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糸を引く鼻水に要注意!働き盛りを襲う「副鼻腔炎」

鼻水、鼻づまり、くしゃみ……。この時期になるとスギ花粉症による鼻のつらい症状に悩まされる人は多いのではないでしょうか。しかし、中には花粉症に似た症状ながら、別の病気が紛れている可能性もあります。その代表格が「副鼻腔炎」。蓄膿症とも呼ばれ、菌などの感染で起こるものですが、近年、原因不明の免疫異常で起こる「好酸球性副鼻腔炎」が働き盛り世代を中心に増えています。副鼻腔炎は、放っておくと脳にまで感染がおよび命の危険にもつながる可能性があります。また、花粉症が長引いて発症する可能性もあり注意が必要です。今回は病気の特徴や治療、その予防方法について耳鼻咽喉科の専門医に話を伺いました。

石井 正則(いしい まさのり)先生
教えてくれた人

JCHO東京新宿メディカルセンター 耳鼻咽喉科診療部長
石井 正則(いしい まさのり)先生

東京慈恵会医科大学大学院修了後、米国ヒューストン・ベイラー医科大学 耳鼻咽喉科へ留学。帰国後東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科医長、同大学准教授、岐阜大学医学部耳鼻咽喉科・臨床教授を経て現職。JAXA(宇宙航空研究開発機構)で飛行士の検査や健康管理に関わる宇宙医学審査会委員も務めている。

粘り気のある鼻水や頭部の激痛は一刻も早く耳鼻咽喉科へ

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花粉症は、体内に入ったスギ花粉などのアレルゲン(原因物質)を、体の免疫が排除しようとして起こるアレルギー反応です。それに対して副鼻腔炎は、菌などの感染で起こる炎症で両者はまったく別の病気です。

もっとも分かりやすい症状の違いは「鼻水」。花粉症は比較的さらっとしているのに対し、副鼻腔炎の場合は粘り気が多いのが特徴です。また、重症化すると感染が広がり、眼の奥や頭が激しい痛みに襲われることも。航空医学分野では「スクイーズド・ペイン」と呼ばれる、文字通りまるで“脳が搾り上げられる”かのような痛みで、日常生活にも大きな支障をもたらします。痛みだけでなく、感染が脳に至れば細菌性の脳膜炎や髄膜炎を起こす恐れもあり、命の危険に関わります。

副鼻腔炎は細菌やカビによる感染症として知られていましたが、2000年以降、それとは別のメカニズムで起こる「好酸球性副鼻腔炎」が増えています。免疫細胞の一つである好酸球が異常に増殖して起こる炎症ですが、なぜ好酸球が増えるかは解明されていません。国の指定難病となっており、患者数は2万人を超えるとされています。

従来の副鼻腔炎が子どもに多いのに対し、好酸球性副鼻腔炎は30~60代の働き盛り世代に目立つのが特徴。女性にやや多く、また男女問わずぜんそくのある人に多い傾向があります。発症には過剰なストレスの関与も指摘されています。

副鼻腔のイメージ図

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(取材をもとに作成)

副鼻腔は鼻腔の近くにある空洞で、頬骨の下にある上顎洞、額にある前頭洞、眉間の奥にある篩骨洞、そのさらに奥にある蝶形骨洞の4つから成る。すべての副鼻腔は鼻腔とつながっている。

こんな自覚症状は副鼻腔炎かも

鼻水などの鼻の症状があり、1週間前後、下記のどれか一つでも思い当たることがあれば耳鼻咽喉科へ!

副鼻腔炎に共通の症状

両ほほや目の奥に鈍痛がある

鼻の中からいやなにおいがする

頭痛がある

感染型の副鼻腔炎

鼻水がどろっとして黄色や緑色をしている

好酸球性副鼻腔炎

鼻水がねばっとしてつーっと糸を引く
(粘り気は感染型よりも緩いが途切れずしつこい)

嗅覚が徐々になくなっていく

従来型なら薬物療法が奏効
重症例や好酸球性の場合は手術

耳鼻咽喉科では、血液検査や画像検査および病理検査によって診断や重症度の判定を行います。好酸球性副鼻腔炎の場合、CT画像上で両側の蝶形骨洞の粘膜が腫れているのが認められます。

治療法は、従来型の慢性副鼻腔炎の場合は、治療効果の高いマクロライド系の抗菌薬による薬物療法がその柱となります。最低2カ月の間、薬を飲み続けることで、絨毛が異物を排出する働きを高め、多くの場合で治癒に向かうことが分かっています。

しかし、従来型でもポリープができるような重症例や好酸球性副鼻腔炎の場合は、内視鏡で病変部を取り除いたり、副鼻腔の壁を一部またはすべて取り払って広い空間にし、空気や鼻汁の流れを良くする外科的治療が検討されます。手術時に入れた止血剤の処置や手術後の細菌感染の防止のため5日間程度は入院が必要と考えます。

副鼻腔の周囲には、眼や脳など傷つけてはならない部位があるため、近年、リアルタイムでどこにメスがあるかを3次元的にモニターに映し出す「ナビゲーションシステム」の導入が進んでおり、より安全かつ確実な手術が可能になりました。再発リスクも抑えられるようになってきています。

ナビゲーションシステムのイメージ

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(写真提供:石井先生)

早めの受診こそが第一の予防
鼻洗浄もお勧め

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副鼻腔炎は、種類にかかわらず、自然治癒も含め1カ月程度で症状がなくなるものを急性、2~3カ月炎症が続くものを慢性と区別します。慢性になると再発リスクも高くなるので、疑わしい症状があったら早く耳鼻咽喉科を受診することが何よりの自衛策です。

また、花粉症が長引いて副鼻腔炎を併発するケースもあります。目安として3カ月、鼻水の症状が続き、かつ粘り気を帯びてきたらやはり耳鼻咽喉科で検査を受けましょう。いずれにしても「たかが鼻水」と放っておかないことです。

副鼻腔炎の予防策としては、鼻洗浄(鼻うがい)が有用と考えられています。その際には、ネット通販などでも手軽に購入できるノズルのついた専用の洗浄器使用がお勧めです。電動のものもありますが、パワーが強く人によって痛みを感じやすいので、手動の方が使いやすいでしょう。

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鼻の症状、新型コロナとの違いは?

嗅覚が弱くなるという点で、好酸球性副鼻腔炎と新型コロナウイルス感染症の症状は似ている部分もありますが、前者は徐々に弱くなるのに対し、後者は急ににおいが感じられなくなるのが特徴です。また、新型コロナはどちらかといえば嗅覚消失とともに味覚がなくなるという症状も顕著にでる人がいますが、副鼻腔炎では味覚異常を訴えるケースはあまり多くありません。

掲載内容は2021年1月1日時点の情報に基づく
取材協力・監修/石井 正則(JCHO東京新宿メディカルセンター 耳鼻咽喉科診療部長)
取材・文/福田(渡邉)真由美