ソニー生命

食後すぐの歯磨きはNG? 意外と知らない虫歯&歯周病の最新ケア情報

毎年6月4日から6月10日は「歯と口の健康週間」。かつては「6(む)4(し)」にちなんで6月4日が「虫歯予防デー」に制定されていましたが、2013年から「歯と口の健康週間」となっています。この機会に、お口の健康状態を見直してみてはいかがでしょうか? 特に気をつけたいのが、「虫歯」と「歯周病」の二大トラブル。どちらも歯を失ってしまうだけではなく、健康状態にも影響を与えかねません。ここでは、最新の医療情報に基づいて、虫歯と歯周病の予防法を歯科医師の丸山和弘先生に伺いました。正しい知識を身につけて、健やかな口内環境をキープしましょう。

2022年06月

意外と知らない? 虫歯と歯周病の違いとは

虫歯と歯周病の違いをきちんと理解している人は、意外と少ないかもしれません。まずは、歯科医師の丸山和弘先生に、虫歯と歯周病発症のメカニズムについて教えていただきましょう。

「虫歯と歯周病の大きな違いは、虫歯が歯の病気であるのに対して、歯周病は歯茎の病気である点です。虫歯は、口の中の細菌が食べカスを食べて酸をつくり出し、それが歯を溶かしていくことで進行します。一方で、歯周病は細菌が歯と歯肉の間の『歯周ポケット』と呼ばれるスペースに入り込み、歯茎の炎症などを引き起こします。どちらも歯に残った食べカスや、プラーク(歯垢/細菌の塊)が原因で起こります」(丸山先生)。

何度も虫歯を繰り返してしまったり、歯磨きなどのケアをしっかりしているつもりでも歯周病になってしまう人もいるようです。人によって、「虫歯や歯周病になりやすいタイプ」があるのでしょうか?

「まず、虫歯には、歯の質・糖質・細菌という3つの要素が深く関わっています。歯の質にはそれぞれ個人差があり、歯が柔らかいと虫歯になりやすい傾向にあります。また、普段の食生活で細菌のエサとなる糖質を多く摂取していると、当然虫歯になるリスクが高まります。生活習慣などで左右される口内の細菌環境もやはり、虫歯の原因因子のひとつです。これらの条件が重なり合うことで、虫歯になりやすい環境が形成されてしまいます」(丸山先生)。

口内細菌が全身に影響! 歯の病を放置するとどうなる?

「歯周病に関してもやはり、口内の細菌環境などによって、かかりやすさが左右されます。とはいえ、近年では歯磨き粉や医療機器・治療方法の発達などにより歯を失うリスクが下がっており、歯の残存状況が良好になってきたことで、逆に歯周病のリスクは増えてきています。

厚生労働省のデータでは、歯肉出血や歯石などの初期段階を含めると、歯周病の症状が表れやすい歯周ポケット4mm以上の人が35歳以上で約4割程度という指摘も。実際に私の元にいらっしゃる患者さんでも、数年ぶりに来院された方のうち8割くらいは歯周病にかかってしまっている印象です」(丸山先生)。

歯周病は「痛い」などの明確な症状が出づらく、つい放置してしまいがち。日本はしばしば「歯周病大国」などと言われますが、自覚症状がないだけで、「実は歯周病だった」というケースも少なくなさそうです。

「もっとも、世界と比較すると日本の歯周病の罹患状況は比較的良好な状態です。歯周病は歯が残っているからこそかかる病気なので、医療が進んだ先進国ほど患者数が多い傾向にあり、欧米なども歯周病の罹患率は低くありません。一方で、歯周病に限りませんが、日本ならではの傾向として、保険診療が適用される安心感からか、症状が出てからで大丈夫と考えて、生活に影響が出るくらい症状が悪化するまで、病院に行かない人が多いようです」(丸山先生)。

虫歯や歯周病を放置し続けると、どんなリスクが起こりうるのでしょうか。

「虫歯を放置すると、酸で歯が溶けてボロボロになり、歯そのものがなくなってしまいます。歯周病も歯が抜けるリスクはありますが、ひどい場合は、脳卒中や心筋梗塞などの全身疾患を引き起こす可能性もあります。

これは、歯周病の細菌が歯茎から血液に入り込み、全身の血流を悪化させてしまうためです。特に糖尿病の悪化に関しては、歯周病によって生じる『サイトカイン』という物質との関連性が指摘されています。虫歯や歯周病のケアは、全身のさまざまな病気のリスクを防ぐためにも、極めて大切なことなのです」(丸山先生)。

最新の知見による正しい虫歯・歯周病予防を知ろう

虫歯や歯周病発症のメカニズムが明らかになるにつれ、近年ではその予防法も変化しています。最新の知見を踏まえて、虫歯と歯周病の正しいケア方法を、丸山先生に教えていただきましょう。

■「食後3分以内」は実はNG?
「これまで『食後3分以内』の歯磨きが推奨されてきましたが、近頃ではこの考えが見直されてきています。食事中、および食後はプラークの活動が活発で、歯のエナメル質が溶かされている状態です。このタイミングで歯磨きをすると、摩耗を促進して歯にダメージを与えるリスクが指摘されているのです。

