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病気の予防
2026.02
高血圧の方は、国内に約4,300万人いると推定され、とくに40歳から70歳において、男性の60%、女性の40%が高血圧に該当すると言われており、放置すると心臓病や脳卒中など命にかかわる重大な病気を引き起こす原因となることも。
本記事では、高血圧のリスクや近年注目となっている、ナトリウム(食塩)とカリウム(野菜・果物)のバランスを示した指標「ナトカリ比」を取り入れた、無理なく続けられる「足し算の高血圧予防」について解説します。

血圧とは、心臓が全身に酸素や栄養を届けるために血液を送り出す際、その血液が血管(動脈)の壁に加える圧力のことです。
心臓は収縮と拡張を繰り返しており、血圧も常に変動しています。心臓が収縮して血液を送り出すときの圧力が収縮期血圧(通称「上の血圧」)で、心臓が拡張して血液を送り出していないときの圧力が拡張期血圧(通称「下の血圧」)です。
高血圧症とは、これらの血圧が正常値よりも持続的に高い状態を指しています。心臓、眼底、脳、大動脈、腎臓など種々の循環器臓器に障害を起こしますが、初期にはほとんど自覚症状がないことが多く、症状のない「サイレントキラー」といわれています。
高血圧の状態は、重症度によってⅠ〜Ⅲ度の3段階に分類されます。診察室での高血圧の重症度は以下のとおりです。
| 血圧ステージ | 収縮期血圧 / 拡張期血圧 |
|---|---|
| 正常血圧(理想値) | 120mmHg未満かつ80mmHg未満 |
| 正常高値血圧 | 120~129mmHgかつ/または80mmHg未満 |
| 高値血圧 | 130〜139mmHgかつ/または80~89mmHg |
| Ⅰ度高血圧 | 140~159mmHgかつ/または90~99mmHg |
| Ⅱ度高血圧 | 160~179mmHgかつ/または100~109mmHg |
| Ⅲ度高血圧 | 180mmHg以上 かつ/または110mmHg以上 |
出典:日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会編:「高血圧管理・治療ガイドライン2025」ライフ サイエンス出版、p-45よりソニー生命が作図
高血圧は「本態性高血圧(約90%)」と「二次性高血圧(約10%)」の二種類に大別されます。
原因が特定できない「本態性高血圧」の多くは、遺伝的因子や生活習慣(塩分過多、肥満、運動不足など)が関与する生活習慣病だとされています。
一方、「二次性高血圧」は腎臓の病気や内分泌の異常などの疾患が原因とされています。(原発性アルドステロン症などの内分泌疾患、血管疾患、睡眠時無呼吸症候群など)この二次性高血圧は、原因となる疾患を改善することで高血圧を改善することも可能です。

高血圧になる可能性を知る方法として、普段の生活習慣をチェックするのもおすすめです。
以下のリストで、3項目以上該当する方は注意が必要です。
【高血圧のリスクチェックリスト】
前述の通り、多くの高血圧症では、頭痛やめまいなどの自覚症状がないことが多いです。しかし、症状がないことを理由に高血圧を放置してしまうと、体中の血管が高い圧力を受け続け、やがて血管に深刻なダメージを与えてしまいます。
高血圧がもたらす最大のリスクは、動脈硬化の進行です。血管の壁に常に高い圧力がかかることで血管が傷つき、硬くなったり内腔が細くなったりする動脈硬化を引き起こします。
その結果、心臓、脳、腎臓など、さまざまな臓器に障害が起こり、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。ここで、動脈硬化による代表的な合併症を3つご紹介します。
1. 脳への影響(脳梗塞・脳出血)

血管に負担がかかることで「動脈硬化」が進行して、脳の血管が詰まり脳梗塞を引き起こす可能性があります。また、脳内の血管が破れ脳出血を起こすこともあります。
2. 心臓への負担(「心筋梗塞」「心不全」)

高血圧によって動脈硬化を起こすと、全身に血液を送り出す心臓に大きな力が必要となるため、心臓の筋肉が厚くなる心肥大が起こります。さらに進行すると、血液循環がうまくいかなくなる心不全に至ることもあります。また、冠動脈の動脈硬化により、狭心症や心筋梗塞の原因となるケースもあります。
3. 腎臓の機能低下

