LIFEPLANNER WEB へ お客さまWEB へ

ライフプランを豊かにする様々なコンテンツをお届け

マーケット情報

2025.10

かんたんにわかる 月刊 経済・為替ダイジェスト10月号

  • #マーケット情報
  • #経済
  • #為替

ソニーフィナンシャルグループ株式会社の金融市場調査部が最新のマクロ経済・為替相場の見通しについて解説します。

※執筆日(9/29)時点の情報となります。

マクロ経済見通し

執筆者シニアエコノミスト 宮嶋 貴之

宮嶋 貴之

ラブブ現象は中国消費復活の狼煙か、それとも停滞の兆しか

中国で人気が急上昇しているキャラクター「ラブブ」。若者たちの熱狂は、中国経済の消費回復を示すきざしなのでしょうか。それとも、依然として続く停滞を覆い隠す仮の姿にすぎないのでしょうか。

ラブブ人気は若者消費の象徴だが、中国経済回復の裏付けとは言えず

中国発のキャラクター「ラブブ」が、いま若者を中心に熱狂的な人気を集めています。ウサギのような長い耳とギザギザの歯を持つ不思議な存在は、香港出身アーティストのカシン・ルンが手掛けた「THE MONSTERS」シリーズの一部として誕生しました。販売を担う中国のアートトイ大手ポップマートは、このブームを背景に株価が一時急伸しました。SNSを通じて人気が広がり、K-POPアーティストの紹介も注目を集めるきっかけとなりました。現在では海外市場への進出も加速し、日本・原宿などでも品薄状態が続くと報じられています。中国のアートトイ市場全体も拡大傾向にあり、数兆円規模に成長する可能性が指摘されるなか、ラブブ現象を中国消費回復の兆候との見方もあるほどです。

しかし、この盛り上がりをそのまま経済全体の回復と結びつけるのは早計だとする意見もあります。統計では中国の消費者心理は依然として低迷しています。若年層の間では、むしろコストパフォーマンスを重視する「理性的消費」が広がり、高額品を避ける傾向が強まっていると報じられています。さらに住宅価格の高止まりや雇用不安といった構造的問題も引き続き消費を抑制しています。北京や上海など大都市では住宅価格が所得の20倍を超えることも珍しくなく、住宅取得は若者にとって大きな負担とみられます。大学卒業者の就職環境も厳しい状況です(キーワード)。安定的な所得を得にくい状況は、持続的な消費を支える基盤は十分ではないと言えます。

こうしたラブブ人気を説明する概念として「口紅効果」が挙げられます。景気が低迷する局面では高額消費を控える一方、手頃な贅沢品に需要が集まる傾向があるという経済理論です。ラブブはその象徴で、将来に不安を抱える若者が安価なキャラクターグッズを通じて満足を得ていると推察されます。

ラブブ現象は新しい消費スタイルを示す象徴的な存在ですが、その華やかさの裏には、依然として中国経済の停滞を覆い隠す現実が横たわっています。持続的な消費回復の原動力となるのは困難であり、中国経済の復調には住宅や雇用といった根本的な課題改善が不可欠と考えられます。

■中国の若年層失業率

中国の若年層失業率

出所:中国国家統計局、Macrobond

今月のキーワード

中国の若年失業率

中国の若年失業率は全体の失業率を大きく上回り、大学卒業者の就職環境は依然として厳しい状況が続いています。近年は高等教育を受ける人口が急増し、大卒人材が過剰気味となっている一方で、テクノロジー産業は政府規制や米中摩擦の影響で採用拡大に慎重になっているとみられます。求人が多い製造業やサービス業は待遇やキャリアの面で若者の希望と合致せず、雇用のミスマッチが拡大しています。若年失業率の高さは、若者が安定した職を得にくいという構造的課題を浮き彫りにしており、今後の中国経済における持続的な消費や社会の安定を妨げる要因となることが懸念されます。

為替相場見通し

執筆者シニアアナリスト 石川 久美子

石川 久美子
ドル高・円安要因
  • ★★★ 米国経済の底堅さと粘着的なインフレ
  • ★★★ 日銀の利上げ時期後退観測
  • ★★☆ 日本の政局による日銀の利上げに対する逆風
  • ★★☆ 米中の貿易交渉合意によるリスク許容度回復
ドル安・円高要因
  • ★★★ 米国の雇用急減速に対する懸念拡大
  • ★★☆ 米大統領寄りのFRB理事就任懸念の拡大
  • ★★☆ 日銀の利上げの早期化観測
  • ★☆☆ 米国の財政赤字拡大への警戒感

