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働き盛り世代を突然襲う!締め付けられる”胸の痛み”に要注意

ドキドキ、バクバク、キュンキュン……など。高まる感情を鼓動で例えた表現はいろいろありますが、もし「ギューッ」と締め付けられるような胸の痛みが起こったら、それは心臓からの緊急アラーム。栄養や酸素を心臓に届ける血流が不足して発症する「虚血性心臓病」の恐れがあります。忙しいビジネスパーソンの生活習慣には、この突然死を招きかねない病気のリスクが、実はいくつもひそんでいるかもしれません。特に寒くなってきたこの時期は注意が必要です。専門の先生にお話を伺いました。

三田村 秀雄(みたむら ひでお)先生
教えてくれた人

国家公務員共済組合連合会 立川病院
院長 三田村 秀雄(みたむら ひでお)先生

慶應義塾大学医学部卒業後、Jefferson医科大学研究員、慶應義塾大学医学部内科助教授、同心臓病先進治療学教授、東京都済生会中央病院心臓病臨床研究センター長等を経て2013年より現職。専門は心臓病一般、特に不整脈・心臓電気生理学で、日本の不整脈研究および臨床の第一人者。2016年には日本AED財団を立ち上げ、理事長として幅広くAEDの普及啓発に尽力している。

“張り切りすぎ”が心臓病のひとつのきっかけになることも

* 睡眠時無呼吸症候群:眠っているときに呼吸が止まり、心臓や脳、血管に負担をかける病気。肥満や顎が小さいなどで気道が狭くなることが主要因。大いびきや昼間の眠気をともなうことが多い。

図表1 動脈硬化の進行

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過剰なストレスや急な運動で突然死も。
寒い日の朝は特に注意!

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プラークが破れるきっかけになりやすいのが「過剰なストレス」や「急な運動」、「急な興奮状態」。長時間労働や睡眠不足、接待等での気遣いもストレスになります。特に、寒い日の朝は要注意です。体によかれと思って走りに行ったり、接待ゴルフで朝早くからコースに出たりと、急に運動すると血圧が急上昇。その勢いでプラークが破れ、死に至る、というケースは決して珍しくありません。ちなみに、海外の研究では「月曜日の午前10〜12時」に突然死が多く(Arntz HR, EHJ 2000;21:315)、1年のうちでは冬の時期、特に年末年始に突出して多いという報告があります(Mohammad MA+,BMJ 2018)。

column

心臓の病態は大きく3つ

病気の
状態
症状 代表的な
病気
虚血性
心臓病
心臓に酸素や栄養素を運ぶ血管が動脈硬化を起こし詰まるために、心臓が弱ったり壊死したりする 狭心症、
心筋梗塞
不整脈 心臓を拍動させる電気信号の異常 心房細動、
心室細動
心不全 心臓のポンプ機能が弱まり血液が全身に
十分にまわらなくなる
心筋梗塞、
心筋症、
弁膜症などのほか、
不整脈も起こる

「ゾウがのっているような」胸の痛みが心臓の危機を
教えてくれる

命に関わる“心臓のガス欠”状態である虚血性心臓病。そのもっとも顕著なサインが「胸の痛み」です。胸の痛み自体はさまざまな要因で起こり得ますが、虚血性心臓病に特徴的なのは「ギューッと締め付けられる」感覚です。「ゾウが胸の上にのっているよう」ともいわれることがあります。声を出すこともできず身動きもとれないほどの「尋常ではない」痛み。一方、同じ胸の痛みでも「チクチクする」とか「ここが痛い、とピンポイントで示せる」場合は、虚血性心臓病によるものではありません。

この尋常ではない痛みが、数十秒~数分程度続いたのちにおさまれば「狭心症」。それ以上続き、おさまる気配がない場合は「心筋梗塞」が疑われます。

後者は病院で迅速な処置をしなければ高い確率で死に至ります。狭心症が悪化して心筋梗塞を起こすとは限らず、無症状だった人が突然、心筋梗塞を起こすこともあります。つまり、狭心症を起こした人は、血管の状態を改善し心筋梗塞のリスクを減らす「猶予」が与えられたと前向きにとらえることができます。次のような症状が出たら、早めに循環器科を受診しましょう。

狭心症チェック

締め付けられるような胸の痛みがある

ジョギングや坂道をのぼるなどの、ちょっときつい動作をすると、息切れや動悸が起こる

興奮すると、胸が苦しくなる

胸の痛みや吐き気で冷や汗が出る

動作時だけでなく、安静にしているときにも胸が痛む
→ かなり危険な状態です。すぐに受診を。

また、次のような場所が痛むときにも狭心症が疑われます。これらと心臓部分の神経領域が共通しているためと考えられています。

あごから奥歯が痛む

左肩~左腕が痛む

健康診断でリスクを知る!
食事も運動も「ほどほど」の継続が
予防に

狭心症や心筋梗塞の要因である動脈硬化は、自覚症状がないまま進んでいきます。自衛するにはまず、「自分のリスクを知ること」。職場等の健康診断の結果には必ず目を通し、血糖値、血圧、コレステロール値のいずれかに異常値があれば、正常値に近づけるよう生活習慣の見直しをしましょう。もし要再検査や要受診であれば放っておかずに受診を。

食事

腹八分目で肥満防止。また、汁ものや酒のつまみなどの塩辛いものは高血圧の要因になるので控えめに。アルコールや、カフェインを多く含む飲み物(コーヒー、紅茶など)は利尿作用があるので、血液中の水分が減りいわゆる“ドロドロ”の状態に。血管内で詰まる要因をつくりやすくなるため、飲みすぎに注意をしましょう。

運動

血流をスムーズにし、血圧を安定させるには有酸素運動がおすすめ。ただし月に1度思い出したようにその日にたくさん運動をしたり、がんばりすぎて毎日無理をしたりするのはかえってよくありません。「毎日か1日おきに、20~30分程度」を目安にしましょう。

ストレスコントロール

秋は日中と夜との寒暖差が大きくなりやすくなります。これがストレスとなり心臓に負担がかかるので、衣類等で寒暖差が少なくなるようコントロールすることが大事。入浴はぬるめのお湯の方が心臓への負担が少ないのでおすすめです。なお、サウナは脱水を招きやすいので慎重に。十分な睡眠も大切です。

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通勤路と職場内の「AED」の場所をチェック!

万一、目の前で突然、人が倒れたら、救急車を呼ぶとともに一刻も早く「AED(自動体外式除細動器)」の使用が望まれます。危機管理の一環として、AEDが通勤途中のどこにあるか、職場内のどこにあるかを知っておきましょう。誰かが目の前で倒れたとき、あわてず救命活動が行えますし、自分の身に起こったときのためにも、職場内等で情報の共有化をしておくことが大切です。

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掲載内容は2019年10月1日時点の情報に基づく
取材協力・監修/三田村 秀雄(立川病院院長)
取材・文/福田(渡邉)真由美