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ニッポンの残暑を乗り切れ!インドの知恵に学ぶスパイス活用術

「暑いときこそスパイシーな料理!」とはよく聞きますが、夏バテ対策になぜスパイスがいいのでしょうか。スパイスの本場インドでは、暑さ対策にもスパイスが大活躍しているそうです。どんなスパイスがいいのか、どう使えばいいのか、インド料理に詳しい香取薫さんに、日本でも手に入れやすいスパイスの中から、おすすめの6つとそれぞれの効果や使い方を教えていただきました。

教えてくれた人

香取薫(かとり・かおる)さん
インド・スパイス料理研究家

1985年にボランティアで訪れたインドでスパイス料理に魅せられ、インド各地の主婦から本場の家庭料理を学ぶ。92年に料理教室「キッチンスタジオペイズリー」を開設。日本の気候や日本人の味覚に合う健康的なスパイス使いを紹介している。日本アーユルヴェーダ学会評議員、日本香辛料研究会会員。最新著書は『家庭で作れる南インドのカレーとスパイス料理』(河出書房新社)。『5つのスパイスだけで作れる! はじめてのインド家庭料理』(講談社)、『アーユルヴェーダ食事法 理論とレシピ』(共著、径書房)など著書多数。

なぜ「夏バテ対策にスパイスフーズ」なのか?

スパイスは、料理に辛みや香り、色をつけるために使われます。「上手に使えば料理がおいしくなり、塩分も抑えられます。さらに食欲を刺激したり、胃腸の調子を整えたり、体を冷やしたり温めたりする働きも期待できるんですよ」(香取さん)

辛いものを食べることで涼しくなる

インドやタイなど、暑い国の料理には唐辛子がたっぷり入っています。「唐辛子を食べると体がポカポカしますよね。さらに食べると汗がふき出し、汗が蒸発するときの気化熱で涼しくなります。熱帯に暮らす人はこの仕組みを上手に使っています」(香取さん)。ただし、大量の唐辛子使いに体が慣れていない日本人がまねると、胃腸の粘膜を荒らす恐れも。「我慢して激辛料理を食べるのは禁物。辛みは後をひくギリギリの量にとどめるのが、健康で効果的な食べ方です」(香取さん)

夏においしいと感じる「辛さ」を選ぶ

唐辛子というと赤い実をイメージしますが、暑い国では青唐辛子もよく辛みづけに使われます。インドではカレー料理に青唐辛子が丸ごと添えられていて、カレーを食べつつ、青唐辛子を丸かじりしているそう。「冬においしいと思う辛さと夏においしいと思う辛さとは、量も質も違います」(香取さん)。熟して乾燥させた赤唐辛子は、辛さの中に甘みを感じます。一方、熟す前の青唐辛子は青臭くて辛みもシャープ。夏場には青唐辛子の辛さがよく合います。

量と使い方の基本を知ることが肝心

「スパイスには薬効がありますが、だからといって同じものを毎日大量に摂れば、体に負担がかかります。インドの人が料理に使うスパイスの量は、1鍋につき小さじ1〜3杯程度。量は控えめに!」(香取さん)。また、量や使うタイミングを間違えると、せっかく作った料理の味を台無しにしてしまうこともあります。例えば、カレー粉に色をつけるターメリック。料理の最初に火を通して使うと旨みになりますが、加熱しないで加えるとえぐみが出てしまいます。

次の章では夏におすすめのスパイスを紹介します。それぞれの特徴を知って、おいしく使いましょう。

香取さんに聞いた「夏バテ対策におすすめの6つのスパイス」

インドで使われているスパイスの中から、日本でも手に入りやすく、夏バテ気味の体におすすめの6つを香取さんに選んでいただきました。熱中症が心配なときや胃腸が弱っているときに、ぜひ活用してください。

カルダモン

疲れた現代人にイチオシのスパイス

ショウガ科の植物で和名は「ショウズク」。果実は1〜2cmの楕円形で、中に入ったゴマ粒大の黒い種を利用します。種にはスーッとした強い香りがあり、香り成分が多いことから「香りの王様」「スパイスの女王」と呼ばれます。

効果

脳内血流を上げる、脂肪燃焼、口臭予防などのほか、気持ちをリラックスさせる効果も。特に柑橘系の飲み物や果物と一緒に摂るとリラックス効果が高まります。

使い方

突起がない側に爪を入れ、バナナの皮を剥くように縦にさいて種を取り出します。食後や気分転換したいときに噛むのもおすすめ。麺棒などでつぶして粉にしてからお菓子や飲み物に加えても。

カルダモンソーダ 簡単スパイスドリンク

材料(二人分)