(各要因の蓋然性を3段階で表示)

■過去2ヶ月の為替推移

過去2ヶ月の為替推移

出所:Bloomberg、SFGI

米国の利下げと日本の利上げ

米国の相互関税についての交渉は、7月下旬に日本やユーロ圏と合意に至ったことで、市場の不安が後退。そうした中で、ドル円相場を動かす主要な要因が米国の利下げや日本の利上げについての思惑にシフトしました。8月初めに発表された米7月雇用統計が弱い結果であったことを受け、米国の9月利下げを睨んでドルが急落した後、ドル円相場は横ばい圏での推移となりました。9月16-17日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場予想通りの0.25%ptの利下げが発表されるとともに、参加する米連邦準備理事会(FRB)理事と米連銀総裁の見通しを集計したドットチャートの中央値が下方修正され、さらに年内に合計二回分(0.50%pt)もの利下げが示唆されました。これにより、ドル円は145円台半ばまで一時ドル安・円高が進行。ただしパウエルFRB議長が利下げに慎重な姿勢を示したことでドルは反発する流れとなりました。

ドットチャートでは、年内で残り二回のFOMCにおいて、2回の利下げが示唆されています。しかし、詳細にFOMCメンバーの見通しをみていくと、年内はこれ以上の利下げを行わないと見ているメンバーと、2回分以上の利下げを予想するメンバーで割れており、2回の利下げ見通しの確度が高いとは言えません。今後の経済データ次第で、年内据え置き・1回利下げ・2回利下げ、どれも起こり得るという不透明感の強い状態です。また、日銀の利上げ時期についても、データ次第との見方が強く、市場では「早ければ10月、遅ければ来年3月」という幅広の見通しとなっています。そのため、当面は日米の経済データを眺めつつ「織り込みの程度」を調整する展開が予想されます。ドル円相場としては大きな方向感は出にくい状態が続きそうです。

ソニーフィナンシャルグループ
アナリストの紹介

尾河 眞樹(おがわ まき)

尾河 眞樹|おがわ まき

ソニーフィナンシャルグループ
執行役員(金融市場調査部担当)
チーフアナリスト

ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン・チェース銀行などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析を担当。2016年8月より当社執行役員。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBCなどにレギュラー出演し、金融市場の解説を行っている。主な著書に『為替ってこんなに面白い!(2024年幻冬舎新書)』、『〈最新版〉本当にわかる為替相場(2023年日本実業出版社)』などがある。ソニー銀行株式会社取締役、ウェルスナビ株式会社顧問。人生投資アカデミー® 学長。

菅野 雅明(かんの まさあき)

菅野 雅明|かんの まさあき

ソニーフィナンシャルグループ
金融市場調査部
シニアフェロー エグゼクティブエコノミスト

1974年日本銀行に入行後、秘書室兼政策委員会調査役、ロンドン事務所次長、調査統計局経済統計課長・同参事などを歴任。日本経済研究センター主任研究員を経て、1999年JPモルガン証券入社(チーフエコノミスト・経済調査部長・マネジングディレクター)。2017年4月より現職。総務省「統計審議会」委員ほか財務省・内閣府・厚生労働省などで専門委員などを歴任。日本経済新聞「十字路」「経済教室」など執筆多数。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBC「昼エクスプレス」コメンテーター。1974年東京大学経済学部卒、1979年シカゴ大学大学院経済学修士号取得。

渡辺 浩志(わたなべ ひろし)

渡辺 浩志|わたなべ ひろし

ソニーフィナンシャルグループ
金融市場調査部長
チーフエコノミスト

1999年に大和総研に入社し、経済調査部にてエコノミストとしてのキャリアをスタート。2006年~2008年は内閣府政策統括官室(経済財政分析・総括担当)へ出向し、『経済財政白書』等の執筆を行う。2011年からはSMBC日興証券金融経済調査部および株式調査部にて機関投資家向けの経済分析・情報発信に従事。2017年1月より当社。内外のマクロ経済についての調査・分析業務を担当。ロジカルかつデータの裏付けを重視した分析を行っている。

石川 久美子(いしかわ くみこ)

石川 久美子|いしかわ くみこ

ソニーフィナンシャルグループ
金融市場調査部
シニアアナリスト

商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から同社研究員として、外国為替相場について調査・分析を行う。2016年11月より現職。外国為替市場に関するレポート執筆の他、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」など多数のメディアに出演し、金融市場の解説を行う。資源国・新興国通貨に強い。著書に『円安はいつまで続くのか 為替で世界を読む(2025年マイナビ新書)』がある。Xでの情報発信(@KumiIshikawa_FX)も行っている。