とはいえ、ベストな歯磨きのタイミングを食後〇分と決めることは難しく、食後30分~4時間程度の間に、磨きやすいタイミングで行うのがよいでしょう。いずれにせよ、『食べたらすぐ!』と焦る必要はまったくないということです」(丸山先生)。

■フッ素配合の歯磨き粉を使う
「虫歯予防に良いとされるフッ素には、歯の表面のエナメル質と反応して歯を強化し、酸に強い状態にする働きがあります。WHO(世界保健機関)は歯科治療にフッ素を推奨しており、日本でも、2017年3月に厚生労働省が1500ppm以下のフッ素を市販の歯磨き粉に入れる許可を出しました。虫歯予防には、高濃度のフッ素入り歯磨き粉を選ぶことをおすすめします。フッ素入りの歯磨き粉を使う場合は、薬効成分をできるだけ流さないよう、最後のすすぎは控えめに。とはいえ、プラークや食べカスはきちんと流したいので、適度な回数はすすぐようにしましょう。

研磨剤は歯のエナメル質を傷つけてしまう恐れがありますが、現在は「研磨剤不使用」の歯を傷めずに着色を落とすホワイトニング系歯磨き粉なども販売されており、「歯の本来の白さ」を取り戻したい人におすすめできます。また、昔と違って歯磨き粉を多く使うことによる研磨剤の悪影響よりも、フッ素の虫歯予防効果の方が期待されています」(丸山先生)。

■固いものを噛むときは、数回に分ける
「固いものを食べると歯が丈夫になると言われることがありますが、実際は逆。歯は消耗品なので、固いものを噛めば噛むほど傷みます。歯ごたえのあるものを食べるときは、一気に噛み砕くのではなく、数回に分けて噛むことを意識しましょう」(丸山先生)。

■間食より食後のデザートの方が虫歯リスクは低い
「虫歯の原因は糖質なので、間食を摂るなら、なるべく糖分が控えめのものを選びたいです。それに加え、食べるタイミングにも気を遣えればベスト。食事をすると、その後4時間くらいの間は、プラークの活動により歯が溶けやすい状態になります。

これが修復される前に新たに糖質を摂ってしまうと、さらに歯が溶けやすくなり、虫歯が進行しやすい環境に。同じチョコレートを食べるのでも、間食としてではなく、食後すぐのデザートとして食べた方が虫歯への影響は少ないと言えそうです」(丸山先生)。

■デンタルフロスや歯間ブラシを使用する
「虫歯予防にも歯周病予防にも、デンタルフロスや歯間ブラシは効果的です。歯磨きだけでは歯の間の汚れや食べカスを除去するのは難しく、デンタルフロスや歯間ブラシを使用することをおすすめします。このとき、歯磨きの前に使用することを推奨しています」(丸山先生)。

歯医者でしかわからないこともある。定期健診の大切さ

どんなに日々の歯磨きや生活習慣に気を配っていても、虫歯や歯周病になる可能性をゼロにするのはなかなか難しいもの。もしそれらの病気にかかってしまった場合は早めの受診が大切ですが、具体的に、どのような症状が表れたら歯医者に行くべきなのでしょうか?

「わかりやすい症状でいうと、冷たいものがしみるようであれば、虫歯や歯周病の初期症状の可能性もあるため、歯医者に行くことをおすすめします。それから、歯に食べカスが詰まるのも危険信号です。噛み合わせなどが原因で矯正のように徐々に歯が動き、食べカスが詰まったままで放置された状態(食片圧入)が続くと、外から見えない「トンネル虫歯」や自覚症状のない歯周病の原因にもつながります。

食べ物が詰まりやすくなったと感じたら、歯科医に相談しましょう。もっとも、こうした症状が出る前から、定期的な歯科健診を受けることが大切です」(丸山先生)。

それでは、定期的な歯科健診の必要性について教えてください。

「虫歯や歯周病は初期症状がほとんど出ないため、自覚するのが難しいです。定期的な歯科健診で、磨き残しのチェックや初期の炎症の発見につながり、大きな治療をする前の段階でトラブルを防ぐことができます。

また、セルフケアでは難しい項目として、噛み合わせの調整が挙げられます。歯の嚙み合わせは、歯の摩耗やアゴの動きの変化などで常に変化しています。そのバランスによってはどこか一部の歯に負担がかかり、虫歯や歯周病を悪化させる大きな要因となるため、定期的な健診で噛み合わせの調整をする必要があります。虫歯や歯周病の心配がある人は2~3ヶ月に一度、歯のトラブルとは無縁という人でも、年に一度は健診することをおすすめします」(丸山先生)。

歯をしっかりとケアすることは、口の中の爽快感と見た目の清潔さを保つだけでなく、身体の健康維持にも寄与します。あらためて、ご自身やご家族のお口の健康への意識を高めてみませんか。

■その他にも暮らしに役立つマネー情報や健康・医療情報をお届けしています
お役立ちコンテンツTOP

監修者プロフィール

丸山 和弘 | Maruyama Kazuhiro

地域密着型の現役歯科医師。小さな子どもの虫歯予防からお年寄りの入れ歯相談まで、数多くの症例と日々向き合い、1995年より臨床一筋で活躍する。虫歯、親知らず、口内炎、歯周病などの予防法、歯の健康を守るための基礎知識や、歯の治療に関する情報を、各種メディアでわかりやすく発信している。

このページの先頭へ