カルダモン…1個、サイダー…コップ2杯分、
レモン汁…小さじ2、ピンク岩塩…2つまみ

作り方
  1. カルダモンの種を取り出し、麺棒などでつぶす。
  2. グラスにサイダー、レモン汁、岩塩を入れ、カルダモンの粉を加えてかき混ぜる。
  1. カルダモンの種を取り出し、麺棒などでつぶす。
  2. グラスにサイダー、レモン汁、岩塩を入れ、カルダモンの粉を加えてかき混ぜる。

ソーダの甘さと岩塩の塩気がポイント。汗をかいた体に栄養を補給するのはもちろん、体の余剰な熱を取る作用もあります

クミン

食べ過ぎ飲み過ぎで弱った胃腸をサポート

セリ科の植物の細長い種子で、漢方の生薬名は「バキン」。インド料理の香りのベースです。「スタータースパイス」といわれ、料理の最初に油でシード(種)を炒めて香りや有効成分を抽出して使います。

効果

胃と腎臓を守るスパイス。シードを黒く炒って水を注いだクミンティーは、重い食事の前や下痢をしたときに飲まれます。腸内のガスを抜く働きがあるので、膨満感の解消にも。

使い方

スタータースパイスとして利用するほか、加熱しない料理や飲み物に加える場合は、炒ってから粉にしたクミンパウダーを使います。

コリアンダー

体の熱を冷まし、熱中症の予防に役立つ

セリ科の一年草で和名は「コエンドロ」。丸いシードをスパイスとして使います。生の葉は「香菜」や「パクチー」の名前でおなじみです。葉と種では芳香成分が異なり、完熟した種は甘い香りがします。

効果

胃腸や肺の調子を整える作用があります。体の熱を冷ます作用があるため、熱中症の予防や更年期のほてりを鎮めるためにも使われます。

使い方

カレーのとろみづけや料理の香りづけには、コリアンダーのパウダー(市販品が便利)を使います。粒のまま水に浸して水出しすると、体内の熱を外に出してくれる夏向けのドリンクになります。

コリアンダー水 簡単スパイスドリンク

材料(作りやすい分量)

水…200ml、コリアンダーシード…小さじ1〜1.5

作り方
  1. 容器に水とコリアンダーシードを入れ、冷蔵庫で一晩かけて水出しする。
  2. 水が薄く色づいたら、種をこして出来上がり。
  1. 容器に水とコリアンダーシードを入れ、冷蔵庫で一晩かけて水出しする。
  2. 水が薄く色づいたら、種をこして出来上がり。

夏場は水が傷みやすいので、作るときは冷蔵庫に入れたほうが安心。ただし、冷水は胃腸を冷やし過ぎてしまうため、飲むときは常温に戻しましょう

フェンネル

夏に弱りがちな消化力を高める

セリ科の植物の種子で、漢方では「ウイキョウ」と呼ばれます。欧米では生の葉を魚料理の香りづけに使います。種は小粒で細長く、甘い香りがあります。

効果

消化促進や食欲増進の働きがあります。「インドでは食後にフェンネルシードと氷砂糖を一緒に食べる習慣があります」(香取さん)

使い方

砂糖と一緒に摂ると食べやすいので、軽くローストしたフェンネルシードとざらめ砂糖(白)とを混ぜてストックしておくと便利。食事のあとに小さじ半分を目安に食べます。

青唐辛子

きりっとした辛みが食欲をそそる

ナス科の植物で、原産地は南米。16世紀の大航海時代にコロンブスが持ち帰り、世界に広まりました。青く未熟な実を野菜として食べる(青唐辛子)、完熟した赤い実を乾燥させて使う(赤唐辛子)という、2つの利用法があります。

効果

辛み成分のカプサイシンには、血流を良くして体を温めたり、胃液の分泌を促して消化を助けたりする働きがあります。青唐辛子にはビタミンCが、赤唐辛子にはカロテンが特に豊富。

使い方

まずは辛さをチェック。ヘタに近いところを薄くスライスして舌にのせます。激辛なら種を取り除き、さほど辛くなければ種も綿も一緒にぶつ切りにするなど、辛さを調整しながら使いましょう。

ガラムマサラ

冷房で冷えた体をほどよく温める

ガラムはヒンディ語で「熱い」、マサラは「混ぜたもの」の意味。ナツメグ、シナモン、クローブ、胡椒など、体を温めるスパイスを数種類ブレンドしたもの(唐辛子とターメリックは入りません)。インドでは各家庭に代々伝わる調合があります。

効果

料理の香りを増して食欲を増進させたり、体を温めたりする効果があります。冬におすすめのスパイスですが、夏場に冷房が効いた部屋で過ごす人にも活用してほしいスパイスです。

使い方

カレーや炒めものの仕上げに振って、香りづけに使います。ドレッシングに加えたり、白身魚のムニエルやじゃがバターに振りかけたり、塩と混ぜてスパイシーな香り塩にして天ぷらに添えても。

<取材・文>奈良貴子 <写真>武藤奈緒美