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その不調、「変化ストレス」が原因かも?

疲れがとれない、ミスが増えた、ちょっとしたことも億劫に……5月に入り、こんな不調が気になったら、「変化ストレス」が原因かもしれません。新年度のスタートにあたり、異動や昇進、転勤など、ビジネスパーソンをとりまく環境は、大きな変化が短期間に集中しがちです。それらが過剰なストレスとなり、ほっと一息つくころに、心身の不調として表れやすくなるのです。
やり過ごしているとつらさが長引き、仕事や生活にも大きな支障をきたしかねません。不調を感じたら休息や栄養バランスの良い食事を心がけ、疲労回復やリラックスにつとめることが大切です。

奥田 弘美(おくだ ひろみ)先生
教えてくれた人

精神科医(精神保健指定医)・
産業医(労働衛生コンサルタント)・作家
奥田 弘美(おくだ ひろみ)先生

山口大学医学部卒。精神科医および都内18カ所の産業医として日々多くの働く人のメンタルケア・ヘルスケアに関わっている。『1分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ、日本人に合ったマインドフルネス瞑想の普及にも力を入れている。

環境と気候の変化がストレスとなり、不調を引き起こす

仕事や人間関係など、環境が変わると誰でも緊張するものです。この緊張状態が続くと自律神経のバランスが乱れ、心身に不調をもたらすもとに。短期間でたくさんの変化があるほど、またその変化が大きいほど、ストレスも大きくなりがちです。

加えて、春は三寒四温といわれるように、気温の変動が大きいことも自律神経に影響します。一般的に自律神経は、気温差が5度以上の変化を繰り返すとバランスを崩しやすくなるといわれています。
仕事環境の変化と気候の変化によって3月~4月はダブルの「変化ストレス」がのしかかり、5月はその疲れが表面化しやすいといえるでしょう。

変化ストレスにより心身に表れる主なサインは次の通り。一時的なものならまず心配ありませんが、何日も続くようなら医療機関への受診が必要になることもあります。心身に異変を感じたら、まずは次にあげるような変化ストレスをやわらげる対策をとってみましょう。なお、ストレスが蓄積すると、人は飲酒や甘いものを食べるなどの、簡単に得られる快楽に走りがち。これらの量が増えるのも要注意といえます。

「変化ストレス」のサイン

体がだるく、疲れがとれない

集中力や、仕事の効率が落ちたと感じる

ケアレスミスが増えた

人と会ったり、電話をとったりするのが億劫

原因不明の体調不良(頭痛、胃腸の不調、めまいなど)が繰り返し起こる

熟睡できない(寝付きが悪い、途中でよく目が覚める、早朝に覚醒してしまう)

些細なことでイライラしたりクヨクヨしたり憂うつになったりと、感情が不安定

酒量や、甘いものを食べる量が増えた

「睡眠、栄養、リラックス」で疲労回復を

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変化ストレスによる自律神経の乱れを調整するには「体の疲れをとること」がもっとも重要です。それにはまず十分な睡眠を。体だけでなく脳の疲れもとり、集中力や思考力を回復させます。できれば7時間程度は確保したいもの。布団に入る2~3時間前から、スマホやパソコンに没頭するなどの脳の負担になることは避け、照明を暗めにして、心身を「寝るモード」にシフトさせることが、ぐっすりと深い眠りを得るポイントです。

また、栄養バランスの良い食事も疲労回復を助けます。特に肉や魚などの動物性タンパク質には、イミダゾールジペプチド、タウリン、カルチニン、鉄分といったいわゆる疲労回復物質が豊富に含まれるので、意識して摂りましょう。緑黄色野菜でビタミンを補うことも大切です。なお、極端なダイエットや過激な糖質制限は、イライラして余計にストレスをためこみやすいので避けましょう。

忙しい現代人は日中、長時間の緊張を強いられています。だからこそプライベートでは意識してゆるめる時間をつくりたいもの。ソファーでゆったり好きな音楽を楽しんだり、ぶらぶらと公園を散歩したり、日向ぼっこしながらぼんやりしたり……自分が楽しめてリラックスできることなら何でも構いません。

column

息抜きにゲームはNG

変化とうまくつきあって、ストレスをためない

環境の変化や、新しいことに取り組むこと自体は、自身の成長にもつながり良いことなのですが、変化ストレスを感じているときには優先順位をつけて、たくさんの変化を集中させないことが不調の予防策になります。

例えば、昇進を機にダイエットを始める、転勤をきっかけにジムに入会するなど、環境が変わると心機一転とばかりに、新しいことに取り組みたくなるものですが、同時期ではなく仕事環境に慣れてから始める方が、過剰なストレスを防げます。

また、仕事ではそうもいきませんが、習い事や家事など日常生活で上手に手抜きをすることもときには大切です。疲れていないときには楽しいと思えることでも、疲れているとさらに疲れやストレスを上乗せしてしまうからです。

またイライラや、不安、緊張で目の前の仕事に集中できないときは、その場で深呼吸を活用したマインドフルネス瞑想がおすすめ。お腹から息を吐いて吸う「腹式の深呼吸」だけでも緊張をゆるめ心を落ち着ける効果が期待できますが、お腹がふくらむ微細な感覚に意識を向けることで、心を「今ここ」に連れ戻す瞑想効果が生まれます。

イライラを1分で解消!
その場でできる腹式呼吸

深呼吸瞑想(腹式)

  • 両足を程よく開き、安定して立ちます。
  • おへそから下腹にかけて両手のひらを当てます。
  • 手のひらでお腹がへこんでいくのをじっくり感じとりながら、しっかりと息を吐き出します。
  • おへそを中心に大きくお腹をふくらませながらゆっくりと息を鼻から吸い込みます。
  • 両足を程よく開き、安定して立ちます。
  • おへそから下腹にかけて両手のひらを当てます。
  • 手のひらでお腹がへこんでいくのをじっくり感じとりながら、しっかりと息を吐き出します。
  • おへそを中心に大きくお腹をふくらませながらゆっくりと息を鼻から吸い込みます。
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①~④のポイント

まず息をしっかり吐き出したら、おへそを中心にお腹をふくらませながらゆっくり息を吸います。

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  • お腹がふくらみきったら一時停止。今度はゆっくりとできるだけ長く口から息を吐き出します。
  • ③~⑤を3回以上繰り返しましょう。
  • お腹がふくらみきったら一時停止。今度はゆっくりとできるだけ長く口から息を吐き出します。
  • ③~⑤を3回以上繰り返しましょう。
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目覚めたときに熟睡感がなく、不安や焦りを感じる緊張気味の朝などにも腹式呼吸がおすすめです。

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※なお、心身の不調が長引き、すでに仕事や生活に支障が出て困っている場合は、体の不調は該当する診療科(頭痛→脳神経科や頭痛外来、胃腸症状→消化器科など)を、心の不調は精神科や心療内科を受診することをおすすめします。

掲載内容は2019年5月1日時点の情報に基づく
取材協力・監修/奥田 弘美(精神科医)
取材・文/渡邉 真由美
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