきます。自営業の場合は厚生年金がない分、会社員の場合よりも貯蓄が必要となります。

上記の支出には含まれていないものでは、老後の医療費や介護費、老人ホーム入居の費用が追加で必要になるかもしれません。

「たまには旅行に行きたい」「リフォームで数百万円かかる」など、まとまった金額の出費もあるでしょう。

また、お住まいの地域によっては全国平均より物価が高く、支出がふくらむ可能性も考えられます。そうしたことを考慮すると、上述のモデルケースよりも貯蓄に余裕がないと実際は難しいかもしれません。

まとめ

実収入と総支出の増減により、老後に必要な貯蓄額は変わってきます。必ずしも「2,000万円が必要」とは限りませんが、将来受け取れる年金額や老後の生活費など未確定のことも多く、ある程度の貯蓄はあった方が安心できるでしょう。

自身でこれからのライフプランを考えるのはもちろん、そのライフプランなら貯蓄額はいくら必要かをソニー生命の担当者に相談してみるのもよいでしょう。計画的に資産形成を進めて、将来の不安を軽減しましょう。

監修者プロフィール

福一 由紀 | Yuki Fukuichi

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