宮嶋 貴之(みやじま たかゆき)

宮嶋 貴之|みやじま たかゆき

ソニーフィナンシャルグループ
金融市場調査部
シニアエコノミスト

2009年にみずほ総合研究所(当時)入社以来、一貫してエコノミストとしてマクロ経済調査を担当。2011年~2013年は内閣府(経済財政分析担当)へ出向。官庁エコノミストとして『経済財政白書』、『月例経済報告』等を担当。2021年4月より現職。2025年から景気循環学会・理事。主な著書(全て共著)は、『TPP-日台加盟の影響と展望』(国立台湾大学出版中心)、『激震 原油安経済』(日経BP)。日本経済・債券市場、中国などのアジア情勢が専門、セクターは不動産、観光、半導体等を分析。

森本 淳太郎(もりもと じゅんたろう)

森本 淳太郎|もりもと じゅんたろう

ソニーフィナンシャルグループ
金融市場調査部
シニアアナリスト

みずほフィナンシャルグループにて企画業務、法人営業などを経験した後、2019年8月より現職。外国為替市場の調査・分析業務、特にユーロやポンド、スイスフランなどの欧州通貨を専門に担当。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、TOKYO MX 「Stock Voice 東京マーケットワイド」、日経CNBC「朝エクスプレス」「GINZA CROSSING Talkマーケットニュース」などにレギュラー出演し、金融市場の解説を行っている。2013年東京大学経済学部卒。

本レポートについてのご注意

  • 本レポートは、ソニーフィナンシャルグループ株式会社(以下「当社」といいます)が経済情勢、市況などの投資環境に関する情報をお伝えすることを目的としてお客様にご提供するものであり、金融商品取引法に基づく開示資料ではなく、特定の金融商品の推奨や売買申し込み、投資の勧誘等を目的としたものでもありません。
  • 本レポートに掲載された内容は、本レポートの発行時点における投資環境やこれに関する当社の見解や予測を紹介するものであり、その内容は変更又は修正されることがありますが、当社はかかる変更等を行い又はその変更等の内容を報告する義務を負わないものといたします。本レポートに記載された情報は、公的に入手可能な情報ですが、当社がその正確性・信頼性・完全性・妥当性等を保証するものではありません。本レポート中のグラフ、数値等は将来の予測値を含むものであり、実際と異なる場合があります。
  • 本レポート中のいかなる内容も、将来の投資環境の変動等を保証するものではなく、かつ、将来の運用成果等を約束するものでもありません。かかる投資環境や相場の変動は、お客様に損失を与える可能性もございます。
  • 当社は、当社の子会社及び関連会社(以下、「グループ会社」といいます)に対しても本レポートに記載される内容を開示又は提供しており、かかるグループ会社が本レポートの内容を参考に投資決定を行う可能性もあれば、逆に、グループ会社が本レポートの内容と整合しないあるいは矛盾する投資決定を行う場合もあります。本レポートは、特定のお客様の財務状況、需要、投資目的を考慮して作成されているものではありません。また、本レポートはお客様に対して税務・会計・法令・投資上のアドバイスを提供する目的で作成されたものではありません。投資の選択や投資時期の決定は必ずお客様ご自身の判断と責任でなされますようお願いいたします。
  • 当社及びグループ会社は、お客様が本レポートを利用したこと又は本レポートに依拠したこと(お客様が第三者に利用させたこと及び依拠させたことを含みます)による結果のいかなるもの(直接的な損害のみならず、間接損害、特別損害、付随的損害及び懲罰的損害、逸失利益、機会損失、代替商品又は代替サービスの調達価格、のれん又は評判に対する損失、その他の無形の損失などを含みますが、これらに限られないものとします)についても一切責任を負わないと共に、本レポートを直接・間接的に受領するいかなる投資家その他の第三者に対しても法的責任を負うものではありません。
  • 本レポートに含まれる情報は、本レポートの提供を受けられたお客様限りで日本国内においてご使用ください。
  • 本レポートに関する著作権及び内容に関する一切の権利は、当社又は当社に対して使用を許諾した原権利者に帰属します。当社の事前の了承なく複製又は転送等を行わないようお願いします。
  • 本レポートに関するお問い合わせは、お客様に本レポートを提供した当社グループ会社の担当までお願いいたします。

おすすめ記事

2025年の年末調整は還付額が多くなる?令和7年度税制改正の3つポイント

健康管理

もしかして「スマホ首」?セルフチェックと日常生活で意識すべきこと

住宅

キャンプで学ぶ!いざという時に役立つ防災知識