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「のど」でわかる病気のリスクと対策

話す、飲食する、呼吸するなど、生活上大きな役割を担っている「のど」。近年、「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」が話題になるなど、のどの健康が命に関わる疾患に関係し、寿命も左右すると重要視されてきています。30〜40代でも、むせやしつこい咳などが“のどの老化”のサインに。のどの状態が示す疾患のサインや、のどをケアし疾患を予防する方法を呼吸器専門の医師に伺いました。

大谷義夫(おおたに よしお)先生
教えてくれた人

池袋大谷クリニック院長
大谷義夫(おおたに よしお)先生

医学博士、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医。群馬大学医学部卒業後、九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授、米国ミシガン大学留学等を経て2009年より現職。近著に『長生きしたければのどを鍛えなさい』(SB新書)。著書、メディア出演多数。

「むせる」が命を縮める病気のサイン!?

「むせ」は飲食物や唾液が誤って気管に入ってしまったとき、それを出そうとする反応。これは正常に飲み込む力(嚥下(えんげ)反射)が低下したときに起こりやすくなります。昼休みに急いで食事をかきこんだとき、たまたま…という程度ならいいのですが、40歳を過ぎてから何度か思い当たる人は要注意。肺に細菌が入り込み感染して起こる「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」のリスクが高くなるからです。誤嚥性(ごえんせい)肺炎は高齢者の肺炎の多くを占め、命にも関わります。まだ若い、と思っていても、よくむせるようになったらイエローカード、というわけです。

「咳払い」を頻繁にする人も要注意。異物を吐き出す力(咳反射)が弱まっているために、一度の咳では済まず、繰り返してしまうのです。嚥下(えんげ)反射も、咳反射も、加齢とともに低下します。また、細菌に対する体の抵抗力(免疫)も60代以降急速に落ちますので、感染症にかかりやすく、また重症化しやすいのです。

自分が思っているより、のどの老化は 加速しているかも!?「のど年齢」がわかるゴックンテスト

まずは、ゴックンテストで自分ののど年齢をチェックしてみましょう。

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用意するもの

タイマーやストップウォッチ
(スマホアプリを活用すると便利)

やり方

1.水を一口含み、口の中を湿らせる
2.人さし指をのど仏の少し上に当てる
3.30秒間で何回、唾液を飲み込めるかをカウントする

回数 4回以下 5回 6回 7回 8回 9回 10回以上
のど年齢 80代以上 70代 60代 50代 40代 30代 20代

・自分の年齢とのど年齢がイコールなら年相応です。

・5回以下の場合、誤嚥性(ごえんせい)肺炎のリスクが高くなります。

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“小さな脳梗塞”が誤嚥性(ごえんせい)肺炎につながることも!

のど年齢が高いと、カゼ・インフルエンザにかかりやすい

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冬の風物詩ともいえるカゼやインフルエンザも、ウイルスによる感染症です。咳反射が低下していると容易にウイルスの侵入を招き、かかりやすくなってしまいます。のどが痛くなったり、咳が出てもすぐ治まるなら、ウイルスを排除する力があるということなので心配いりませんが、いつものどがイガイガしている人、コンコン咳をしている人はのど年齢が高い、つまりのどが常にダメージを受けておりウイルスが侵入しやすい状態といえます。

また、喋ったり温かいものを食べたりするなどわずかな刺激で激しく咳込む場合は、気道にアレルギーなどの炎症が起きている可能性があります(咳喘息)。30〜40代の働き盛り世代にもよくみられ、カゼやインフルエンザにかかった後に発症しやすいので、2週間以上長引く咳は呼吸器の専門医を受診しましょう。

カゼにまつわる身近なQ&A

のど飴はどれくらい効果があるの?

のどを潤し乾燥を防ぐという意味で、飴はカゼ予防に有用です。のどが潤っていればのど表面にある繊毛がよく動くので、異物を外に出す働きが高まるからです。のど飴にはハーブ等スーッとする成分入りのものも多々ありますが、予防目的であれば特に成分は問いません。カゼをひいてしまったら、医薬品ののど飴がよいでしょう。

しょうがやネギ、はちみつはカゼにいいの?

先人の知恵で、カゼをひいたらしょうがやネギがいいと伝えられていますが、カゼの症状を改善する科学的な根拠はありません。ただ、体を温める食材ですので、しょうが湯などを飲むのはいいことだと思います。
一方、はちみつは抗炎症作用を示す研究報告が複数ありますので、のどの痛みや腫れ等の緩和に効果が期待できます。

「カゼにはビタミンCがいい」というけど、本当?

ビタミンCがカゼにいいかどうかについては数多くの研究があるものの、非常に疲れた状況ならビタミンCも有効ですが、実は健常者では相関がはっきりせず、結論が出ていません。どちらかといえば「ビタミンD」の方が、カゼやインフルエンザ、肺炎といった呼吸器感染症の予防に有効とのデータが出ています。ビタミンDは青魚やキノコ類に多く含まれており、また、日光浴でもつくられます。20分程度、手を太陽の光に当てるだけでも十分です。

「のどトレ」と「動脈硬化対策」で防衛を!

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嚥下(えんげ)反射や咳反射は、「筋肉」とそこに指令を出す「神経」の働きでコントロールされています。のどの若さを保ち疾患を予防するには、両方の衰えを防ぐことが肝要です。

筋肉

飲み込む力はのどの筋肉を、咳をする力は呼吸で使われる筋肉を鍛えましょう。肋骨や横隔膜を動かす呼吸筋を鍛えると、肺が大きくふくらむようになり、肺活量がアップ。咳をする力も強くなります。

神経

嚥下(えんげ)反射や咳反射は脳神経が関係しています。動脈硬化が進むと、神経細胞に酸素や栄養を届ける血管が詰まりやすくなるため、機能低下のもとに。したがって動脈硬化対策は脳梗塞だけでなく、誤嚥性(ごえんせい)肺炎の予防にも重要といえます。血圧や血糖値に気をつけ、適度な運動、そして禁煙を。

のど筋と呼吸筋を鍛える「のどトレ」

いずれも仕事の合間にできる簡単なものなので、ぜひ習慣にしてみましょう。

のどを鍛える
「あご持ち上げ&イィー体操」

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のど仏周辺の筋肉が鍛えられるのに加え、口角が上がり、小顔効果も。

呼吸筋を鍛える
「タオルストレッチ」

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「口腔ケア」でインフルエンザ予防!

口の中が汚れていると、細菌やウイルスへの防御機能が低下するため感染症の誘因に。口腔ケアをしている高齢者はそうでない高齢者に比べ、インフルエンザの発症率が10分の1に抑えられたという研究報告があります。誤嚥性(ごえんせい)肺炎も、唾液中の細菌による感染症であるため、口腔ケアが有効な予防策。毎日のブラッシングは丁寧に!

※掲載内容は2018年12月1日時点の情報に基づく
取材協力・監修/大谷 義夫(池袋大谷クリニック院長)
取材・文/渡邉 真由美