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食中毒は秋こそ注意? 家庭で実践できる予防法

食中毒は夏に多いと思われがちですが、年間で発生件数が多くなるのは10月です。夏バテで体力が落ち、免疫力が低下しやすい秋。特にキノコやフグなどの自然毒、魚介類の寄生虫による食中毒には注意が必要です。そこで今回は、秋に注意すべき食材や家庭でできる食中毒予防について、食の専門家である南恵子さんに話を伺いました。

2021年9月

食中毒は、涼しくなっても油断禁物!

食中毒が多い季節というと、多くの人は梅雨の時期や夏を思い浮かべるのではないでしょうか。確かに、湿気が多くなる梅雨や気温が高い夏は細菌が増えやすく、食中毒になりやすいのは間違いありません。しかし、厚生労働省が発表している「食中毒統計資料」によると、月別に見た食中毒発生件数がもっとも多いのは10月なのです。

気温も下がって過ごしやすくなる秋に、なぜ食中毒が増えるのでしょうか。南さんは次のように分析します。

健康な人と体の免疫力が下がっている人とでは、食中毒になるリスクは異なります。食中毒の原因となる細菌などを口にしたとしても、健康であれば胃酸により細菌を死滅させることができます。また、腸内環境が整っていると乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が活発になり、食中毒の原因菌が繁殖しないように抑えられるのです。つまり、夏バテで胃腸が弱っていたり、疲れが溜まっていたりすることで食中毒になってしまうケースが増えるのではないでしょうか。

さらに、秋の行楽シーズンになると、キャンプに行って手をよく洗わずにおにぎりを食べたり、バーベキューで生焼けの状態で食べてしまったり、それらも秋に食中毒が増える原因かもしれません。新鮮な肉だから安全、と言い切れないので注意が必要です」(南さん)。

また、秋の食中毒の特徴は、自然毒や寄生虫が原因の割合が多くなること。特に秋の味覚であるキノコや脂が乗っておいしいサバなどが食中毒を引き起こしてしまうのです。

売られているキノコ以外は食べたらダメ!

食中毒の原因となる自然毒にはさまざまなものがあります。例えば、ニラとよく似たスイセンの葉や、早い時期に収穫してしまったジャガイモには毒があり、魚介類ではフグが有名です。

ただ、秋の食中毒の原因としては、やはりキノコがもっとも多いでしょう。毒キノコを誤って食べてしまったら、嘔吐や腹痛、下痢を引き起こすほか、毒性の強いものは呼吸困難を起こし、命を落としてしまう危険性もあります。南さんは「食品として売られているキノコ以外は絶対に食べないように」と強く語ります。

「毒キノコのなかには食用とまったく見分けがつかないものがあります。山の達人でキノコ博士と呼ばれるような人でも間違えて食べてしまった例もあり、森や山のなかに自生しているキノコを採って食べるのは非常に危険です。もし、キノコ狩りを楽しみたいなら、きちんと管理された施設や場所を選びましょう」(南さん)。

また、普段からよく食べているシイタケでも、生で食べるのは危険だそうです。

「以前、生のシイタケをぬか床につける『シイタケのぬか漬け』が話題になったことがありますが、いくらおいしいと言ってもおすすめはできません。キノコというと野菜の一部と捉えられがちですが、生物の分類的には菌類です。シイタケに限らず、キノコの生食による食中毒や皮膚炎、アレルギー症状などの報告もあるので、必ず加熱調理をして食べるようにしましょう」(南さん)。

魚の寄生虫「アニサキス」を防ぐには

自然毒のほかに秋の食中毒として大きな割合を占めるのが、寄生虫によるものです。例えば、サンマやイワシ、サバなどは秋においしい魚ですが、それらには「アニサキス」と呼ばれる虫が寄生しています。そして、アニサキスが体内に入ると、みぞおちが激しい痛みに襲われたり、吐き気や発熱などの症状が出たりします。それらの症状は時間が経てば治るわけではなく、必ず病院に行って処置してもらわなければなりません。

アニサキスは魚の内臓にいるため、スーパーなどで切り身で売られているものは内臓がしっかりと取り除かれており、それほど不安はありませんが、自宅で魚を捌くときには注意が必要です。加えて、鮮度が落ちるとアニサキスが内臓から身の部分にも移動し、そうなると完全に取り除くのは難しくなってしまいます。では、安全に食べるにはどうすればよいのでしょうか?

アニサキスは70度以上で加熱するか、-20度以下で冷凍すると死滅すると言われています。ですから、焼き魚などは心配ありませんし、お刺身やお寿司で食べるのなら、一度冷凍されたものを買った方が安全でしょう。お酢につけたら大丈夫とか、わさびと一緒なら問題ないと言われていますが、それは間違った情報なので信じてはいけません」(南さん)。

食中毒に気をつけながら秋の味覚を楽しもう

食中毒から身を守るために大切なのは、菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」の3つ。南さんは食中毒にならないために、普段からいろいろなことに気をつけているそうです。

「例えば、蒸し暑いときはできるだけ生ものを食べないようにして、サラダを作るときも野菜をサッと熱湯に潜らせるようにしています。食材だけでなく、包丁やまな板などの調理器具にも気を配り、菌がつかないように食品にも使えるアルコール消毒剤を使っています」(南さん)。

南さんによると、大量調理する飲食店では食中毒を起こさないために、味に影響のない食品用アルコール消毒剤を食材にかけているところもあるのだとか。それくらい食中毒には注意が必要なのです。

また、菌をつけたり増やしたりしない以外にも、食中毒にならないためには自身の体調管理をしっかりしておくことも重要です。

食中毒から身を守るには、免疫機能がきちんと働く体を維持することが大切です。夏バテで食欲がなくなり、栄養不足になってしまったら免疫力が落ちますし、睡眠不足や疲れが溜まっている状態も食中毒のリスクが高まります。また、体の免疫細胞は腸に集まっています。腸内の健康を維持することも重要なので、発酵食品や食物繊維を摂り、腸の健康を保ちましょう」(南さん)。

最近は、コロナ禍の影響でテイクアウトやデリバリーを利用する方も増えているでしょう。そうなると、やはり食中毒の不安が高くなりますよね。

「今は9月や10月でも暑い日が多く、テイクアウトやデリバリーにも注意が必要です。テイクアウトで生ものを持ち帰るなら保冷バッグを持参したり、家からあまり遠くないお店や馴染みのあるお店を選んだりしましょう。デリバリーの場合は、置き配で頼んでおいて料理が届いたのにそのまま放っておくなどは絶対にしてはいけません」(南さん)。

食欲の秋と言われるように、秋にはおいしいものがたくさんあります。その秋の味覚を十分に楽しむために、食の安全を常に心がけましょう。

監修者プロフィール

南 恵子 | Keiko Minami

All About「食と健康」ガイド。NR・サプリメントアドバイザー、フードコーディネーター。現在、食と健康アドバイザーとして、健康と環境に配慮した食生活の提案、レシピ提供、執筆、講演、商品企画アドバイスを中心に活動。毎日の健康管理に欠かせない食に関する情報を発信している。

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