腎臓で酸素や栄養を運ぶ血管が傷つき、腎臓の機能が低下する慢性腎臓病へと進行し、重症化すると腎不全になる可能性もあります。

高血圧治療の予防・改善の基本は、生活習慣を見直すことです。高血圧の約90%を占める本態性高血圧は、生活習慣(塩分過多、肥満、運動不足など)が深く関与するため、以下の点を心がけ、予防・改善に取り組みましょう。
1. 食塩摂取の制限
血圧の高い人は1日6g未満を目標に制限します。食塩を多く摂り続けると血圧が上がります。具体的な工夫としては、お鍋をするときには、汁を控えめにして具材を中心に食べる、うどんやラーメンの汁は飲まない、醤油やソースは食材に直接かけずに小皿にとって少しだけつけるなどを意識しましょう。
以下は1食分の目安塩分2gの場合の食事例です。
| 料理名 | 塩分量(目安) |
|---|---|
| 鶏胸肉のソテー バルサミコソース (付け合わせ野菜あり) |
1.4g |
| 海藻と野菜のコンソメスープ | 0.7g |
このメニューでは、鶏胸肉をバルサミコソースで味付けすることを想定しています。塩分は控えめでも、お酢の風味で食べ応えを感じられるでしょう。
2. バランスの取れた食事
カリウムを多く含む野菜や果物は、腎臓においてナトリウムの排出を促進し、血圧を下げる働きがあります。また、揚げ物などの脂っこい食べ物を減らし、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控えることも重要です。カリウムを多く含む野菜と果物の例は、以下のとおりです。
| 野菜と果物の分類 | 食品名 | 可食部100gあたりのカリウム含有量(mg) |
|---|---|---|
| カリウムを多く含む野菜 | 干しひじき(乾燥) | 6,400 |
| パセリ(葉・生) | 1,000 | |
| ブロッコリー(花序・焼き) | 820 | |
| ほうれん草(葉・生) | 690 | |
| 枝豆 | 590 | |
| カリウムを多く含む果物 | アボカド(生) | 590 |
| バナナ(生) | 360 | |
| 露地メロン(緑肉種・生) | 350 |
3. 体重の管理
肥満は血圧を上げる一因となるため、適正体重(BMI 25未満)を維持しましょう。30分程度の散歩やラジオ体操など適度な運動は、血圧を下げるホルモンを増やし肥満解消にもつながるなど、血圧に良い影響が多いとされています。
4. 飲酒制限
習慣的な飲酒は血圧を上昇させる一因となるため、飲酒の頻度や量は適度に保ちましょう。アルコール摂取量は、男性は1日20〜30mlまで(日本酒1合くらい)、女性はその半分に抑えることがおすすめです。
ただし、この量はあくまで目安であり、アルコールの代謝能力は、体質・体格の個人差や、体調などによって大きく異なります。同じ量を飲んでも血圧への影響が強く出ることもあるため、その日の体調に合わせて量を控えめにするなど、無理のない範囲で調整することが大切です。
5. 睡眠時間の確保
睡眠不足や睡眠の質の低下は高血圧リスクを高めます。成人の場合、7~8時間の睡眠が推奨されています。一方、5時間未満の睡眠は高血圧リスクを高めるとされています。
6. 定期的な健康診断
健康診断では、血圧のほか、腎機能や脂質など、高血圧と関連の深い項目もまとめて確認できます。これらの情報は、将来の高血圧リスクを知るきっかけとなり、数値に変化があれば早期の対処につながります。

上述したように、高血圧の予防といえば「減塩」が基本とされてきました。しかし、現実的には、食塩摂取量を目標値(1日6g未満)まで減らすことは難しいことも多いでしょう。
そこで近年、高血圧対策の新しい指標として注目されているのが「ナトカリ比」です。カリウムには、体内の余分なナトリウムを排出し、血圧の上昇を抑える働きがあります。そのため、ナトリウムとカリウムのバランスを意識することが、高血圧の予防につながります。
例えば、塩分を多く摂りすぎている方は、無理に塩分を減らすのではなく、摂取した塩分に見合うだけのカリウムをプラスで摂取することで、高血圧を予防できることがわかっています。
この方法の特徴は、減塩という「引き算の食事管理」に、カリウムを増やす「足し算の食事管理」を加えるという発想の転換です。
味の薄い食事を我慢して食べるだけではなく、より多くの野菜や果物を食べることで高血圧を予防できるため、多くの方が取り組みやすい方法として注目されています。
ナトカリ比は、病院での尿検査などで測定可能です。計算式は「尿中ナトリウム(mEq/L)÷ 尿中カリウム(mEq/L)」で求められ、高血圧予防・改善のための理想値(目安)は2.0以下です。

※イラストの野菜と塩の量はイメージです。
※腎臓の病気がある方や、医師からカリウム制限を指示されている方は、カリウムの摂取について主治医にご相談ください。
高血圧症は気づかないうちに進行しやすいため、定期的な健康診断や血圧測定で状態を把握することが大切です。
原因の多くは生活習慣と関係しているため、食事や運動に気を遣うことをおすすめします。まずは、塩分を摂りすぎないことを意識して、栄養バランスのとれた食事をとりましょう。
たとえば、今回ご紹介した「ナトカリ比」という視点を取り入れながら、無理な我慢をするのではなく、ブロッコリーやほうれん草などカリウムを多く含む食品を積極的にプラスする、前向きな食事管理から始めてみてはいかがでしょうか。
日々の生活習慣を無理のない範囲で整えていくことが、高血圧のリスク低減と健康維持につながります。

監修者プロフィール
清益 功浩 | Takahiro Kiyomasu
小児科医、アレルギー専門医、産業医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院小児科・アレルギー科で診療に従事。論文・学会報告多数。診察室外で多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。
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