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マスク生活でリスク増!集中力ダウンを招く恐れも 夏の「かくれ脱水」、危険なサインと対処法

蒸し暑い夏、水分はしっかり摂っていますか? 湿度が高いとのどの渇きを感じにくいうえ、長時間のマスク着用で水分摂取を忘れがちになることも。知らず知らずのうちに、熱中症の初期症状である脱水症を起こしやすく、脳の働きや消化器、運動器機能にも悪影響が生じます。脱水症の一歩手前である「かくれ脱水」の段階で水分補給などの対策を図ることが大切です。脱水症に詳しい専門家に、気を付けるべき症状や有効策を伺いました。

谷口 英喜(たにぐち ひでき)先生
教えてくれた人

済生会横浜市東部病院 患者支援センター長
谷口 英喜(たにぐち ひでき)先生

麻酔科認定指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医。福島県立医科大学医学部卒業。神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授等を経て現職。東京医療保健大学大学院客員教授、「かくれ脱水」委員会副委員長を併任。脱水症・熱中症・周術期管理の専門家として、メディア出演多数。著書に『経口補水療法ハンドブック』、『イラストでやさしく解説!「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本』(ともに日本医療企画)などがある。

「飲んでもいないのに二日酔い」は
水不足を訴える体からの
サインかも

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「かくれ脱水」とは、体に必要な水分と電解質が足りていない状態です。放置すると初期の熱中症にあたる本格的な脱水症へと移行する恐れがあります。

しかし、この段階では、はっきりした自覚症状が乏しく、単なる疲れや寝不足と思いこみ見過ごされがちです。かくれ脱水に気付くポイントは、「お酒を飲んでもいないのに二日酔い」のような不調。人体の体液(水分)は特に、脳、消化器、筋肉に多いため、減り気味になるとこれらの機能が低下し、集中力の低下や頭痛、胃腸の不調、足がつるといった、二日酔いに多く見られるトラブルが出やすいのです。

二日酔いのときと同じように、脱水も仕事のパフォーマンス低下を招きます。持病もなく心あたりもないのに、急に次のような不調が起こったらかくれ脱水を疑いましょう。

かくれ脱水のサイン

気力や集中力が出ない

ぼんやりして考えがまとまらない

やたら眠い

頭痛

食欲がない

気持ちが悪い、吐き気がする

便秘

筋肉痛、足がつる

「家にいるから大丈夫」は誤解!?
リモートワークが「かくれ脱水」を
起こしやすい3つの理由

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ステイホームの状況下では運動不足になり筋肉量の減少が懸念されます。筋肉は人体で最も水分を蓄えることのできる「リザーバー(ダム湖)」のようなもの。体全体の水分の実に約4割は筋肉に存在するとされています。したがって筋肉量が減ると蓄えられる水分量も少なくなり、脱水リスクが高まることに。

また、人は一日に必要な水分をすべて飲み物で補給しているわけではなく、実に半量は、食べ物から摂っているとされています。したがって、オンオフの切り替えがしにくく食事がおざなりになると、摂取できる水分量が減る恐れもあります。加えて、「運動不足で太ったから」とダイエットで極端な食事制限をするとやはり水分不足に陥りやすくなります。

外出時における長時間のマスク着用も脱水リスクを高める要因になり得ます。そもそも「のどの渇き」は水分補給を促す体からのサイン。しかし、マスクは保湿効果があるために、体の水分が減っていてものどが渇いたというサインが出にくいのです。

酒量が多い、高血糖、筋肉量が少ない人もかくれ脱水にご用心

アルコールは分解時に水分を必要とするため、飲酒習慣のある人はそうでない人より高リスクといえます。また、筋肉量が少ない人も要注意。一般的に女性と男性とでは、筋肉量の違いから、女性の方が脱水を起こしやすいことがわかっています。糖尿病にかかっているなど高血糖の人も高リスク。血液中の糖を尿として排出するのに体内の水分が大量に使われるためです。

こんな人は脱水しやすい!

生活リズムが不規則になりがち

筋肉量が少ない体形

血糖値が高い

酒をよく飲む

ダイエットをしているなどで食事量が少ない

予防の基本は「のどが渇きそうに
なったら、こまめに飲む」
夏野菜で食事からも水分補給を!

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一日の水分必要量(4-2-1ルール)
① 体重10kgまで
: 4ml/時
② 体重11~20kgまで
: 2ml/時
③ 体重21kg~
: 1ml/時

例)体重60kgの人の場合の1時間の水分必要量の考え方は次の通りです。

① 最初の10kgは10kg×4ml=40ml/時
② 次の10kgは10kg×2ml=20ml/時
③ 残りの60-20=40kgは40kg×1ml=40ml/時
上記合計は100ml/時となります。

一日の水分必要量は100ml×24(時間)=2,400ml。このうち半量は食事から摂るとして、2,400÷2=1,200mlが食事以外での一日の水分補給の目安量となります。

(谷口先生への取材をもとに作成)

水分補給のポイントは、働き盛り世代なら「のどが渇きそうになったら飲む」ことです。一回につきコップ一杯程度の量(150~200ml)をこまめに飲むようにしましょう。飲み物の種類は、水かお茶がよいでしょう。スポーツドリンクは常用すると「ペットボトル症候群」とも呼ばれる糖質過多に陥りがちなので、外回りなどで汗をたくさんかいたり、重労働でなければほどほどにすることがベターです。コーヒーや紅茶などのカフェイン入り飲料も、日常的に飲んでいる人なら利尿作用はそれほど心配なく、水分補給が可能です。ただし、眠れなくなる人や血圧が心配な人は注意が必要です。

食事による効果的な水分補給のキーワードは、「夏野菜」と「とろみ」。きゅうりやナス、トマトといった夏野菜には水分を多く含むものがたくさんあるので積極的に摂るとよいでしょう。果物も同様です。また、カレーやあんかけなどの「とろみ」があるメニューも水分が豊富。のどの通りもよいので食欲がないときにもお勧めです。

水分補給のポイント

のどが渇きそうになったら、こまめに飲む

水かお茶がベスト

夏野菜やとろみのある料理もお勧め

高齢者は「時間を決めて」、子どもは「好きなときに」。水分補給のポイント

高齢者はのどの渇きを感じにくいため、服薬のように「時間を決めて」水分を摂る方が忘れずにすみます。特に、睡眠中に脱水になりやすいので、寝る前と、起きた直後に水分補給するとよいでしょう。子どもは代謝がよく、すぐ汗や尿になって排泄されやすい上、筋肉量が少なく蓄えもきかないので、「好きなときに、好きなだけ」飲ませるのがポイントです。飲み物は成人と同じく、糖質過多にならないよう水かお茶が適しています。いずれも脱水症状を起こすと、最初は軽くても急激に症状が重篤化し熱中症を起こして命に関わる恐れが。次のような症状が見られたら、すみやかに水分補給し、涼しいところで休ませましょう。それでも改善せず悪化するようなら医療機関へ。

高齢者と子ども、こんな症状は
気を付けて!

ぼうっとしている

話しかけても反応が鈍い

体が痛い、痛みが増す(高齢者の場合)

※脳の水分量が減り意識が低下しても、痛みの感覚は保たれやすいことから、相対的に強く感じられることがある。

掲載内容は2021年6月1日時点の情報に基づく
取材協力・監修/谷口 英喜(済生会横浜市東部病院 患者支援センター長)
取材・文/福田(渡邉)真由美